95話 「上陸」
あの後旅団の人達、隆太とラピズのお母さんはどうなったのだろうか?
理人は月見から手渡されたUSBメモリーを見つめる
「ほんとは私たちもあなたのお爺さんとお婆さんの真実を目にしたかったけど.....それはどうしても無理みたい...」
この中にあの後の話の続きが保存されているらしい。
しかし理人は今はどうしても見る気にはなれなかった。
命を懸けて俺たちを送り出した旅団の人たち。
2人の母親、月見さん....またこの家族は離ればなれになってしまった。
どの道俺たちがあのままあの場に残っても足手まといになるだけど。
2人を旅団の人たちと行動を共にさせたとしてもそれは同じこと。
俺が罪悪感を感じても無駄なことだ。
エアーダガールは洞穴をまっすぐに進み続ける。
そういえば....
「ポルコさん、まさかあなたがついてくるとは」
「団長からうちらの姫さんと隆太君のおもりを任されてね.....あ...そうそうこれ見せるのを忘れてたよ」
そういうとポルコは一行にカバンの中からトランシーバーと封筒を見せる
「このトランシーバーって」
月見さんから渡されたものらしい。万が一の時はこれで連絡を取り合うことも可能だ
「みんな安心してくれうちの団長は意地でも死ぬつもりはないらしいぞ。いまは応答がないがそのうちひょっこりと連絡をしてくるに違いない。それまで首を長くして待とう」
確かにこんなものをもたせるぐらいだ多分本気で何とかして生き延びるつもりなはずだ。今は彼女を信じるしかいな
「ところで姫さんと隆太君の姿が見えないけどどうしたんだい」
「二人は寝てるよ同じベットでねよっぽど疲れたらしい」
「しらっと何言ってんの君(笑)」
「しかたないだろ?二人の『あれ』は生理現象のようなものだからね」
「二人の健康チェックをしたかったんだけど仕方ないね。それじゃユウキ君とミナちゃんを先に済ませちゃおうか」
「すまない。みんなのこと頼むよ」
「もちろんだよ」
ポルコはユウキとミナを回復用のカプセル型機会にに入れ専用端末で二人の健康をチェックしていく
この二つのカプセル型の機会はもともとは美亜がコールドスリープ処理を施し尚且つ病弱な体質だった彼女の体を一定の状態に保つようにプログラムされていたものであった
「僕たちの体は今どんな状態なんですか?」
「うん、大丈夫だよ特に異常はないよ」
しかしながらポルコは二人の今の状態を見てけして楽観視することは決してなかった。
だけどいつまでもこの状態のままではだめだ。
いづれどちらかの健康状態にほころびが生じれば取り返しのつかないことになる。
とくにミナちゃんはホムンクルスを素体として蘇生させられている。ユウキとの魂の結びつける形で彼からアニマを供給しまた魂の結びつきでミナちゃんのアニマを供給し彼に戻るような形になっている。
たとえてみればこれはメビウスの輪だ
いつまでもこの状態のままにしておくわけにはいかないのだ。
「兄さん、そろそろ晩御飯の時間だと思うんだけど」
ミナは身に着けていた腕時計をユウキに見せる
「あー皆いつもこの時間に晩飯についていたのか、ずいぶんと時間をとらさせてしまったね」
三人は食堂に向かう、すでに隆太とラピズ以外のメンバーがそろっていた。
「隆太とラピズは?」
「多分まだ寝てると思うよ」
「無理もないよ、お母さんとあんな別れ方したんだし」
理人たちは無言でテーブルに出されていた夕飯を口に入れる。
「これ奏花と美亜が作ったの?」
「うん、旅団の人たちが食料を提供してくれたからまともな料理が作れたんだけどね...。」
「これ二人のとこにもっていくわ、何か食べないとこの先もたないだろうし」
二人は一番上の三階にある一室でいつも二人で寝ている。天井には窓ガラスがついててよくラピズがそこからよく頭を出して外を眺めているそうな。
「おい二人とも晩飯もってきたぞ。」
..............
「気持ちはわかるが何か食べないと体に良くないぞ」
理人は二人の晩食を机に置いていく
「どうだった?」
「だめだ部屋から出てくる気配はないな」
あれから何度かトランシーバーで安否の確認をしようとしたが返事は来ない彼らはあの後どうなってしまったのだろうか?
「そろそろ洞窟から抜けるはずだよ」
ポルコはそういうと操縦室に入り運転をミディールと交代する
洞窟から抜けると既に夜が明け真っ白な凍てついた海の光景が彼らは目にする。
一行は地図を開きどこから上陸するか話し合うことに。
多分目の前に見える場所はあれは江の島だ
「このまままっすぐ前進させ江の島海岸から上陸する」
俺が住んでいた場所は綾瀬市だここからはそんなに遠くはない
「せっかくだから理人君が見てみたい場所を散策してみない?」
ユウキのその言葉にはすごくありがたいものがあるのだが.....
「あの二人にも気晴らしになると思うんだけどね」
俺が元々いた世界の日本とこの世界の日本とじゃまったく別物のはずだ思い出に浸ることなんてできるはずもない。
彼はこの時そう思った。
それがまさか思わぬ事態に遭遇し........
過去の自分と向き合う事となるとは.....
この時の彼はまだ予想だにもしていなかった....。




