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推しの義弟を守りたくて悪役ルートを回避したら、愛が重すぎる未来ができあがった  作者: ChaCha


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夜の部屋に寄りかかる影

その夜、アレックスは自室のベッドで何度も寝返りを打っていた。


屋敷に来たばかりの頃よりは眠れるようになったけれど、

それでも、時折ふとした音で目が覚めてしまう。


廊下で遠く侍女の足音がする。

暖炉がぱち、とはじける。

外の木が風に揺れる。


「……また、眠れない……」


胸がきゅうっと締まるようで、

手首の“おそろいの紐”を指で触った。


(アメリア……)


迷った末、

アレックスは小さくベッドから降り、

静かに部屋を出た。



アメリアはまだ起きていた。

机の上のランプに照らされながら、

絵本を片付けているところだった。


扉がこつんと小さく鳴り、

アメリアが顔を上げる。


「アレックス?」


アレックスは少しだけ申し訳なさそうに立っていた。


「……眠れなくて……」


アメリアは優しく笑った。


「いいよ、入って。」


アレックスが部屋に入ると、

アメリアは絨毯の上にクッションを並べた。


「少しここで休もうか。

 本読む?それともお話しする?」


アレックスは小さく首を振った。


「……アメリアがいるだけで、大丈夫。」


その言葉にアメリアは胸があたたかくなる。


二人で窓辺に座り、

夜の庭を眺めた。


星は雲の隙間からちらちらと光り、

屋敷の灯りが静かに庭を照らす。


アレックスは肩をアメリアのほうへ少し寄せ、

目を閉じる。


「……ここ、安心する。」


「よかった。」


しばらくして、アレックスの呼吸がゆっくり安定してきた。

眠気が差してきたのだろう。


アメリアはそっと囁く。


「アレックス、眠れた?」


アレックスは目を閉じたまま、小さく頷いたように見えた。


「……アメリア……ありがとう……」


その声は眠気に溶けて柔らかい。


アメリアは微笑み、

彼が安心して眠れるよう、そっと毛布をかけた。


その夜、アレックスは初めて“屋敷の夜を怖がらずに眠れた”。



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