ラウンツ:おめでとうございます生まれましたよ、おネエです!
閲覧注意! おネエ成分が濃すぎます!
「ラウンツってばお疲れちゃんねぇ! ちょっち、アチシの部屋で一緒に食べなぁい?」
戸惑いながらもアタシはジェニーさんに付いて行った。
ジェニーさんの部屋に入った瞬間、アタシの緊張を興奮に変えたのはフローラルで甘い香り。
そして部屋中にある白やピンクの毛布、クッション、レース、ぬいぐるみ、化粧台、お化粧品……。そう、完全にアタシが憧れていた「女のコらしい自分の部屋」だった。
小さなテーブルを二人で囲み、食事に手を付け始める。
「ラウンツちゃぅん! ……第三部隊に配属されて大変でショ?」
(ラウンツちゃん……?)
「……はい。なぜ魔法の苦手な僕がわざわざ第三部隊なのか……魔王様のご期待に沿えなければ、除隊される未来しか残されていません……」
「そんなコトだろうと思ったわぁん! チガウのよん! 逆転の発想よ! これ以上ラウンツちゃんに最高な環境は他にないわよぉんっ⁉」
「えっ⁉ 最高な環境……?」
「そぉうよぉんっ! んもうっ! 考えてみてご覧なさいな⁉ ラウンツちゃんが今から他の魔法バカに追い付こうったってソレは無理よぉん! ってコトは……ラウンツちゃんの武器、馬鹿力を極めるしかないわぁん! ソコまではオッケー?」
「はい……」
「じゃぁ魔法はどぉするのかって話だケド……。ウチの部隊なら毎日好きなだけ魔法攻撃を受けられる……つまり、それを乗り越えてラウンツちゃんが物理で魔法に対抗することが出来るようになればそれはもうっ! 最強じゃなぁいっ⁉ ラウンツちゃんなら殴れば相手は死ぬ。そして敵の攻撃なんて当たらなければどうという事も無いわぁんっ☆」
「物理力で魔法に対抗……あの、無理では……」
「ちっちっち! ラウンツちゃんが、魔族で初めてそれを極めればいいのよっ! 脳筋バカなら地方支部に腐るほどいるわぁん。そんなのと同じになってイイのっ⁉ せっかくの環境よっ⁉ 本部配属よ⁉ 出世コースよ⁉ そしていつかは魔王様へお近づきに……イヤンッ♡!」
ジェニーさんの手に握られていたフォークは、ジェニーさんの魔王様への愛によってグニャリと芸術作品へ変貌したわ。
(ジェニーさんは魔王様が好みなのね……って違うわっ! アタシの特性を極めて魔法に対抗する……。確かに、アタシにはそれしか道は無いのかもしれない……)
「ジェニーさん……ありがとうございます! 目の前の霧が晴れたようです! もう迷いません! 物理で魔法に対抗します! 明日からの目標が出来ました!」
「んんんっ! イイ目になったわねぇん! アチシも協力するから頑張りましょっ♡ ……と・こ・ろ・で♪ ここからが本題よぉん! ラウンツちゃんっ! もう自分をさらけ出しなさいっ! ここは首都ラザファムよぉ⁉ 田舎の狭い世界から飛び出したのよんっ⁉ 何のための個室だと思ってるのっ! さぁ! まずは自分のコトなんて呼ぶのかしらっ⁉ ランちゃんなんてどぉお~? アッ! アチシのおニューのネグリジェもあげましょっか⁉ 生まれ変わるランちゃんへのプレゼントよぉん!」
「えっ⁉ ランちゃん……? ネグリジェなんて、そんな……」
「いいからいいからぁんっ! ちょっち着替えてみてぇん♡」
そしてアタシは無理やりネグリジェに着替えさせられたわ。
(これが……アタシがずっと着たかった女のコの服……)
ネグリジェにそっと袖を通す。頭から被ったネグリジェがアタシの腰から太ももを撫でながらストンとひざ下まで落ちた。
「ランちゃんっ! いいわぁん! んじゃっ! 次はお化粧ねぇん♡」
「えっ⁉ お化粧⁉」
「ランちゃんはヴァージンだからナチュラルメイクで手加減してあげるわぁっ! ウィッグもあるわよぉん!」
「え? え?」
そしてアタシは生まれ変わったの。ジェニーさんがそのゴツい手でアタシの固い殻を取り払ってくれたわ。
「これが……アタシ……?」
「イヤァンッ! ランちゃんキレイだわぁっ! これでもうアチシ達はソウルメイトよぉん!」
鏡に映ったアタシのゴツい顔はどう見ても男だったケド、それでも……嬉しかった。だってジェニーさんが心から喜んでくれたから。
「ランちゃん、いい?」
ジェニーさんがアタシの肩をガシッと掴み、真剣な顔でこう言った。
「アチシ達は周りから見ればゲテモノ。でもね……魔王様がアチシに下さった言葉を今度はアチシがランちゃんにあげるわ」
(魔王様が……?)
「おネエはコソコソ恥ずかしがっていたらただの笑い者。でも、しっかりと自分を持って明るく振舞えば、周りを笑顔にする道化になれるの。何事にも動じないピエロは最高のエンターティナーよぉんっ! だから、ゼッタイ恥ずかしがっちゃダメよっ⁉」
「……つまり……おネエの世界はエンターティメント……」
「そうっ! そうよランちゃんっ! 一瞬でおネエの世界の核心を突くなんて、さすが魔王様のお目に留まっただけの事はあるわぁん! 明日からランちゃんもお化粧しまショッ⁉」
「エッ⁉ 僕……いえ、アタシはまだその勇気がないです……」
「ンッン~……そうね、出来る所から始めればイイわぁん! これからヨロシクねっ! ランちゃんっ!」
「…………モ、モチのロンよぉっ!」
「キャァンッ☆」
そしてアタシは次の日からおネエ言葉を隠さなくなった。
一度勇気を出し、みんなの前でジェニーさんとおネエ言葉で話してしまえばなんてことは無かった。ジェニーさんがいてくれたから簡単に乗り越えられたの。
でも見た目は男のままネグリジェだけ愛用していた。だって戦闘の邪魔になるから髪なんて伸ばしている場合じゃなかったんだもの。
いつか、勇気を出せるその日が来たら。
そう胸に秘めてその日を待ちわびていた。
さらに月日は経ち、アタシは〈飛行〉を使いこなせるようになった。そして身体強化と〈縮地〉を極め、瞬間移動にも似た〈極地〉を習得した。〈極地〉と名付けてくれたのはもちろんジェニーさんよ。
〈極地〉を使えるようになったアタシは第三部隊のエースとなった。だって魔法の発動より早く相手の懐に入り込めるようになったんだもの。距離さえ詰めてしまえばそれはもうアタシの独壇場だった。
アタシに容赦なく魔法を浴びせ戦闘訓練をしてくれた第三部隊のみんな……みんなのおかげでアタシは〈極地〉を習得できた。
初めて〈極地〉でジェニーさんを圧倒した日、仲間のみんなが『第三部隊のおネエース』なんてあだ名を付けてお祝いしてくれたわ。もう嬉しくって嬉しくってアタシとジェニーさんが涙と鼻水でグッチョグチョになりながら大泣きしたのは青春の一ページねっ!
アタシが第三部隊の、しかもジェニーさんの班に割り振られたのはきっと偶然じゃない。
魔王様はバーラントお兄ちゃんの言う通り、アタシを生きる道へ導いてくれた。身体も、心も。
〈極地〉習得によりアタシが第三部隊で頭角を現した頃、魔王様によって魔王軍の構成変更がなされた。
リオル隊長率いる魔王様専属護衛部隊、近衛隊の発足よ。
そしてなぜかアタシも近衛隊に選ばれ、魔王様の私室に呼ばれた。
二十歳の春の日の事だったわ。
これが……アタシ……? だそうです。
ネグリジェの犯人んんん!!!!!




