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【まおホス!】魔王様のホストクラブ作り!……に振り回されて大変です!【表紙挿絵有】  作者: つーちゃん
第五章 ちょっと戦争ブッ飛ばそうぜ
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熱と震えと 後編

ニーナ視点→村人視点になります

 開けっ放しだった家のドアからそっと中を覗くと、ディオルフィーネお姫様とボビーさんと村長さんがベッドに座っている男女の周りを取り囲んでいた。

 ……女の人の腕には小さな赤ちゃんが。お姫様は赤ちゃんの頭へ手をかざしていてほのかに光が出てる、治癒魔法かな? ちょっとぞわぞわするもん。


「イルマ! 大丈夫か! イルマ!」

「なぁ村長! これ死んじまうのか⁉」

「……赤子の事はセレネー様に任せるしかない……そういうものじゃ……」

「そんな……それって……」

「セレネー様と生命の源、ユグドラシルへお祈りしましたからきっと見守ってくださいますわ……」


 ……あれ? 赤ちゃんを魔力感知してみたけど今すぐ死ぬような感じじゃない。死にかけの魔物を見た事があるから分かる、命の(ともしび)が消える時はまず先に魔力が無くなるのだ。


 ……えっと……これってもしかしたら大丈夫なやつかも……。


「あ、あのう……」

「ッ! 魔族!」


 私が話しかけたら全員ビクッとなった。


「あ、赤ちゃん、大丈夫かもしれないです……」

「大丈夫なの⁉」


 母親らしき人が涙でぐちゃぐちゃの顔で私に聞いた。


「は、はい……私が赤ちゃんの頃たまにそうなっていたらしいです。高熱が出た時に白目になってぶるぶる震えて唇が真っ青になって、その度にお母さんは私が死ぬんじゃないかって心配したって……」

「イルマと同じ! あなたはどうやって治ったの⁉」

「ななっ何もしてないそうですっ! ……すぐ元に戻ったから特に何もと。お母さんが色々な人に聞いたけど、すぐにおさまるなら平気みたいで。ずっとこのままだったら……あれですけど……」

「すぐにってどれくらい⁉ ずっとってどれくらいなの⁉」

「落ち着けジーナ! 見ろ、話してる間にイルマ元に戻ってないか?」

「……あ……本当……。大丈夫って事……?」


 母親が私に目で訴えかけてきた。……し、知らないようっ! お母さんから聞いた昔話だもん。


「えっと……分からないですけど……あとは熱を出した時と同じように看病するしかないと思います……」

「……あなたは何回もこうなったって言ってたけど今は元気なの?」

「へっ? あ、はい元気です……なんか体質とか発作みたいなもので、赤ちゃんの時だけだったみたいです」

「そう……そうなの……ありがとう、様子を見るわ……ありがとう……っ!」


 私が赤ちゃんの時の話をしただけなのにお礼を言われてなんかムズムズするっ!

 このお母さんがお乳の出ない人かな……ご飯食べてくれるといいな。

 ……この赤ちゃんは……本当のお父さんとお母さんがいるんだ。……いや当たり前だよね。


 ハッ! っていうか、も、もういいかな? 人族の家にいるのはなんか場違いで落ち着かない、外に出よう……。


 私が外に出たらお姫様と村長さんも出てきた。


「今日わたくしがここへ訪れた事ですが……他の村や町に行く事があればこの二つだけお話ししてください。わたくしが訪れた事、そしてあなた方が魔族からの食糧をどうしたかを」

「は、はい、お心遣いありがとうございます……」


 村の広場まで戻ってきたお姫様が村長さんにそんな話をしていた。


 う~ん……お姫様が魔族の私と一緒に来たっていうのまで他の村に広がると、お姫様に良からぬ噂が立つって事かな? 魔族と共謀してるとか魔族に操られてるとか人族なら言いそう……。


「ではわたくしの愛する民よ、ごきげんよう……」


 お姫様は広場の村人たちへそう言い、村の出口へ向かった。


 私も帰ろうっと……って……どどど、どうしよう! 私は一緒に付いて行かない方がいいよね⁉ でも村人からの視線が怖いぃ!




 結局、私も村を出てお姫様とは違う方向へ歩いてから闇に紛れて魔王様と合流した。お姫様は先に魔王様の元に到着していたみたい。


「ニーナお疲れ! 集音魔法で聞いてたぞ。俺様の演出はバッチリだろ⁉ ディオルのおかげでこの村は大丈夫だ!」


「魔王様っ! お姫様が来るなんて聞いてませんよっ⁉ 何で教えてくださらなかったんですかっ⁉」


「ディオルが来るって知ってたらディオルに頼っちまうだろ?」


 むぅ! 確かにそうだけど……それなら最初から私はいらなかったのでは?


「村人はニーナさんのおかげで、少なくとも食糧を運んだ魔族への警戒心は減りそうだわ。適材適所ね。いい魔族……うふふ……ふふっ!」


「だろ⁉ へっぽこは意外と役に立つな~!」


 なんだろう、お姫様と魔王様から褒められてるのか馬鹿にされてるのか微妙だ……。


「よし! じゃああと九ヶ所町を回るぞー!」


「ぎゃぴっ⁉ ここだけじゃないんですか⁉」


「この村だけじゃ噂が広まるのが遅ぇ!」


「ニーナさん、頑張りましょう!」


「お、お姫様まで……ハッ⁉ もしかして魔王様、最初からお姫様と計画してましたね⁉」


「おうそうだ! アレイル国王も行くって聞かなくて抑えるのが大変だったぜ! ディオルの格好、王族が必死こいてお忍びでやって来た感がバッチリ出てただろ⁉」


 王様までっ⁉


「ふふっ……ネグリジェが真っ黒になるまで行くわ!」


 ……お姫様まで計算で行動を? さすが王族、恐ろしいっ! あれ? でもお姫様泣い──。


「じゃあ転移するぞー!」


「ひぃ! ままま! 待って──」




 そしてその晩、私はお姫様と共に計十ヶ所でお芝居を繰り広げた……。




──────────────


 俺はイルマの様子が落ち着いたのを確認してから広場へ戻った。

 もうディオルフィーネ様と魔族は帰っていて、村のみんなはそのまま広場で話し合いを始めたみたいだ。俺もボビーの隣へ行き話し合いに参加する。


 みんなディオルフィーネ様が慰問に来てくださった事や、「いいまぞく」がディオルフィーネ様と繋がっている事は分かったみたいだけど色々ありすぎて混乱状態だ。

 ディオルフィーネ様のお言葉の意味と「いいまぞく」を信じるかどうか、ざわざわと疑問や意見が飛び交う。


 あーでもないこーでもないと話す俺らの声をじっと聴いていた村長が目を開け、咳払いをした。


「ゴホン! ……話を、整理する」

「「「…………」」」

「ディオルフィーネ様は最後、ワシにこう(おっしゃ)った。他の村や町に行く事があれば二つだけ話をしろと。一つ目はディオルフィーネ様が訪れた事、二つ目はワシらが魔族の食糧をどうしたか、だ」


 二つ? ……あ、魔族の事は隠せって事か?


「ディオルフィーネ様はこうも(おっしゃ)っていた。『知らない方が幸せな事もある』、そして『魔族が()()()食糧を運んでいる』とな。だが魔族は『アレイルとオルガから正式に許可が出ている』と言っていた。……つまりはこういう事であろう」


 村長は大きくため息をついた。

 ……そういえばどういうことだ? ディオルフィーネ様と魔族の言ってる事が違う。やっぱり魔族が嘘をついてるんだよな?


「アレイルとオルガ、そして魔族は協力して食糧を輸送している」


 ……は?


 場は水を打ったように静まり返った。


「……あの魔族の言った事は本当なのであろう。しかしアレイルとオルガは国として、魔族と協力関係にあるなどという事は大っぴらに出来ない。であるからディオルフィーネ様が隠されたメッセージをお伝えに来てくださったのだ」

「村長! 隠されたメッセージってなんだ⁉」

「ボビー、お前さんにも分かるように言ってやろう。……魔族が運んでいるのはディオルフィーネ様の故郷であるオルガの民が丹精込めて育てた食糧、それをどうか捨ててくれるなと。そして魔族が運んでいるのはアレイルの意思でもあると。さらに、ワシらが生きるか死ぬかは『いいまぞく』を信じるか信じないかにかかっているという事じゃ。……ディオルフィーネ様はのう、あのようなお姿を見せてまでこの村の皆に生きてほしいとお思いくださったのであろう。それほどまでにあの魔族を信じていると伝えたかったのであろう。……ワシはの、そんなディオルフィーネ様のお気持ちを全て受け止めたい。その結果死んでも、それでいいと……思った……」


 まただ……また体がカッと熱くなって(ほお)に生温いものが伝う……!


「うおーーーーーっ! オレ、食うよ! 魔族の食糧食うよ!」

「ボビー! お前はっいづも食っでんだろうぉがぁ……ッ!」

「ダニーもジーナも食えよぉっ!」

「……ッ……ジーナにこの話をするよ……ッ……。グスッ……なんだよ! こんなことされたら食うしかねェじゃねェかっ! 村長が言ったのはディオルフィーネ様の心の叫びだろ⁉」

「……そうであろう。……あの魔族の言葉もただただ真っすぐであったという事か……。あの子が最初に気付いてくれたのか……ワシは悪い事をしたのう。……皆の者、ディオルフィーネ様の最後のメッセージだ。『ディオルフィーネ様が慰問に来てくださった、そしてワシらはそのおかげで迷いなく食糧を食する事が出来た』これ()()を他の村に伝えるのだ! 具体的にどんな話があったか余計な事は言うな、かえって混乱させる。他の村も助けてほしいというディオルフィーネ様の願いを叶えろ!」


 「二つ」って本当に「二つの言葉だけ」って意味か!


「「「……おおおおおおぉーーーーー!!!!!」」」


 ボビーを筆頭にみんなで雄たけびを上げ、俺は家へ帰った。




「──っていう事だ、ジーナ」

「……分かった。私、食べるわ。この子のために」

「ジーナ!」

「ディオルフィーネ様がイルマにお祈りしてくださったのだもの、絶対イルマも生きるわ。……それにしてもあの魔族の子、本当に『いいまぞく』にしか見えなかったわね。くっくっく……あはははははっ!」

「あーうー! あー!」

「イルマ! お前もそう思うか⁉」

「イルマ……いつの間にかケロッとしてるわ……まだ熱があるんだからねんねしなさい?」


 そうして俺はジーナとイルマを抱きながら、久しぶりに安らかな気持ちで(まぶた)を閉じた。


 ……明日は腹いっぱい食ってやる!




第五章~完~


10/1(金)お休みします(∩´ω`∩)


赤ちゃん、現代でいう熱性けいれんでした。

次章はついに四天王戦です!

四天王のせいでホストパートまでが遠い!ヤッチマッタ!

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