元勇者、王妃と面談する
あれは一年前、俺が勇者として旅立ち、使命感に溢れていて、夢も希望も溢れていた頃。
当然、裏で起きていた密かな計画なんて知らなかった。
ある時、俺は魔物の集団に襲われていた。
まだ旅立ったばっかだし、レベルも上がっていなかったから苦戦を強いられていた。
そんな時、突然現れた女騎士がいた。
いきなり現れた女騎士は、あっという間に魔物達を倒していった。
俺は礼を言うと『この地域に用事があって来たついでよ。』とニッコリ笑ってくれた。
それで暫くは一緒に行動した。
その間、俺の戦いについて意見を言ってくれて、たまに稽古をつけてくれたりした。
そういえば確か『クラリス』て言ってたよなぁ……。
まさか、王妃様だとは思わないだろう。
どう見たって人妻で大きな子供がいるなんて思えないぐらいの若さで、剣の腕も立っていたからなぁ。
そんな事を考えながら王妃様を見ていた。
「これから、新しく領主となった者、家を継いだ者について面談を行います。今から名前を呼ばれた者は此処に残る様に。」
当然だが俺も呼ばれた。
貴族や領主達は執務室に呼ばれ、面談が行われた。
面談を終えた者はホッとした様な表情や、顔面が蒼くなった者がいた。
そして、俺の番がやって来た。
「ハノイ領、領主兼村長のノエルです。」
「そちらに座りなさい。」
俺は指示されて椅子に座る。
「領主になってまだ日が浅いみたいだけど、頑張っているみたいね。」
「えぇ、最近はようやく慣れてきました。」
「将来的にはどのように領地を作っていくつもりですか?」
「具体的なプランはまだ見えてないんですが……、俺は種族関係なくみんなが笑顔で暮らせるような村を作りたい、と思っています。」
「そうですか……、あの時と変わってないわね。」
「えっと、やっぱりあの時の……。」
「えぇ、あの時は素性をばらすわけには行かなかったのよ。貴方、あの時も同じ事言ってたわね。『みんなが笑顔で暮らせる世界になる為に戦っている。』て。」
そういえばそうだったなぁ。
「それに『戦いが終わったらのんびり暮らしたい。』とも言ってたわね。願いはかなっているじゃない。」
「まぁ、のんびりとは言えない日々ですけどね。」
俺は苦笑いして答える。
「私はあの時、丁度実家に帰る途中だったのよ。その時にたまたま遭遇したのよね。」
「もしかして、俺が勇者だって言う事は……。」
「勿論、知っていたわ。ただ、戦い方がまだ隙だらけで見てられなかったから、加勢に出たのよ。」
そうだったのか……。




