表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/89

同じ緑のローブで始まる朝

魔術学園の正門は、

朝日の魔力を吸い込むように金色にきらめいていた。


塔のてっぺんでは小さな光球がふわふわと浮かび、

自律した羽根ペンが空中をくるりと旋回し、

敷地の石畳には魔術陣が淡く呼吸するように光を漏らしている。


(わぁ……本当に魔術学園……!)


アメリアは思わず胸の前で手を握った。

悪役令嬢だった前世の“設定”を思わせるように、

黒髪は光をまとって艶やかに揺れ、

朱い瞳は朝の光を受けて宝石のように輝く。


その美しさは、

周囲の新入生の視線を自然に集めていた。


「……アメリア。」


横に立つアレックスは、

同じ新入生の証である 緑の縁取りローブ をまとっていた。


本来なら年が違うはずの二人。

でもアメリアの“病弱設定による一年遅れ”のおかげで、

彼らは 完全に同じ年度の新入生 になった。


ローブの色もお揃い。

胸元の学院章もお揃い。

魔術具の初期設定もお揃い。


アメリアは、ふわっと頬が温かくなる。


(……同じ色……本当に一緒に入学できたんだ……)


アレックスがそっとささやく。


「アメリア、似合ってる。

 緑、すごく綺麗。」


「えっ……あ、ありがとう……!

 アレクも、とっても似合ってるよ!」


言った瞬間、アレックスの耳先が赤くなる。

その反応が可愛くて、アメリアは思わず笑った。


二人は正門をくぐった。


校庭には漂う光の粒子が風に乗って流れ、

半透明の本が勝手にページをめくりながら飛んでいき、

巨大な魔術樹の根元には魔法薬の香りが淡く漂っていた。


(すごい……!

 私、ずっとこういう場所に憧れてたんだ……!)


ふと、アレックスが歩みを止めた。


「アメリア、前。」


彼が指した先では、

大きな水晶盤が新入生の“属性反応”を感知して

光を放っていた。


ガラスのように透明な魔力の柱が、

塔の内部から空へ向かって伸びている。


アメリアは瞬きをする。


「アレク……あれ、選別の塔だよね?

 すごい……なんか、ハリポタの大広間みたい……!」


「ハリ……何?」


「あ、ううん!なんでもない!」


前世のクセがうっかり出てしまい、

アメリアは慌ててごまかした。


アレックスは小首をかしげたものの、

追及はしないでくれた。


それだけで胸がじんわり温かい。


順番待ちの列に並ぶと、

周囲の新入生たちがアメリアをちらちら見ていた。


「アルバローザ家の……?」

「え……病弱じゃなかったっけ……?」


アメリアは背筋をぴんと伸ばしながら

“病弱っぽい柔らかい笑み”を貼りつける。


(設定……忘れちゃダメ……!)


不自然なほど緊張していた肩を、

アレックスがそっと指でつついた。


「……気にするな。

 アメリアはアメリアだろ?」


たったそれだけの言葉なのに、

不安がふっと消える。


(アレクがいると……安心する……)


塔の前に近づくにつれ、

魔力の振動が足元から伝わってくる。


そのたびローブの裾が揺れ、

二人の影が隣同士で重なった。


アレックスはその影の重なりを

見つめ、湧いてくる嬉しさを噛み締めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ