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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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アルバローザ家、極秘作戦会議。

アメリアが13歳、アレックスが12歳になった頃。

学園入学の年齢が近づき、屋敷は少しずつ慌ただしさを帯び始めていた。


そんなある日の午後。

侍女レナに呼ばれて、公爵執務室へ向かうと──

扉の向こうで、公爵カインと公爵夫人マリアが

なぜか深刻そうな顔で並んで座っていた。


アメリアは首を傾げる。


「パパ、ママ?なにしてるの?」


カインは腕を組み、重々しい声を出した。


「……アメリア。

 そろそろ、お前も学園に入る年齢だ。」


「うん、魔術学園に行くんだよね?楽しみ!」


アメリアが目を輝かせる一方、

カインは咳払いを一つ。


「その前に……

 “対ウィリアム殿下回避作戦” を発動せねばならん。」


「回避……?」


アメリアが瞬きをした瞬間、

マリアが両手をぱんっと叩いた。


「そうよアメリア!あなたが前に言ったじゃない、

 “ウィリアムだけは絶対イヤ!” って。」


「あっ……言った……!言ったね……!」


アメリアは思い出し、頬を膨らませる。


(だって原作のウィリアム、本当に面倒くさいし……!

 なによりアレックスのバッドエンドの原因だし!!)


マリアはうんうんと頷きながら続けた。


「だからね、

 あなたが王立学園に入らなければいいのよ。」


アメリアは目を丸くする。


「えっ……そんな方法が?」


カインが重くうなずいた。


「ある。

 “病弱設定” だ。」


アメリアは一瞬固まり──

次の瞬間、ぽんっと手を叩いた。


「それ!私も考えてたやつ!」


「やはりか、我が娘よ。」


カインは満足げに頷く。


マリアは机の引き出しから何やら紙束を出し、

アメリアの前へ置いた。


「これが今日の会議資料よ。“病弱を装うための基礎演技案”」


「会議資料まであるの!?」


「もちろんよ。あなたを守るためですもの。」


紙には

・顔色の作り方

・立ちくらみの演技

・遠出を控える理由

・魔力負担が大きいふりの仕方

などが細かく書かれていた。


(うちの家族……本気だ……)


アメリアは資料を見つめながら思う。


「私……魔術学園に行けるんだよね?」


「当然だ。」

カインが即答した。


「王族の目から遠ざけつつ、

 お前の才能を伸ばせる最適解が 魔術学園 だ。」


マリアも微笑む。


「そしてアレックス君も一緒に行けるのよ。

 あなた、一人だと寂しいでしょう?」


アメリアの顔がぱっと明るくなる。


「行く!!絶対行く!!

 アレックスと一緒ならもっと楽しい!」


執務室の扉の外。

小さく息を呑む気配があった。


アレックスだった。

扉の向こうで話を聞いてしまったらしい。


「……アメリア……学園に……行くの……?」


驚いた表情でアメリアを見つめる。


アメリアは駆け寄った。


「うん!アレックスも行くよ!

 魔術学園って、魔法の勉強いっぱいできるんだって!」


アレックスは不安げに指を握りしめた。


「……アメリアと……離れない……?」


アメリアは笑顔で首を振る。


「離れないよ!だって一緒に通うもん!」


アレックスの目がほっと和らぐ。


だがカインはそこで、控えめに咳をした。


「アレックス。

 アメリアが病弱ということになっている以上、

 常にそばにいる必要もある。」


アレックスはきょとんとする。


「……そばに……いていいの?」


マリアが優しく微笑む。


「いいどころじゃないわ。

 あなたがいてくれると私たちも安心なの。

 アメリアを支えてあげてね。」


アレックスは胸に手を当てた。

幼いながら、とても大切な役目をもらったような顔になる。


「……僕、がんばる。」


アメリアが嬉しそうに手を握り返した。


「アレックス、一緒に頑張ろう!」


アレックスは小さく頷いた。



夜。

執務室には、暖炉の火がぱちぱちと小さく響いていた。


カインはひとり机に向かい、

分厚い書類を閉じると静かに声を放った。


「……ノワール。入れ。」


扉が音もなく開き、

黒い影が膝をついた。


「影部隊現当主──

 ノワール、ここに。……お呼びでしょうか、主様。」


カインは椅子にもたれながら、低く告げる。


「アメリアの“病弱設定”を本格的に運用する。

 魔術学園側への干渉は最小限……

 だが、アメリアの安全は最優先だ。」


ノワールは深く頭を垂れた。


「承知いたしました。」


「まずは学園の導線、裏道、緊急避難ルートを洗え。

 必要ならば影部隊の影を二、三名、

 学生や職員に紛れさせても構わん。」


「はっ。」


「アレックスも同行する。

 あの子は……まだ自覚しておらんが、

 アルバローザの“影の器”だ。」


ノワールは一瞬だけ瞳を細め、

しかし何も言わず了承の意を示した。


「アメリアの負担を軽くしてやれ。

 あの子は……優しすぎる。」


「御意。」


ノワールは床に手をつき、

静かに姿勢を深くして言い放つ。


「アメリア様の御身、

 影のすべてをもってお守りしましょう。」


カインは満足げに頷いた。


「任せる。」


ノワールは影が溶けるように消え、

執務室には再び静けさが戻った。


窓の外、夜の風がゆっくりと木々を揺らす。


こうして──

アルバローザ家の裏の力が動き出し、

アメリアの“病弱設定”と、学園での生活を支える体制が整えられた。

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