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第13話:弟子はいかなる事実を知ったのか

 翌朝。

 田井中はコッソリートの着信音で目が覚めた。


 まだ朝日が(のぼ)っていない、暗い時間帯だったため眠くて不快に感じたが、もしかすると重要な情報が発覚した可能性があるため、田井中は目を(こす)ってから指紋と網膜の認証をし、コッソリートの通話ボタンを押した。


「もしもし?」


『師匠ッ。凄い事が分かったっスッ』


 耳に当てると、すぐに椎名の声が聞こえてきた。

 彼は寝起きの田井中を気遣っているのか小声であるが……それでも興奮した様子が伝わってくる声色だった。


()()()()()()()()()()()()ちゃんと届いたようで何よりだ。それで……いったい何が分かったって?」


 昨日の夕食前に、田井中は椎名へと、最終的には全局員が見る事になる現状報告の文章をメールで送っていた。

 それもただのメールではない。コッソリートを開発したIGA参課の別の忍具であるボタン型カメラ『ウッツルート』で撮影した映像を添付したメールだ。


 撮影、と言っても戸泉のような事をしたワケではない。

 それ以前に、そのような映像を撮ろうとすれば、カメラのAIが自動で編集してカットするのだが……とにかく田井中はそれを(もち)いて、聞き込みの際にコッソリと相手の顔を重点的に撮影するよう設定した上で撮影していた。


 相手の宇宙怪盗は変装の名人であるから、聞き込みをした相手の筋肉の動きなどを検証するため……だけでなく、一応被写体に前科者がいないかを調べるためだ。

 無論、撮影した映像はプライバシー保護のため、ボタンからは一日()てば完璧に消えるよう、参課によってプログラムされており、IGAでも、前科者がいる場合は、その者の顔が写真として保管されるが、それ以外の被写体の映像は処分されるため問題ない。


『はいっ。撮影した映像の中にTVに出た有名人がいたっスッ』


 田井中は顔を(こわ)()らせた。

 事件の予感がしたのではない。


 弟子のミーハーっぷりに怒りを覚えたのだ。


「オイ……仕事しろよ?」

『…………え、あ、いやそのですねっ! 師匠、それがこれまた珍しい名前の有名人でしてですねッ』


 師の怒りを声色から察したのだろう。

 椎名は慌てて言い訳する……が言い訳にはなっていなかった。


『俺と同じで現代風で――』


「…………は? ちょっと待て。もう一度いいか?」

 しかし、聞いている途中で何かが気になったのか、田井中は、顔色はそのままで真剣味を()びた声を出しつつ、もう一度弟子に訊ねた。


『……へ? いや、ですから――』


 どういう意図での質問なのか分からない椎名。

 だが師匠からの質問であるため、真剣に、彼はもう一度説明した。


「…………そうか。ご苦労だったな椎名……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ミーハーな弟子の説明も無駄ではなかった。

 田井中は聞き込みで聞いた全てを思い返し……椎名が入手した情報を当て()め、ついに宇宙怪盗へと一歩近づいた。


『ええっ? 本当っスかッ。あ、じゃあ他の情報は大丈夫っスかね? 他にも凄い有名人の情報があったりするんスけど』


「………………まぁ、聞こうか」


 そして、問題解決に一歩近づければ少しは心に余裕が出てくるもの。

 田井中は情報提供をしてくれた椎名への感謝も込めて、全ての話を聞く事にしたのだが……その宇宙怪盗とは関係がなさそうな情報の中にも、重要な部分がある事を、この時の田井中はまだ知らなかった。


     ※


「ウェ~~イ……昨日は遊んだぜぇ」

「兄ちゃん、大丈夫? ていうか、ボクまだ眠いよぉ」


 田井中が椎名の話を聞いている時の事。

 まだ太陽が(のぼ)らない薄暗い外を、学生グループの、あのサト氏とその弟が歩いていた。二人の目の下には、クマができていた。どうやら夜遅くまで()()()していたようだ。


「バッカやろう。ここの朝日はなぁ、日本()景にも選ばれた事がある、綺麗な朝日なんだぞぉ? カスミン達は起きなかったけどよぉ、タケ、せめてお前だけは見ろよ? 特に橋から見る朝日はよ!!」

「兄ちゃん、橋ってこっちだっけ?」


 そしてどうやら寝不足のせいか。

 彼らは見当違いの方向に歩いているようだった。


「あれぇ? くっそ。酒もちょっと飲んだせいかなぁ。どうも視界がグニャグニャして――」


 そして、二人がほぼ同時に目を(こす)り……もう一度前を見た、その時だった。


 目の前にあった、真下家の別荘。

 その玄関前で……ドアを()けっぱなしにし、眼鏡を地面に落とした状態で、うつ伏せで倒れている真下護が二人の目に映った。


「え、ちょ、オッサン大丈夫か?」

「兄ちゃん、オッサンはさすがに……ぇ?」


 まさか護も酔っぱらって倒れたのではないかと思い、二人はふらつきながらも、なんとか護に近づき仰向けにした……その時、二人は目を疑った。






 ()()()()()()()()()()()






 護と同じ顔をしたマスクが半分めくれ上がったにも拘わらず、息苦しさを覚えているのか。(いま)だにヒュー、ヒュー、と数秒おきの感覚で、かすかに呼吸しつつなんとか生き(なが)らえている状態の初老の男こと、伝説の宇宙怪盗サウザンディアンフェイサーサードインパクリュパーンカーメラーダディエンドスだった。

 ふぅ。ようやく事件書けた(ぇ

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