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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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12/89

風の中で見つけた勇気

その日の午後。

アメリアは庭の端で侍女のレナと花の手入れをしていた。

花の種類や雑草の見分け方を教えてもらいながら、

ああでもないこうでもないと夢中になっていた。


そこへ、アレックスが少し不安げに歩いてきた。


「……アメリア……どこ行ったのかと思って……」


その声にアメリアは顔を上げて笑う。


「ごめんごめん。お花を見てたの!」


レナが微笑んで頭を下げる。


「アレックス様、アメリア様はいつもここを散歩されるんですよ。」


アレックスは、ほっとしたように胸を撫で下ろした。


アメリアが花の名を説明していると、

突然、庭の向こうから犬が走ってきた。


使用人の犬で、普段は大人しい子なのだが、

今日は興奮しているのか勢いよく駆けてくる。


アメリアは驚いて一歩下がった。


「わっ──」


その瞬間。

アレックスがアメリアの前にすっと立った。


「……来ないで!」


小さな身体なのに、

そこには強い“守る姿勢”があった。


犬は途中で止まり、

飼い主が慌てて引き戻していく。


アレックスは振り返り、

心配そうにアメリアを見る。


「……怖かった……?」


「ちょっとびっくりしたけど……

 アレックスが守ってくれたから平気!」


アメリアが笑うと、

アレックスは胸を押さえるようにして深呼吸した。


「……よかった……」


レナが目を丸くしてアレックスを見た。


「アレックス様……すごいですね。」


アメリアも同じ気持ちだった。


(アレックスって……こんなに強い子だったんだ……)


アレックスは照れたのか、

目をそらしながらつぶやいた。


「……アメリアが……危ないの、嫌だ……」


アメリアは胸の奥がじんわり温かくなる。


「ありがとう。

 私もアレックスが危ないのは嫌だよ。」


アレックスはゆっくりと頷いた。


「……じゃあ……アメリアを、守りたい。」


その言葉は幼いながら、

どこか“根っこに残る強さ”があった。


アメリアはそっと笑った。


「うん。

 でもね、無理しなくていいんだよ。

 アレックスの気持ちだけで……十分嬉しいから。」


アレックスは手首の金の紐をそっと触れた。

風が吹き、庭の草がさわさわと揺れた。


アレックスの胸の奥に

小さな種のようなものが芽生えた瞬間だった。




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