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Armor Knight  作者: 夢暮 求
第一章 -Encounter-
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作戦を読み取る

『御免、当たったのが悪いよね』

「良いよ、開幕の一発を浴びたら、僕でも困るから」

 言いつつ機体を前進させ、その間も、マップ画面を見続ける。


 なるほど、ね


 幾らデコイをばら撒かれたって、本体の位置を掴む方法はある。ルーティの場所は分かっているんだし、あとはマップ画面を見て、味方機である薄水色の光点――ルーティに向かって動く赤茶色の光点からキィルクさんがどれかを割り出せば良い。デコイも自立し動き続けるが、意思のある人間の動きとでは歴然とした差が存在する。


 こうして、たった一つ、見方を変えるだけでデコイの攪乱のほとんどは気にならなくなった。

 彼女と直線上、またはその一つ二つ隣の道路に注視すればデコイではないキィルクさんの機体がある場所なんて、すぐに見分けられる。


「と、言うわけで」


 呟きながら下部モニターにタッチして、キィルクさんの機体であろうアイコンを赤茶色から強烈に明るい赤色へと変更させる。これで文字通り、目星を付けた。これ以上、デコイをばら撒かれても、もうこの画面からはキィルクさんの位置はバレバレだ。

 ついで、機体を止めて、その場で肩に掛けていた武装を起こして構えさせる。

「この隣から撃ってみるかな」

 『Armor Knight』におけるエネルギー系の武装とは、電力を用いたものが多い。それがこのゲームの世界観であり、ロボット物でよくあるビームライフルと同系統のものに属する。


 エネルギーランチャーはエネルギーライフルに比べて高威力である代わりに充電率が遅く、一発の隙が大きい。だが、この系統ならば高層ビル街の破壊可能オブジェクトを一撃で粉砕できる。

 電力が圧縮され放たれたビームは高層ビルを貫き、破壊した。その瓦礫を踏み締めながら機体を進ませ、隣の道路までショートカットする。


 右に、自機から離れるように後退する機体を見つける。ルーティの機体は特徴的だから、見ただけで分かる。だからこの機体は、彼女のものではない。エネルギーランチャーのビームは当てることはできなかったが、勘は良かった。あと数秒ほど待っていたなら当たっていたかもだけど、ショートカットすることが第一だったので、そんな幸運には頼らない。


 この感じだとルーティとキィルクさんの合間に入れたはずだ。


『おっかしーなぁ。私を攻めるんだったらもっと強烈に来ない?』

「ヒエさんも来てないの?」

『うん。誘われているような気がする』

 キィルクさんと撃ち合っていたのだとすれば、そのときにルーティが覚えた違和感を僕は尊重する。

「……囮型と狙撃型の戦い方かなぁ」

『囮が釣って、狙撃で倒す?』

「そんなところ。ルーティは居場所が初手で割れているし、注意しながら後退。僕も、キィルクさんの前に出ちゃったから場所は知られたけど、ヒエさんが捉えていない限りは僕の場所なんて大体でしか把握できないだろうから」

 ヒエさんとキィルクさんのどちらかの機体が索敵電波持ちだったなら、初手に実弾系の武装を使わないと思う。非効率的だし、索敵電波を放った方がしばらくこちらの様子を窺うために隠密行動を取ることだってできるんだから。

『りょーかい。ミッションでも対人戦でも、ここは経験者の意見を信じてみる』

「はいはい」


 そんな風に煽ててもらっても気分は良くならない。


 僕の動きを様子見しているのかキィルクさんからの攻撃は来ない。


 だったら、攻めるか。狙撃されるのも承知で、突撃してみよう。ストック制だし、一回落とされてもまだ許容できる範囲だ。


 ソードを抜き放ち、ブーストダッシュを掛けてキィルクさんの機体に突撃させる。僕の機体の動きを読み取り、キィルクさんもダガーナイフを抜いて抗戦の意思を見せる。

 ダガーナイフは威力共に低いが、投擲する上では比較的、軌道が読める武装。ここでそれを抜くということは、まず近接戦闘に持ち込む気が無いと判断できる。


「だから、投げて来るんでしょ?」


 機体を右に逸らすことで、キィルクさんの投げたダガーナイフをかわす。ルーティの言うところの経験者の意見になるけど、ダガーナイフを扱う機体の八割はそれを投擲にも用いる。今のはその経験が活きた場面だ。

 投擲後の硬直を逃さない。ソードを引き寄せ、そして一閃。機体を逸らしたところで、この一撃を完全にはかわせないはずだ。


 キィルクさんの機体、その左腕を切り落とす。損傷率のゲージと耐久力はイコールで結べない。機体耐久力は数字として、パーツや武装には損傷率がゲージとして表される。損傷率のゲージが空っぽになれば、そのパーツは破壊される。


 近接戦闘武装には、その損傷率ゲージを大きく削り取る数値が設定されているため、クリティカル距離さえ把握していれば、ほぼ確実にその部位の損壊を起こさせる。ただし、近距離での戦闘は、近接武器の打ち合いに発展し、場合によっては返り討ちに遭ってしまうこともある。近接戦闘ばかりに注視して、敵の前線奥深くへと誘い込まれることだってある。

 銃器で撃ち合うよりも、刹那の操縦に求められるものが多すぎることが原因であるが、この、いわゆる「やるかやられるか」の感覚がたまらなく好きという人も少なくない。


 ともかくも、これでこちらに少し戦況は傾いたはずだ。


『スズ! レールガン!』


 次はどうしようかと考えている最中に、ルーティが僕に注意を呼び掛けた。

 超電磁砲――このゲームではレールガンだが、遠距離武装でオブジェクト破壊効果及び貫通効果がある。それだけでなく狙撃においての照準ブレや弾道逸れがほとんどない。現在、遠距離武装で最強とまで言われるチート並みの性能を持つ。次のバージョンアップでなにかしらの弱体化が計られることを祈るしかないとまで言われるほど嫌われている。


 というか、暗黙の了解で使っちゃダメみたいな雰囲気がある武装なのだけど、その辺りって知らない人は知らないから、強いと思えば使ってしまうのは仕方が無い。他人の武装にいちゃもんを付けるのは、お門違いというものだ。


 バーニアで機体の体勢を整えつつ、即座にブーストを掛ける。充電は試合開始直後から始まっている上に、デコイのせいでキィルクさんの居場所は分かるけど、どこにレールガン持ちのヒエさんが構えているかは分からない。狙撃重視でプレイしている場合、変に動いたって当てられるときは当てられてしまう。

 二人の通信間で、恐らくはルーティよりも僕を先に狙うべきだという判断が成されたんだろう。強い方を先に沈める。悪くない戦法だ。


「運任せは好きじゃないんだけど」

 コンソールを手早く開いき、ある操作を行う。

「どっちにしたって、Armorの耐久力じゃ一発でお陀仏だろうし、やってみようか」


 その場で防御力を有する装甲の全てをパージさせる。直後、ほとんど視認できないほどの速度でレールガンから放たれた強烈な光の束が襲来する。


 左右、後方でもなく真正面だった。


 弾け飛んだ装甲が前方から襲来する稲妻を帯びたエネルギーの塊を僕の機体の代わりに受け止めて、消し炭になった。

 装甲のパージには一瞬の無敵時間が存在する。それはバグでもなんでもなく、システムの裏側を突く行為でもない。剥離とは機体内部からのガス噴射で装甲を弾け飛ばす手段だ。このガス噴射で弾け飛んだ装甲が直後に来る攻撃を防ぐ。それがパージのメリットとなる。

 デメリットは装甲を外したことで損傷率ゲージはほぼ空っぽに、そして防御力も笑えないレベルに低下すること。ダガーナイフでも一撃を受けたら、撃墜されるギリギリまで耐久力が削られるだけでなく、受けたパーツが吹き飛びかねないという紙装甲と化す。

 今回、全ての装甲をパージせざるを得なかったのは、レールガンが放つ一撃がどこから来るか分からなかったからだ。全方位に対し、この無敵時間を利用するにはこうするしかなかった。


 レールガンは一発撃墜の恐怖すらある、危険極まりない武装だ。ここで一発耐えることで、相手に動揺を与えられる。一撃必殺の攻撃を耐え切られてしまえば、誰だって動じるものだ。なにせ、レールガンは充電時間が相当長いから、一発撃てば20分という制限時間では二発目はタイムアップギリギリになる。撃墜されれば全てがクリアされるから、手早く二発目を撃ちたいなら、意識的に攻撃を受けて落ちなきゃならない。


 そんなのはチームプレイとは程遠い行為だ。遠距離武装にレールガンを選んだ時点で、この囮型と遠距離型の作戦は一回しか使えない必勝方法。しかし、“必勝”ではなくなった今、穴だらけの作戦へと変わり果てた。


 あとは、攻め立てるだけだ。

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