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Never Island  作者: 阿久津ゆう
 6章 Episode of Another Japan~悲しみの亡国もう一つの結末へ
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106話 「再会の瞬間」

 円筒形の建物は、予想以上に保存状態が良かった。雪に埋もれていたとは思えないほど、窓ガラスは透明で割れもなく、外壁には苔ひとつ生えていない。


 「警報装置は作動していないようね」

ミディールが慎重に言う。彼女は小型センサーを操作しながら周囲を探っていた。


 「まるで時が止まったみたいだ」

美亜が息を呑む。彼女の足元で雪がシャリシャリと音を立てる。ラボの敷地内は不自然なほど清潔だった。植物ひとつなく、まるで誰かが定期的に整備しているかのようだ。


 「侵入する前に装備を確認して」

ミディールの指示に全員が頷く。理人と隆太は特殊合金製の手袋を装着し、美香と美亜は小型ライトと非常用バックパックを背負った。


 エアーダガールを建物の影に隠し、一行は正面玄関へと向かった。


 鋼鉄の扉は意外にも簡単に開いた。


 中に入った瞬間、自動照明が一斉に灯ったのだ。


 「誰かが待っているわ」

ミディールの声が硬くなる。全員が緊張した面持ちで前進する。


 廊下はひんやりとしていた。床にはほこり一つなく、壁面のパネルはすべて正常に動作しているようだった。奥へ進むにつれて、遠くから規則正しい機械音が聞こえてくる。


 「研究室区画があるみたいね」


 一行はさらに奥へと進んだ。途中でいくつかの部屋を覗き込んだが、どこも空っぽだった。実験器具やコンピュータは残っていたが、人が使った形跡はない。


 「本当にここで間違いないの?」

ミナがが不安そうに問いかける。


  扉を開けた瞬間、彼らを迎えたのは消毒液の匂いだった。


 「研究施設としては異常なほど清潔ね……」


 ミディールのつぶやきに全員が頷く。廊下は床の隅まで磨かれており、塵ひとつ見えない。壁にはモニターが等間隔で配置されており、「生体活動:安定」「環境維持:完了」という文字が点滅している。


 「誰かが……毎日掃除しているかのように」

ユウキの声が震える。


 理人は前を見据えながら一歩前に出た。「進もう」


 一行が中央ホールに足を踏み入れると、高い天井から吊り下げられた球体がゆっくりと回転していた。青と赤の光が交錯し、幻想的な光景を作り出している。


 「那智さんのラボの管理システムかしら」

ミディールが眉をひそめる。

「でも……」


 彼女の言葉は途中で途切れた。視線の先にあるホログラム映像に全員が釘釘付けになった。


 そこには那智の若い姿が映し出されていた。白衣を身につけた彼女は、モニターを操作しながら何かを説明している。

「これから行う実験は人類史上初の試みになるでしょう……」


 映像はそこで途切れた。


 「これは……記録映像?」

美香が目を丸くする。


 「違うわ」

ミディールが否定した。「これはライブ映像よ」


 全員が息を呑んだ。映像の中の那智は確かに動き続けていた。まるでそこに実在するかのように。


 「婆ちゃん……!」

理人の声が震えた。彼は思わず一歩踏み出した。


 「待ちなさい!」

ミディールが制止しようとしたときだった。廊下の奥から電子音が鳴り響いた。


 「セキュリティが……起動した」

隆太が顔色を変える。


 天井から降りてきたシールドが出入り口を封鎖していく。

「閉じ込められた……!」

美亜が叫ぶ。


 映像の中の那智がゆっくりとこちらを見た。

「こんな吹雪の中いったい何の用だい!!!」

老婆の声がスピーカーを通して響く。


 「今から通れるようにするからさっさとにこっちに来な!!!」


 電子音が止むと同時に、天井から降りてきていたシールドがゆっくりと上昇していった。封鎖された通路が徐々に開いていく。


 「どうやら歓迎してくれるようね」

ミディールが警戒しながらも少しだけ表情を和らげた。


 映像の中の那智がゆっくりと手を振る。

「早く来るんだよ!この吹雪は危険だからね」


 理人は無意識に駆け出そうとしたが、隆太が彼の肩を掴んだ。

「落ち着け。兄ちゃんにとってはこの人は並行世界上での同一人物だ兄ちゃんがいきなり顔を出したらきっと混乱するぞ」


 その言葉に理人は我に返った。

「そうだった……わかってる。けど……」


 感情と理性の狭間で葛藤する理人の姿を見て、ミディールは決断を下した。

「私が先行するわ。皆も一緒に来て」


 一同は緊張した面持ちで通路へと足を踏み出した。映像の中の那智は相変わらず笑顔を浮かべたまま。しかし、その眼差しには明らかな警戒の色が混ざっていた。


 一行は慎重に廊下を進み、大きな扉の前に立った。


「この先がメイン研究室みたいね」

ミディールが確認する。


 扉が自動的に開くと、中にはいるとベットに横たわった那智が振り返った。


 「おやまぁ!こんな吹雪の中わざわざ来るとはご苦労なこったねぇ」

那智は笑みを浮かべたまま近づいてくる。

「アンタたちは一体どんな目的でここに来たのかい」


 ミディールが一歩前に出る。


 「私たちはアイランド公国という国からやってきました。私たちの国はいま滅亡の淵に立たされています。貴女の知識と知恵をお借りしたくここまで来ました」


 那智は眉を上げた

 「アイランド公国ねぇ……。たしか新興国だの何とか話は聞いたことがあるがまさかそんなところからここまで来るとわね~」


 「あなたを訪ねて自宅に行った際に美香ちゃんと出会い一緒にお連れしました」


 美香が一緒にいることに驚愕する那智の顔に影が差した。


 「み!!美香!!!まさか!!!あんた体の方は?」


 「病気のほうはどうにもならないけど....だけどみんなのおかけで一時的に回復して目が見えるようになったよ」


 「後ですね......他にあなたにどうしても合わせなければいけない人がいます」

理人はゆっくりと前に出て無言で那智を見つめる


 「は..はぁ!!!!!あんたは......理人!!!まさかそんな馬鹿な........おまえは...5年前にたしかに死んだはず」

「まさか……」


 那智の声が震える。老いた瞳が理人の姿を凝視したまま動かない。


 「理人……本物の理人なのか?」


 理人は複雑な表情で答えた。

「同じ理人ではないんです。僕は並行世界から来た、別の理人です」


 「並行……世界?」


 那智は言葉を失ったように立ち尽くす。長い沈黙の後、突然笑い出した。


 「は....はぁ~…まさか…こんなことが起きるとは.....」

彼女は疲れた顔で椅子に座り込む。

 「わかった。全部話そう。だがその前に」


 那智の手がモニターに向かうと、ホログラムが鮮やかに浮かび上がった。


「これが現在の状況だ」


氷河に覆いつくされた地球を模した立体映像が回転する。


 地球を模した立体映像が回転する。


 白く染まった大陸が点在し、ほとんどの地域が灰色の雲に覆われている。


「この世界は今まさに終わりを迎えようとしている」

那智の声が静かに響く。

「原因は多分知ってはいると思うがアメリカ連合国が使用した核兵器とキエフ大公国が発動させた魔化学兵器の衝突だよ」


 理人が前のめりになる。

「これからどうすればいい.....俺たちはアイランド公国を滅びの道から何とかするためにここまで来たんだ」

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現実世界〔恋愛〕
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