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第六章 偽りの真実 ②真相

本日3本更新、ラストの3本目です。


この回、最後に少しだけ残酷な描写が入ります。(人は死にません)

◆印以降にありますので、苦手な方はそれ以降飛ばしていただけますと幸いです。

次回に補足は入れさせていただきます。

よろしくお願いいたします。


 ライア皇女殿下──。


 グウェン様の来訪前に母様から叩き込まれた話だと、グウェン様のお母様。

 先代国王の側妃で、アテルナ帝国が属国になる際に、その証として贈られた妃。


 ライア妃はグウェン様が生まれて間もない頃に亡くなっているはず……。



 そのライア妃の願いって一体どういうこと?

 ライア妃はグウェン様が国王になることを望んでいたの?


 属国の皇女であるライア妃はとても美しい方で、正妃である今の国王陛下の母君、ギュリア様にかなり虐められていたらしい。

 ライア妃が亡くなった後、ギュリア様はその矛先をグウェン様に変え、グウェン様は幼い頃からかなり辛い目に遭わされていたそうだ。


 グウェン様の前では絶対にギュリア様の話題を出しちゃいけないって、母様から強く言われてたけど……

 やっぱり王位継承争いが関係していたのかしら?


「ライア様を虐げたあの女狐め、グウェン王子の番いを異界に飛ばした上に、幼い王子を精神的に支配するなど……」


「え? それってどういうことよ!?」


 あまりの驚きに思わず反応してしまう。

 そんな私を嘲笑うように、さらに見下した視線を向けながら男は話し出す。


「自分のことなのに何も知らないのか。お前はギュリア妃によって異界に送られたのだよ。グウェン王子が獣人として覚醒して力をつけないためにな。覚醒してしまえば、自分の息子の王位が危うくなると恐れたのだ!」


「っ!」


 私は驚愕の事実に言葉を失ったまま、目を見開いた。


 ジェイシス様が話そうとした、私が異界に飛ばされた真相は、王妃による策略だったの……?

 自分の息子を王位に就かせるために……。


 ということは、制約魔術をかけたのもギュリア王妃の指示ということなのかしら。


「あの女は自分が権力を握るためならなんだってする」

「権力を握るため……そんな、それだけのために私の魂を入れ替えたっていうの?」


 権力のために人の魂を入れ替えるなんて、いくらなんでも感覚がおかしすぎる。


「ああ、そうだ。そして、一年前あの女狐は死んだ! おかげで封じていた魔力が弱まり、お前の魂を異界から引き戻せたのだ!」


「なっ! あなたたちのせいだったの!?」


 ということは、私の平穏な人生を狂わせたのも、ジェイシス様のお師匠様が亡くなったのもこの人たちのせいってこと!?


「せいなどとは失礼な。我々のおかげでこの世界に戻れたのだ。せいぜい我らに感謝するが良い」


「感謝なんかするわけないじゃない! いきなりこんな世界に無理やり召喚されて、いい迷惑だわ!」


 男は憤慨する私を睨みつけると、「見目に対して中身はじゃじゃ馬か」と吐き捨てる。


 この男……なんかむちゃくちゃムカつくわ。


 でも、これでようやく全貌が見えてきた……。

 この犯人たちはアテルナ帝国の人間で、グウェン様を王に担ぎ上げようとしているってことね。

 そして、そのために番いである私を利用しようとしている。


 ──まさにジェイシス様が言っていた「権力に群がる馬鹿ども」ってことね。


 ギュリア王妃が息子を王に据えて自分が権力を握るために私の魂を送ったとか言ってるけど……

 結局この人たちも私の魂を呼び戻して、グウェン様を担ぎ上げて自分たちに良いように権力を奪い取ろうとしてるんだから、やってることは全く一緒じゃない!


 そんな人たちに魂ごと人生を振り回されてるなんて、たまったもんじゃないわ!


 大体グウェン様は王位なんて望んでいるのかしら?


 そんな話全然聞いていないのだけど……

 むしろ、母様から聞いた話じゃ兄である国王陛下をとても慕っていると聞いている。


 ──って、今はそんなこと考えてる場合じゃない!


 どうにかして逃げなきゃ!

 魔法で操られていいようにされてしまう!

 

 でも、どうやって逃げれば……。





「さあ、無駄なお喋りはここまでだ。まずは薬を飲んでもらおうか」


 逃げようとした思考を読まれたかと思うほど、「逃がすはずがないだろう?」という目を向けられ、言葉を告げられる。

 それから後ろに控えていた従者たちを呼び寄せた。


 ガタイの良い従者数名に腕や肩を掴まれ、座らされたまま、さらにもう一人の従者から試験管のような細いガラス瓶に入った紫色の液体を突きつけられる。


「さあ、飲め」

「いやよっ!」


 私は一言発した後、固く口を閉ざしたまま俯き、必死に抵抗する。

 けれど、やはり男たちの力は強く、上を向かされ、口を無理やり開かされた。


 薬を流し込まれ、飲み込むまいと抗うものの、今度は無理やり口を閉ざされる。

 そこからさらに鼻を塞がれ、飲まなければ息ができない状態へと追い込まれる。


 あまりの苦しさに抗いきれず、結局飲み込んでしまった……。


 ビリビリと痺れるような強い痛みが喉を走り、その後から気持ちの悪い、まるで何かが焼け焦げるような匂いが鼻腔を襲う。

 

 喉が焼けてる……!?


「その薬はな、魔力を通し易くするものだ。少しビリッとするらしいが、それも魔法をかければすぐに治まる。まあその前に、意識がどこまで持つやら」


 その言葉が合図だったのか、扉の前に控えていた魔導士が近づいてくる。


 そして、煌々と赤く光っている両手のひらを私に向けた。


「っ!? 熱っ!」


 向けられた途端、身体が急に熱くなる。

 その温度は体温をゆうに超え、焼けるような痛みを伴う。


「ゔぁああああああ〜〜〜!!!」 


 焼けた喉が痛いはずなのに、声を抑えずにはいられない。

 あまりの痛さに涙が溢れてくる。

 そしてどんどん痛みが身体中に広がり、声を出すこともできなくなっていく。


 痛い……痛いよ。誰か、助けて……!

 父様……兄様……!


 たすけて……グ、ウェンさ、ま……!


 ──そうして私は、意識の奥深くへと堕ちていった。


お読みいただきありがとうございます。

色々な真相が明かされた上に、キリアが大ピンチです。

このままキリア視点で進めたいのですが……次はグウェン視点になります。

キリアを探しに出たグウェンたちは……。

次回もお楽しみいただけますと幸いです。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


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