2号店正式オープンまで
「よし、みんなお疲れ! プチミーティングするぞー!」
魔王様のお声でみんな一般席のソファへ腰掛ける。
「みんなよくやった! プレオープンは大成功だ! 貴族へ釘も刺せたしな!」
……結局キャロルさんが言ってたのと変わらない脅し方だったよね⁉
「今後もし問題が起きたらまず内勤のバレットとレオに言え、それでもダメならコーディだ。 この3人は頑張れよ?」
バレットさんとレオさんの背筋がシュッ! と伸びた。 内勤さんは裏方だけど、実は縁の下の力持ちなんだな。
「代表、ラウンツさんとレイスターさんではダメなんですか?」
アレンさんと仲良しのルフランさんが質問する。
「ああ、言ってなかったな。 この店が落ち着いたら、コーディ以外の魔族は他の国へ行って系列店を作る。 俺はたまに顔を出してやるから安心しろ」
「そっ! そんな! ルルさん……」
みんなルルさんにすがるような視線を送っている……。 ルルさんは研修中さぞ頼りにされてたんだろうな。 魔王様の言った事の一を知れば十を理解する人だからね……。
ふふふ……もうすでにナイトさんたち人族は魔王様とルルさんの支配下だ! この調子でねずみ算式に配下を増やしていくぞ!
「みんな大丈夫よ。 一人前のナイトになるまで私が毎日お客様としてお店に通うわ」
ルルさんが微笑んでそう言い、みんなを安心させた。 まるでみんなのおか……お姉さんだな。
「ははは! やっぱルルは人気だな! ちなみにシャナとキャロルはずっとダンジョンにいるぞ。 あいつらも客として来るかもな」
「はい! 私もお客さんとして行くよ!」
「アーニャはまだ諦めてなかったのか……」
「お給料が上がったからね! ちょっとなら遊べるよ! いいでしょ⁉ 魔王様!」
「ハァ……好きにしろ」
アーニャは両手を組んで天を仰いだ。 正確には天井だけど。
てかその祈りのポーズはやめてってば! 魔族のくせに聖なるオーラを出さないでぇ! なんとなくヒリヒリするんだよぅ!
「明日からはダンスの練習だぞー! 頑張れよ!」
「アタシをエスコート出来るまで合格は出さないわよぉ☆」
ラ、ラウンツさんも諦めていなかったらしい……。
「ラウンツ……ハァ、もういいや、お前も好きにしろ。 デ……ふくよかな女も来るだろうから練習にはなるだろ。 じゃあ簡単に片付けて解散だ!」
「まっ、魔王様……っ! アタシ頑張るわぁぁぁあああああ‼」
ラウンツさんのプレゼンが初めて成功した……ッ! こ、これは尋常じゃない被害想定をしなければっ‼
「そうだ、ニーナ、メイリア。 お前らはまた明日からシャナとキャロルと交代だ。 ダンジョンをよろしくな!」
「ひゃい」
「……はい……」
また左遷させられた……っ!
むぅ、魔王様め。 いいもん! 明日から私はまたニャンダフル副店長として頑張るもん! 私の理解者はメイリアさんとラヴィだけだっ! アダマンタイトとランランを貢いでやるぅ!
お店の片付けが終わったら2階へ上がってご飯だ。
「ニーナ! また研修クビになったんだね!」
スッと〈影移動〉でアーニャの左後ろに移動し「ネグリジェはピンク、紫────」と呪いを唱え始めたら〈縮地〉でシュバッ! と逃げられた。 また今度なんか言ったら呪いを完成させてやろう。
──────────────
今日からディアブロとニャンダフルでお仕事だ!
「私はニャンダフルへ行ってきますね。 メイリアさんは?」
「……ちょっと研究……」
? 何の研究だろ? まぁいいや、聞いてもどうせ理解できないし。
「エリーさんリリーさんおはようございます」
「おはようプゥ!」
「おはようプゥッ♡」
「ディメンションのプレオープンは大成功でしたよ。 女性冒険者さんは来てくれそうですかね?」
「昨日キャロルが、ランランを持って来た時にお客様に宣伝してたプゥッ」
「みんな本当に1000ディルでいいのかキャロルに聞いてたプゥ。 みんな行ってみるって言ってたプゥ!」
「わぁ! ありがとうございます!」
ラヴィをモフり倒してお昼にラヴィオムライスを食べたけどちょっと飽きてしまった。 メイリアさんへの貢ぎ物に鉱石っぽい岩でも採ってこよう……。 断じて、お礼にランランの種をもらえるかもなどとは思っていない、うん。
「グォオオオオオオ‼」
「キマイラさんこんにちは」
「あ、こ、こんにちは……」
キマイラさんは相変わらず仕事熱心だ。 咆哮を聞かれて恥ずかしがってるけど。
「ちょっとオリハルコンやアダマンタイトを探してきますね」
「あっ! それならミスリルゴーレムが知ってますよ!」
「えっ⁉ あ、ありがとうございます。 お仕事頑張ってくださいね」
キマイラさんは前脚でバイバイしてくれた。
さて30階層だ。
「…………」
「ミスリスゴーレムさんはじめまして……」
「コンニチハ」
「あ、あの、オリハルコンとかアダマンタイトの場所を教えてもらえたら嬉しいんですけど……」
「ココニアリマス」
ミスリルゴーレムさんがボス部屋の宝箱を持ち上げると床の色が違った。 床の石板を持ち上げられるよう、ご丁寧にへこみまである……。 そこに手を引っかけて持ち上げ……重い! 空間魔法で持ち上げた。
わー……オリハルコンとアダマンタイトらしきものがあるー。 アッサリ隠し場所を教えてもらったから何の達成感も無いっ!
まぁいいや……メイリアさんやドワーフさんが喜ぶだろうし! ワクワク宝探し☆ の演出のために隠し場所はヒントだけ教えてあげよっと! ふふふ!
「ミスリルゴーレムさんありがとうございました! ところで悩みとか無いですか? 大丈夫ですか?」
キマイラさんと違ってちょっと心を閉ざしている感じがする……。 ラウンツさん被害者の会が発足してないかな? ドキドキ。
「マゾクツヨイ、ジュウジンツヨイ、タノシイ」
「そ、そうですか……良かったです」
どうやら杞憂だったようだ、よかった。
そんな感じで私は毎日ニャンダフルと30階層に通ってメイリアさんからランランの種をもらった。
「メイリアさんただいま! 今日も採って来たよ」
「……おかえり……ニーナ、ちょっとこの液体に魔力欲しい……」
「ん? はい、いいですよ」
ビーカーに入った液体に魔力を一瞬だけ流した。 私は魔量の微調整などできないので時間で調節だ! ビーカーが割れなくてよかった。
「……ありがと……あと〈紅霧〉も見せてほしい……」
? そういえばメイリアさんは〈紅霧〉に興味があったな。
「ちょうど夕方だからいいですよ!」
広場に出て〈紅霧〉を発動! 体の中で魔力がブワッとなるー! 魔法ぶっ放したいな!
チラリとメイリアさんを見ると何かの箱を持っていた。 何だろ?
「……また魔力欲しい……」
「あ、はい」
再びビーカーへ魔力を。 メイリアさんがニヤニヤしてる……研究って私の事⁉ ま、また人体実験されないよね⁉
「……ありがと……」
「もういいのかな? なんか落ち着かないから魔法ぶっ放すね! 〈水竜〉‼」
森の遠くへ大きな水魔法を放った。 お水ならいいよね、うん。 久しぶりにおっきい魔法を使ったから何かスッキリした!
〈水竜〉とともに、魔王様が私を左遷した事は水に流してあげよう。 私はなんて心が広いんだ。
「ニャァッ⁉ ニーナ! 戦うニャァ!」
「ひぃ!」
久しぶりに私の魔法を見て闘争心が刺激されたシアさんをなだめるのは大変だった……。 「明日はディメンションの正式オープンだから」という事で何とか納得してもらった。 ふぅ。 真っ向から戦うのは怖いんだよぅ!
明日は正式オープンだ! お客様たくさん来るかな? ふふふ……みんなディメンションの虜にして人族を支配下に置くぞー!




