湖畔授業の告知と、グループ分け
昼前の教室は、次の授業の案内が貼り出されたことで
一気にざわつきはじめていた。
《次週:湖畔での魔力循環実技・グループ演習》
文字が光パネルに表示された瞬間、
あちこちで歓声と驚きが重なる。
「やば、初の外授業じゃん!」
「湖って、あの大きい方か?」
「グループどうする?同じ班がいいよな!」
食堂の賑わいとは別の、
授業前ならではのわくわく感が教室を満たした。
アメリアは配られた資料を見つめながら首をかしげる。
(湖畔で魔力循環……
なんか難しそうだけど……面白そう!)
その横でアレックスは資料を静かに眺めていた。
ただ、視線は何度もアメリアのほうへ向く。
授業内容に興味があるというより──
アメリアがどのグループに入るのか が
気になって仕方ないようだった。
教壇前では教師が説明を続ける。
「四人一組でチームを作り、
湖の魔力の流れを読む実習に入る。
グループは各自、自由に組んで構わない。」
自由に──。
この言葉が放たれた瞬間、
教室の空気が弾けた。
「おい、一緒にやろうぜ!」
「三人いるから、あと一人誰にする?」
「湖畔なら絶対楽しいって!」
アメリアの席の前にも、一瞬で生徒が近づいた。
「アルバローザさん!
よかったら僕たちと一緒に──」
「ア、アメリアさん、一緒の班……!」
(わっ……急に来た……!)
気圧されて返事に困っていると、
背後から静かな声が落ちた。
「……アメリアは、俺と組む。」
アレックスだった。
声は小さい。
でも譲る気はまるでない。
男子たちは「あ……そっか……」と道を開ける。
アメリアは慌てて言った。
「あ、あのね!アレクと一緒がいいなって思ってたから……
みんな、ごめんね!」
アレックスは視線を伏せながらも
ほんのわずかに満足げに息をついた。
そこへ、
ノエラが自然な足取りで近づいてくる。
「アメリア様、よければ……私もご一緒してよいですか?
実習、少し不安で……」
もちろん、本心は違う。
任務だ。
だがアメリアはぱっと笑顔になる。
「もちろんだよ!ノエラちゃん、一緒にやろ!」
これで三人。
残る一枠をどうするかとアメリアが考えたとき──
後方から控えめな声が聞こえた。
「あの……もし席が空いているなら……
私も入れて欲しい……です……」
振り返ると、
緊張した様子の小柄な女の子が立っていた。
魔法の扱いに自信がないのか、
手が少し震えている。
アメリアは迷わず笑った。
「もちろん!一緒にやろう!」
こうして──
湖畔授業の四人組が完成した。
アレックスは一切表情に出していないが、
心の中ではひそかに思っていた。
(……よかった。
アメリアが俺の隣にいる。)
教室は、次の実習への期待でいっぱいになっていた。




