ひと安心
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王様とのお話が終わった後、魔王様は私達をオルガ城からディメンションへ転移させてくれた。 そして魔王様は人選があるからと魔界へ。
私達は営業前のお昼を食べながら、帰ってきたコーディさんに今日のお話をする。
「そんなことがあったんですね……。 昔魔王様がアナーキー畑をほとんど焼き尽くした時は、いきなりの経済的損失で財務部が悲鳴を上げたらしいです。
先輩が『魔王様がそこまでするなんてどれだけヤバイ植物だったんだ!』って震えながら教えてくれましたよ」
コーディさんは苦笑いだ。
「アタシ達はとりあえず見ねぇ。 魔族が介入したらオルガ国が人界で孤立しちゃうものっ! 魔王様の言う通り情報収集くらいしかしてあげられないわぁ」
……ナイトさんやお客様を見ているうちに、私も魔王様と同じく人族を力で支配しようという気は無くなった。
なんていうんだろう……ナイトさん達が魔王様を信頼している姿を見て、私達魔族と同じように魔王様を崇拝してほしいと思うようになった。
力ではなく心で支配するのが魔王様の目指している人界征服なんだな。
だからオルガ国民がアナーキーに蹂躙される未来は許しがたい。 魔王様がオルガ国民を支配するのだ!
「アレイルにはオルガの王族や貴族が嫁いでいるはずだから、オルガ国に情報はすぐ入ってくると思うわ。
オルガが香の輸入制限をかけて、アレイルに別の支援を提案するからとりあえずアナーキーは大丈夫なはずよ。
ただ、どの国の思惑なのかを知っておきたいわ。 これからの系列店出店に影響があると困るというのが魔王様のお気持ちよ」
ルルさんがアナーキーは大丈夫と言ってくれたことによってみんな安堵の表情になった。 ルルさんってすごい。
でもどこの国がやったのかわからないのが気味が悪い。 アレイルのうっかりでありますように……。
「とりあえず俺らは客の会話に気を付けて、変な話があったら魔王様に報告すればいいんですか?」
「そうよレイスター、お願いね。 4人は毎日ディアブロへ行っているわよね? エルドラドの住民がアレイルの香を買わないよう、気を付けて見てあげてくれるかしら?」
「わかりました! 変な香が売ってたらニッコリと『僕、その匂い嫌いなんですよねぇ……』とでも言ってやります!」
ルルさんにニチャリ……と笑ったコーディさんの笑顔が怖いっ!
「そ、そういえばコーディさん、ディアブロのお話はどうなったんですか?」
同じ財務部として気になるところだ。
「はい、十分な利益が出ているので、クレイドさんシャナさんキャロルさんの基本給と魔道具やポーションの材料費だけ利益から分配することになりました。
その他にニーナさんが勝ち取ってくれた人界出張料があるので、それはそのまま魔界の予算からです。
きっと魔王様はエルドラドの住民になるべく自立してほしいというお考えでしょうから控えめにしました」
「なるほどですね」
ディアブロの3人は直接人界征服に関わらないから最低限の人件費はディアブロの利益でまかなって、プラスアルファは人界出張料で調整するってことかな?
「魔王様ってば何となく魔族っぽくないのよねっ! あ、いい意味でよぉ? 他の部族でも家族同然に接してるところが素敵だわっ☆」
「確かになー! ニーナは強いから父さんが魔王軍に入隊させようとしたけど、魔王様が『へっぽこに軍は無理だ』ってニーナ希望の財務部に入れたもんな。 異例だぜ」
「う、うん、そうだったね。 そういえば魔王様は学校や図書館を作ったり、今はディメンションを作ったり、何か建物を作るのが好きなのかな?」
ラウンツさんやお兄ちゃんの言う通り、魔王様は何となく「魔族! 戦いが全て!」って感じじゃない。 異世界にいたからかな?
でも魔王様のお強さは尋常ではないから、15歳という若さで父である前魔王様に勝って魔王に就任したらしい。 魔族の頂点たる王は一番強い者、というのが魔族の風習だ。
「魔王様は今までの魔王様と視点が違うわね、人材を適材適所に使うのが上手いわ。 そこも魔族の支持を得ている理由の一つよ。
ただやはり魔族は大陸を支配している人族への支配欲が強いから、不満の声が大きくなる前に今回の人界征服を計画したのね。 前は一撃入れて終わりにしちゃったもの」
みんながなるほどと頷く。 ルルさんは昔人界侵攻したから魔王様の事を良く知ってるなぁ。 国民の不満を発散させるのも王の大事なお仕事なんだな。 でもなんで私がメンバーに選ばれたのぉ!
「そういえばルルさん、アナーキーの話はここにいる7人と魔王様以外には内緒よネッ?」
「そうね。 さて、そろそろ営業準備をしましょうか」
ラウンツさんとルルさんが締めてこの話は終わった。
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あれから何事もなく日々は過ぎていき、なんとなく拍子抜けだ。
今日は4週目6日目、みんなで営業前のご飯を食べ終わったところだ。 明日のお休みを挟んで明後日は決戦日かぁ……。
「ニーナ! 明日ダンジョン行かない? またエタフォ見せてよ! ……ブフォ!」
「やだよアーニャ。 何で笑ってるの?」
「いや、エタフォを習得した私を想像したら思わず笑みが、ねっ!」
「俺も見たいぞニーナ! ……ブフォ!」
「お兄ちゃんもエタフォ覚えたいの? やだ。 自分で覚えて!」
「えー! 見せてよー!」
「見せろよー!」
そんなやりとりをしていたら魔王様からパーティ念話が。
『アレイルはやっぱり小麦が凶作だった。 んでオルガが、高価な嗜好品ばかり輸入できないって輸入制限をかけた。
オルガからの提案でアレイルは国債で小麦を輸入し始めたぞ。 ちなみにアナーキーの話は両国とも出していない。
もうアナーキーはオルガの検問で見つけ次第、裏で処理されるから安心しろ。 でも引き続き他国の動向は注意してくれ』
みんな了承の返事をしてパーティ念話は切れた。
「ニーナ、こくさいって何?」
アーニャに聞かれた。
「アレイルがオルガに借金をしたってことだね」
「ふーん、踏み倒されないといいね! カケは怖いって魔王様が言ってたよ!」
「売掛と国債を一緒にしないでよぉ……同盟国だから大丈夫だと思う……よ」
「アナーキーの心配がなくなったら一安心だな! とりあえず下に降りようぜ!」
お兄ちゃんに促されて気持ちを切り替える。 お仕事をしていれば気が紛れるから今日も頑張ろう!
……恋物語の勉強会がダンスの練習に変わって、私とメイリアさんがまたクビになりダメージを食らっているのは考えない事にする。
ナイトさん達もラウンツさんからダメージを食らってるけど誰が得をしてるの⁉ あ、ラウンツさんかぁ……。
「そういえばニーナ本当にお仕事がなくなっちゃったね!」
〈空間固定〉を無詠唱で発動、アーニャを固定し左耳へ囁きかける。
「ネグリジェはピンク、紫、赤、青、────」
「〈縮地〉! ぎゃぁぁぁああああああああ‼ 動けないっ‼ やめてぇぇぇええええええええ‼」
私の魔法に勝てるとでも?
「────水色、黒……特にお気に入りはスケスケの白……」
「ゴフッ……」
「フッ……呪詛! 完成!」
呪いを完成させてやった!
「二人とも何してるのぉ? 仲良しネッ☆ 早く行きましょっ!」
「はいっ! ラウンツさん!」
アーニャにダメージを与えてくれてありがとう!
そして営業が始まった。 今週はずっと魔王様がいない。 エルドラドと魔界のお仕事とオルガ国王からの相談で忙しいらしい。
「アーニャ今日はどっちに賭けるの?」
「話しかけないで……」
ククク……呪いが効いてる効いてる!
ピポン!
あ、クラリゼッタさんおかえりなさいませ。
ミミマリンさんも来た。 カリンさんは来ないのかな? 今日は決戦日直前なのに。
そして今日という日の前哨戦が始まった。




