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Never Island  作者: 阿久津ゆう
 6章 Episode of Another Japan~悲しみの亡国もう一つの結末へ
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105話 「命運」

 翌朝、シェルター内部は依然として冷気に満ちていた。だが窓の外には少しずつ日差しが差し始めていた。白く降り積もった雪が朝日に照らされ色に輝いている。


 ミディールはテーブルから離れて壁際に歩み寄ると、携帯端末を取り出した。画面には地図が表示されている。かつて住んでいた居住区へ通じる道が点線で示されていた。


 「行くしかないわね」


 決意を固めたミディールの横顔を、朝日が鋭く照らし出していた。


 シェルター内の小さな食堂では、それぞれのグループが食事を取っていた。温かいスープが湯気を立て、パンの焼ける香りが漂う中、一行は静かに食事を進めていた。


 ミディールは食卓に集まった一行を見渡し、毅然とした声で告げた。


 「本日の午後、天候が小康状態になる時間を狙ってラボへ向かうわ」


 ミディールの言葉がシェルター内に響き渡ると、全員の顔が引き締まった。


 「各自、最終チェックを怠らないで!!」

ミディールがテキパキと指示を出す。彼女の白衣には既に埃と油の汚れが付着している。


 「ラピズちゃん」

彼女は小さな少女をを呼び寄せた。

 「あなたの提案した迂回ルートは完璧ね。でも念のためもう一度確認したいの」


 ラピズは胸を張って応じた。

「任せてくださいなのぜ! 」


 一方、理人たちも装備の確認に余念がなかった。


「防寒服は二重にしておけよ」

隆太が美香と美亜に厚手のジャケットを手渡しながら言った。


 「今回はエアーダガールの運転は俺がする。ポルコさんは体を休ませてくれここのところあんまり休めていなさそうだったからな」

理人はそういう運転席のある部屋に向かった


 外は相変わらず吹雪いていたが、昨日より風勢が弱まっている。


 「準備OKよ」

 ミディールが通信機に向かって報告する。


 エアーダガールはシェルターの外に慎重に出ていった


 「目標地点まで約15km……」

ポルコが地図を見ながら言った。


 「旅団の人たちや母さんとの連絡は取れないままだが……」

隆太は不安そうに辺りを見渡す。


 「もう迷っている暇はないわ」

ミディールの声に全員が頷いた。


 吹雪を切るように走るエアーダガール。操縦席では理人がハンドルを握っている。助手席のラピズが次々とルート指示を出し


 「次の右折ポイントまであと500mなのぜ!」

流石は旅団のメンバー、なかなか手際がいい。


 エアーダガールは岩肌に刻まれた細い谷間を抜け、巨大な氷塊の隙間を縫うように進んでいく


 「みんな!揺れるぞ!」

理人の警告と共に機体が急激に傾いた。乗員達が悲鳴を上げる。しかしエアーダガールは見事にバランスを取り戻し、氷の斜面を滑るように下っていく。


 「ここまで順調ね……」


 「でも気を抜かないでいくなのぜ!」


 「わかってるわよ」


ラピズとミディールが交互に応答する。


 エアーダガールの外では猛吹雪が渦巻いていた。車両のヘッドライトが照らす範囲だけが視界として機能している。しかし目的地は目前だった。


 「前方300メートルに古いトンネルが見える!」

隆太が双眼鏡で前方を確認して叫んだ。


 「あれが入口なのぜ!」

ラピズが地図を叩きながら確認する。


 「全員ベルトを締め直して!揺れが激しくなるわ!」

ミディールの指示が車内に響く。全員が頷きながら座席に身体を固定した。


 トンネルの入り口は雪崩で半分塞がれていた。理人は慎重にハンドルを切り、エアーダガールを斜めに構えて突入する。


 「突っ込めー!」

 理人の叫びと共に車体が雪壁に激突する。衝撃で車内全体が揺れ、理人とラピズ以外のメンバーが悲鳴を上げる。しかしありがとうことに雪壁は案外脆く簡単に突破できた


 「やったな!」

理人が安堵の息をつく。エアーダガールは無事にトンネル内部に進入していた。


 車体は狭い通路を慎重に進んでいく。周囲には剥き出しの岩壁と錆びた鉄骨が見える。長い年月を経た施設の様相を呈している。


 「意外だな」

車内に驚きの声が漏れる。外の極寒とは対照的にトンネル内部は不思議なほど暖かかったのだ。


 「これは……」

ミディールが目を細めて前方を眺める。

「地下居住区特有の温度制御システムが生きている証拠ね」


 トンネルは緩やかにカーブしながら下方向へと続いていた。エアーダガールのヘッドライトが照らし出す空間は徐々に広がりを見せ始める。


 「おい……これって」

隆太が窓の外を指さした。トンネルの壁面に沿って小さな穴が並んでいる。

「昔の住宅の入り口みたいだな」


 「この辺りに居住区があったはず……」

ミディールの声が一段と低くなった。彼女の指が地図上の一点を示す。

「この先よ」


 車窓の風景が一変した。トンネルが終わると同時に視界が開けたのだ。

「わぁ……」

美亜が息を飲む。眼前に現れたのは巨大なドーム状の空間だった。天井から柔らかな光が降り注ぎ、地面には幾何学模様の舗装が広がっている。その中心部には円筒形の建物が聳え立っていた。


「ラボだ」


 俺たちはついにたどり着いた......この世界の......婆ちゃんがいるであろうこの場所に

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現実世界〔恋愛〕
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