13 【巨人の眠る島】 ② やらかすのはわたしではないと言いたい
わたしの考案した戦闘艦を作るためヒュエギアに資材を頼んだのに、やって来たのは怒りのドライアドのドローラ様だった。
「カルミア樣、大量の木材で何をするおつもりだったのですか」
ドローラがこういう物言いの時は、かなりキレている。どうして木材のことがわかったのかしら。
「キミの美声君の回線が、全員に向けたままなのだよ」
誰も何も言わなかったけれど、わたしの美声君は、わたしが作ったのに言う事を聞かないのよ。何でよ。
「それは元になってる招霊君とやらのお節介なのだろう」
ぐぅ、先輩の言う通りなのよ。たとえわたしが直しても、いつの間にか全員へ向けての伝声仕様に変えられてしまう。わたしって美声君を付けている限り、秘密を保てない身体にされてしまったのね。
今回もヒュエギアにだけに伝えるように、ちゃんと調整したのよ。みんなの美声君はちゃんと動くのに、どうしてわたしのだけ余計な真似をするのよ、まったく。
どうやら仲間のみんながわたしの事を心配して、その気持ちを受け取った招霊君が気を利かせるようだった。
わたしが作ったのにわたしが扱えないとか、失敗作に見えるから勝手に動かすのは止めてほしいわ。
商売にならなくなるじゃない。アミュラさんから貴女の件は例外、と短い伝言が届いた。生粋の商人が認めてくれているのならいいわ。
「カルミア樣、話しを逸らしても駄目ですよ」
さすがに誤魔化せないわね。わたしと先輩ごと、ドローラは眷属の木の枝で縛り付けているので動けない。
「戦闘艦がいるのよ。アミュラさんが持つような大きいやつ」
理想は飛べるやつね。魔力的にも反重力素材的にも無理だけどね。フレミールをまた絞り尽くして魔晶石を得れば動力を補っていけるけれど、ずっと絞り続けるのは無理だわ。
「オマエ、懲りないのか」
動けないわたしにフレミールが頭突きをした。動けないのに卑怯よ。真竜の誇りはないの、と言ったら泣いてしまってヘレナに叱られた。竜のくせに精神耐性ゼロなの?
「キミは錬生術師なのだろう? 錬生術師らしく、海の生物の力をかりたまえよ」
悪くないのに一緒に縛られてる先輩が、ナイスなアイデアを閃く。ついでに、聖霊人形で街の統率者を用意するとしましょうか。
そうしてネイトとリヴァラハという名前の聖霊人形が誕生した。
「ネイトと言います。皆様、よろしくお願いしますね」
ネイトは皇女樣の成分残り全てとエルミィの成分を足したので、射撃が得意な統率者になってくれると期待している。海戦も視野に入れると、遠距離攻撃の得意なものは大きいわよね。
「ネイトはいいとして、海の生物を造ったはずなのに、なんでもう一人誕生したのよ」
わたしのイメージが悪かったせいなのか、海人族の何かがいた。
「間違ってないよ。ホラ」
人族に手足が人魚族のように鱗のある少女が変化した。
「海竜族なのね」
海に来たから、海人族の招霊君が集まったのね。フレミールが威嚇しているけど、貴女の竜の成分が入ってるんだから妹や娘みたいなものなのよ。
「海人族なら私が呼べますよ」
ネイトがそう言うと召喚魔法で男女四体ずつの海人族を呼んでみせた。おぉ、海の戦士って感じでいいわね。
「むっ、負けないよ」
リヴァラハが何故か対抗して二体の小海竜を呼んだ。人化出来ないけど、一応、懐いているので害はなさそうだ。
「ねぇ貴女の眷属、魔力はどこから出てるの」
ネイトの召喚は、本人の召喚魔法で魔力を消費して呼んだだけだ。つまりよ、普通に住人と変わらない。でもこの娘は違うよね。
「あ、あちしの魔力なんすよ」
言わなくてもわかるわよ。魔力消耗して、なくなってるし。
「まったく、貴女のは召喚じゃなくて、分体じゃないのよ。それも未熟な」
アマテルといい、ナンナルといいこのところ、聖霊人形のポンコツぶりが続いてるわね。ネイトはまともなのが救いだけど、リヴァラハは、能力云々よりも一から教育の必要があるわ。
「おらが面倒見るだよ」
ノヴェルが預かることになった。いや無理よね。分体は仕方ないからプロウトへ行き、候爵に保護を頼むことにした。ここだと襲撃があった時に危険だからね。
「魔力のつながりも断ったから、あの子たちは自立して貴女の姉妹となるわ」
リヴァラハが嬉しそうにノヴェルにスリスリしていた。ノヴェル自身、ノエムが妹としているけれど、ずっと会えていないから助けたかったのね。申し訳なかったわ。
ともかく海戦に強い人材は手に入ったので、戦闘艦をなんとかしないと。あれ、戦闘艦のかわりに錬生したんじゃなかったっけ?




