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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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小さな歩幅で寄り添う日

アレックスが屋敷に来て二日目の朝。

雪は薄く残り、庭の空気はひんやりとして澄んでいた。


アメリアは外套を羽織り、

アレックスを庭へ連れ出す。


「ねぇ、見てほしい場所があるの。」


アレックスはまだ緊張した面影を残しつつ、

小さな足でゆっくりついてくる。


庭の奥へ進むと、

温室の横に広がる白薔薇の一角が見えてきた。


雪の中で、閉じたままの白い蕾が静かに光を放つ。

その姿は冷たく見えて、どこかあたたかい。


「ここ、私の好きな場所なんだ。

 まだ蕾だけど……可愛いでしょ?」


アレックスはしばらく黙ったまま蕾を見つめていた。

光に照らされる白は、彼の碧瞳に淡く映っている。


「……きれい。」


たった一言なのに、

アメリアの胸はほわっと温かくなった。


「咲いたらもっと綺麗なんだよ。」


「……咲くの、楽しみだね。」


その声は小さく、

けれど確かに優しかった。



昼食のあと、

暖炉の前で二人は積み木遊びをしていた。


アレックスはまだ人見知り気味で、

積み木をそっと触っては様子を伺っている。


アメリアは笑顔で言った。


「アレックスのこと、もっと知りたいな。」


アレックスは少し顔を上げ、

ためらいながら言う。


「……どうして、そんなこと思うの?」


「だってね──アレックスは、私の“推し”だから!」


「……おし?」


アレックスの目がまるくなる。

アメリアも笑ってしまう。


「うん!すごく好きで、がんばってると嬉しくて、

 応援したくなる人のことだよ!」


「……応援……されるの、嬉しい。」


「でしょ?だから私は、アレックスの味方だよ!」


積み木の影がゆらゆら揺れる。

暖炉の火が、優しい赤を部屋に映していた。


アレックスはアメリアを見つめ、

小さく、でも確かな声で言った。


「……ありがとう。」


アメリアは笑顔で頷き、

二人は並んで積み木の塔を完成させた。


外では、白薔薇の蕾が

ひときわ強く風に揺れていた。


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