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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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19/89

ノエラという小さな影

魔術学園の入学手続きを終えた翌日。

アメリアは応接室でカインとマリアに呼び止められていた。


「アメリア、ちょっと話があるわ。」

マリアが微笑む。


アメリアは首を傾げた。


「なあに?また学園の準備?」


「ええ、そうなんだけど……少し特別な話なの。」


カインが静かに頷くと、

部屋の扉横の影がふっと揺れた。


アメリアは気づかない。

けれどアレックスは一瞬だけ

“空気の密度”が変わるのを感じ、視線を向けた。


そこから滑るように現れたのは──

黒髪をゆるくまとめた、小柄な少女。


「影部隊新人、ノエラ。

 アルバローザ公爵家の御前に参上いたしました。」


アメリアはぱちぱちと目を瞬く。


「わぁ……!女の子なんだ!」


ノエラは目を丸くし、意外そうに微笑んだ。


「はい。……あの、アメリア様。

 お会いできて……光栄でございます。」


声は控えめだが、はっきりしていて、礼儀正しい。


カインが説明を加える。


「ノエラは影部隊の中でも“気配を消す技術”が突出している。

 学園では、お前のクラスメイトとして潜入する。」


アメリアの目がさらに大きくなる。


「えっ!?同じクラス!?」


ノエラは一歩前に進み、丁寧に頭を下げた。


「はい。アメリア様に危険が及ぶ前に察知し、

 さりげなく回避させるのが任務です。」


アメリアはぱっと笑う。


「なんかすごいね!頼もしい!」


ノエラは頬を少し赤くした。


「……もったいないお言葉です。」


そのとき、アレックスが小さな声で呟いた。


「……クラスメイトって……

 アメリアの隣に……ずっと……?」


ノエラが「あっ」と気づいてぺこりと頭を下げる。


「アレックス様、よろしくお願いいたします。」


アレックスはじっとノエラを見つめた。

視線は冷静だが、どこか探るような色がある。


(……気配が薄い……普通の子じゃない……)


「……ノエラ。」


「はい。」


「アメリアに変なことしたら、だめ。」


「しません!」


ノエラは即答して、姿勢を正した。


マリアがくすりと笑う。


「まあまあ、アレックス。

 ノエラちゃんはアメリアを守る側なのよ?」


アレックスはそっぽを向いた。


「……わかってるけど。」


アメリアはその反応に首をかしげながら、

ノエラのほうを向いた。


「学園で同じクラスって嬉しい!

 よろしくね、ノエラ!」


ノエラは胸に手を当て、深く頷く。


「……はい。

 アメリア様の“親しい友人”として自然に振る舞いますので……

 どうか普段どおりに接してください。」


アメリアは笑顔で頷いた。


「もちろんだよ!友だちになってくれたら嬉しい!」


ノエラの瞳が柔らかく揺れた。

嬉しさが隠しきれていない。


(……かわいい。)


アメリアは素直にそう思う。



話が一段落すると、

カインはノエラに視線を向けた。


「ノエラ。

 学園での潜入時の行動指針については既に伝えてあるな?」


「はい。

 “目立たず、近づきすぎず、しかし離れない”。

 肝に銘じております。」


「うむ。アメリアに不安を与えるな。

 ……そしてアレックスには余計な刺激を与えるな。」


アレックスはきょとんとした。


「……刺激?」


ノエラは一瞬だけ固まり、すぐに姿勢を正した。


「努力いたします……!」


(影としての能力は高いが、

 アレックスの“存在そのもの”がちょっと怖いらしい。)



部屋を出ると、

ノエラはアメリアの後ろを半歩下がって歩く。


アメリアはくるりと振り返った。


「そんなに距離あけなくていいよ?」


ノエラは慌てて手を振った。


「い、いえ!あの……慣れておらず……

 近くにいると、任務の距離感が……」


アメリアは笑う。


「ノエラはノエラのままでいいよ。

 そんなに気張らなくて大丈夫。」


ノエラは一瞬固まり、

それから小さく頷いた。


「……はい。」


だが、その様子を

アレックスはじっと見ていた。


(……気配、消すの上手すぎる……

 目を離すと見失う……

 アメリアの近くに置くの……ちょっと……)


アメリアは気づかないけれど、

アレックスの胸の奥には

“得体の知れない警戒心”が芽を落としていた。



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