表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME4 最悪の魔人とゼロスキルの戦士
53/95

特訓開始

ちょっとお仕事が忙しいので、不定期にお休みいただくかもしれません。


可能な限り更新できるよう頑張ります。

 特訓の内容は主に3段階だ。


 ① アーサーによる、肉体作り

 ② リウラによる、スキルの伝授

 ③ 聖也と実戦形式での模擬戦


 の3段階。


「声帯が発達していないのも、体が貧弱なのも、幼体期に、十分な心力(スヴォシア)を摂取できていないことによるものでしょう。心力(スヴォシア)さえ与えれば、今からでも肉体が成長する可能性は、十分にあります」


 ラクナの説明に、聖也たちがうんうんと反応する。

 そしてその説明に、聖也が手を上げて質問した。


心力(スヴォシア)って僕たちが生み出してるんだよね? なら僕たちが直接与えることはできないの?」

「貴方は意識的に心力(スヴォシア)を与えることができますか? 成神聖也」

「ああそうか……」


 質問に質問で返され、聖也が押し黙る。


「私たちが心力(スヴォシア)を摂取できているのは、貴方たちの腕にあるスキャナーのおかげです。スキャナーは人間の心力(スヴォシア)を、自分の契約戦士(チャンピオン)に供給するためのコントロール装置でもあるわけです」


 つまり、聖也たちは自分の契約戦士(チャンピオン)を経由してでしか、心力(スヴォシア)を与えることはできないということだ。


「アーサーの心力(スヴォシア)が必要な理由は?」

「アーサーがこの中で一番、肉体のスペックが高いからです。幼体の時、強い肉体を持つ者から、心力(スヴォシア)を分けてもらうと、強い肉体に育ちやすくなる傾向があります」


 紬が「母乳みたい」と感想を漏らすと、「その例えやめてもらえる?」とアーサーが顔をしかめる。

 リウラが完全体なら、リウラの心力(スヴォシア)が最適なのだろうけど、当の本人は頭と足が復活しただけだ。そんな不完全な肉体から心力(スヴォシア)を分けてもらうにはいかないらしい。


 いずれにせよ、心力(スヴォシア)を分ける役割はアーサーで決まりになった。


 次にどうやってリウラのスキルを教えるかだが――


「アーサーやゼロムが、俺に記憶をくれたように、俺がスキルを発動したときの記憶を、ゼロムに分け与えればできるのではないか?」


 リウラの自信満々な回答に、ラクナとアーサーが難しそうな顔で唸る。


「リウラはそう言ってるけど、できるの?」

「……まあ、簡単なスキルならそうですが」

「……よりにもよって、リウラのスキルだからな」


 不可能ではないらしいが、習得難易度は高いようだ。

 ラクナやアーサーのスキルも強力だが、今回の仮想敵はジーク。ジークを倒せる可能性があるとすればリウラのスキルだろう。

 それに役割特化型の二人のスキルと比べると、リウラのスキルは汎用性が高い。

 誰か一人、と問われれば、必然とリウラのスキルになる。


 そして、最後に模擬戦についてだ。


「僕がゲームでの戦い方を教えればいいってことか」

「ええ。スキルを覚えても実践で使えなければ意味がないですから」

「アーサーとかラクナじゃダメなの? 僕よりは強いでしょ?」

「俺らが教えられるのは、俺らの戦い方だけだ」


 聖也の質問に、アーサーが割って入る。


「リウラのスキルを覚える前提なら、その戦い方を理解している奴に教わるのが一番いい。当の本人はあのザマだから、お前が一番適任なんだよ」

「それに、何故だかは知りませんが、貴方は唯一、このゲームに関する記憶を引き継いでいる。戦闘の勘も悪くなければ、肉体的にゼロムと差があるわけでもない。今のゼロムにとって、一番の師はあなたです」


 二人から推薦されて、聖也がムムムと唸る。正直、真正面からの模擬戦なんて初めてだし、自分自身も探り探りでの指導にはなるだろう。


 だが、ジークに勝つためにはやるしかない。

 腹をくくるように、聖也は大きく息を吐いてから、ゼロムに向かい直る。


「とりあえず、やるだけやってみよう!」

「アウアウ……‼」


 互いに拳を突き合わせて、ゼロム育成計画がスタートした。

 皆で協力して、ゼロムという戦士を育成する。

 道のりは険しいが、皆の協力があればできるはずだ。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 当初はそんな風に思っていたのだが――


「……おい聖也。保健室行ってこい」

「ネテナイ……。マダ、ネテナイデス……‼」

「いや、寝るというか、今にも死にそうなんだが……」


 特訓開始の翌日、いかにも疲れ果てた様子で、虚ろな目で授業を受ける聖也に、板書を取っていた響子が声をかけた。

 定期的にガクンガクンと生気を奪われたように、白目をむいて舟をこぐ。

 その様子に教師を含めた、周囲の生徒はドン引きしている。


 聞いてないよ。特訓の9割が僕のパートなんて。


 いざ特訓を開始したは良いものの、肉体作りと、スキル習得のパートは、アーサーとリウラの心力(スヴォシア)を流し込むだけの簡単な作業なので、時間の大半は聖也との模擬戦だ。


 特訓は、【召喚都市(シティ)・昼】――ゲームの世界で行われる。

 デスゲーム時以外は、傷つくこともないし、お腹がすくこともないゲームの世界でも、気疲れというものはあるようだ。夜中を越えて特訓に付き合わされ、聖也の脳は1日目にしてグロッキーだ。


「……」


 そして、顔に包帯や絆創膏をして、痛々しい様子の豪も、眠そうに欠伸をする。

 ゼロムがログインしているということは、豪もログインしているということだ。実際に特訓には参加していないものの、豪もゼロム育成計画に、強制的に参加させられていることになる。


(この前の欠席分と早退の分もある……。これ以上、休むわけには……!)


 どれくらいの病欠で、特待生の権利が消滅するのかは知れないが、学費がかかっている以上、これ以上学校生活に支障は与えられない。


 周囲から心配するような視線を浴びせられながらも、なんとか昼休みまで持ちこたえる。


 そして、昼休み。聖也はいつものように、結の待つ屋上に集まり――


「……ちゃんと休んだら? このままだと持たないよ?」

「……ダメだ。どうせ放課後は特訓に付き合わされるんだ。今のうちに宿題やらなきゃ……」


 右手で弁当を食べながら、左手で今日の宿題を終わらせる。

 あまりに行儀の悪い光景に、心配しながらも、呆れた様子で結は自分の弁当を食べる。


「しゃあ終わり‼」


 食事と宿題を同時に終わらせ、いざ寝ようと、両手を広げた時だった。


「お、いたいた。聖也。今から話できるか?」


 屋上の扉から響子が現れ、こっちへ来いと、聖也に手招きをしてきた。


「……はい」


 生きててこんなに睡眠が恋しいと思ったことはない。

 貴重な休養の機会を奪われ、響子の元へ歩いていく聖也の背中は、酷く重苦しいものに見えた。


「ちょっと豪のことでな――」


 そんな会話をしながら、階段を下っていく二人を、結は心配そうに見送った。


 そして、聖也が去ってからしばらくした頃だった。


「……結ちゃん」

「……なあに? 豪くん」


 結の前に、神妙な顔をした豪が現れた。

 結は、その存在を包み込むような、優しい視線で微笑んだ。


「……教えてくれよ。ゲームの事。それと…………聖也のこと」

「いいよ。こっちでお話しよ」


 結が豪を手招きして、自分の傍へ来るように促す。


 二人並んで、屋上のフェンス越しに街を見下ろしながら、「どこから話そうかな」と、独り言のように呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ