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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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31/89

静かな廊下で、影が動く

授業が終わり、

学園の廊下には夕方の光が差し込んでいた。

石畳は淡い金色に染まり、

魔力灯の影が長く伸びている。


アメリアは教室を出て、

寮に戻る前に購買へ寄ろうと角を曲がった。


静かな廊下に、

ふと誰かの声が聞こえた。


「……アルバローザの子、ほんとに来たんだな。」

「病弱って噂だったけど……ぜんぜんそう見えねぇ。」


アメリアは立ち止まった。

角の向こうに、数人の男子生徒が集まっている。


(あれ……名前、覚えられてる……)


特に悪意は感じない。

ただ、興味本位でひそひそ話しているだけ──

それでも、アメリアの胸には

少しだけ緊張が走った。


その時。


廊下の空気が、

わずかに変わった。


足音も、気配も、

どこからともなく消えていくような──

静かで、研ぎ澄まされた気配。


アレックスが姿を見せた。


彼はアメリアに気づくより先に、

ひそひそ声の方向を一度だけ鋭く見た。


その視線は冷静で、

熱も怒りも表には出ていないのに、

男子生徒たちは一瞬で口をつぐんだ。


「……行こ。」


アレックスの声は低く静かで、

アメリアは自然と頷いた。


彼と並んで歩くと、

先ほどまでの緊張がふっとほどける。


「アレク、さっき……」


「気にしなくていい。

 ただの噂だ。」


アレックスは淡々と言った。


でもその瞳は、

ほんの少しだけ鋭かった。


アメリアを見ているようで、

その背後に潜む“何か”を見ているようでもあった。


(……アレク、今日少し様子が違うような)


アメリアが考え込んだ瞬間、

廊下の端で、ノエラがそっと気配を消した。


(男子たちの場所取り……要監視、と。

 ……アレックス様、本気で睨んでましたねぇ……)


彼女は苦笑しながら、

影に溶けて消えた。


夕暮れの廊下に残ったのは、

アメリアとアレックスの二つの影だけ。


そしてアレックスの胸には、

自分でもまだ名前のつかない“ざわめき”が

確かに積もり始めていた。


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