86話 チーム誕生?
エアリスは、翌日から姿を見せなくなった。
頑張り屋っぽい印象を受けていたので、タウロも残念だったが、元の場所に戻ったのかもしれない。
シンとルメヤも意外だった様で、
「根性は有りそうだったけどね。」
「口は悪いけど、悪い奴ではなかったな。」
と、評価していた。
またいつもの、生活に戻った3人だったが、それから5日後の事。
3人は朝からまた、クエストをチェックしていた。
「タウロ君、近くの森の村から、キノコお化け退治のクエストが来てるよ。」
シンが張り出されたクエストを指さして言った。
「キノコお化けかぁ…、睡眠の状態異常を使ってくるけど、睡眠耐性上昇ポーションで前もって対策すれば大丈夫ですね。」
一瞬考え込んでからタウロが答えていると、
「私もついて行って良いわよね?」
と背後から聞いた事がある声がした。
3人が振り向くとそこにはエアリスが立っていた。
「どうしたの?ダレーダーに戻ったと思ってたよ。」
タウロが、驚きながらも疑問を口にした。
「戻ったわよ。あなた達のチームに完全移籍する為に、今のチームを抜ける手続きをする為にね。」
「「「え?」」」
エリアスの不穏な言葉に3人は声を上げた。
「うちのチームも何も、僕達チームじゃないよ?」
タウロが呆れて答えた。
「え?」
今度はエアリスが驚く番だった。
「俺達はタウロ君に学んでる最中だけど、チームを組んでるわけじゃないぞ?」
「そうそう。自分達はタウロ君を教師役に冒険者のノウハウを学んでるんだ。」
「じゃあ、私はどうなるのよ!あなた達のチームに入る為に前のチームメンバーを説得してきたのに!」
エアリスは慌てた、自分の早とちりにだ。
「最初に相談してくれたら良かったのに。」
タウロがド正論を言った。
「!」
エアリスは何も言えなくなった。
泣きそうな顔になっている。
「タウロ君、この子が悪いんだけど、自分達を評価してくれての事だし、もう少しオブラートにね?」
シンがフォローをする様で、トドメを刺した。
「…私が悪いわよ、悪かったですよ!でも普通、チームだと思うじゃない、あれだけの連携を見せられたら…!」
ぼろぼろと涙を流すエアリス。
タウロはここで初めて慌てた。
泣かせるつもりはなかったのでどう泣き止ませればいいのかと戸惑った。
チームを作るにもシンとルメヤの承諾もいる。
まして、子供が二人もいるチームはさすがにシンとルメヤ二人の今後を考えると言い出しづらい。
シンとルメヤの二人は比較的に私生活も一緒に行動していて、今後、チームを組んでもおかしくない。
そうすれば、大きい街に出る事もあるだろう。
自分はその点、大きい街に今は興味が無い。
エアリスも見る限り、大きな成功を望んでいる野心的なタイプだろう。
エアリスとシン、ルメヤ、この3人なら合いそうだが、自分は合うのだろうか?
…そうか、問題は僕なんだ。
ここまで考えて、チーム作りの問題点がはっきりした。
「…じゃあ、この村限定でチームを組むかい?」
タウロは3人に提案した。
「「「限定?」」」
「そう、この村でやっていく間のチームだよ。先の事はお互い解からないし、その時はその時に話し合えばいいんじゃないかな?」
タウロの提案にエアリスが、泣き止んだ。
「タウロ君が良いなら、自分は良いよ。」
シンが快く頷く。
「俺も、文句ないね。問題が起きたらその時だろ。」
と、ルメヤ。
「…じゃあ、私も入っていいのね?」
鼻を啜りながらエアリスが聞き返す。
「君の為に作るんだから、もちろんだよ。」
タウロの答えに、エアリスの表情がぱっと明るくなった。
「…じゃあ、そこの4人。早速手続きする?」
受付にいたクロエが、タウロ達に声をかける。
ギルドの狭いロビーでのやり取りだ、他の冒険者達にも話は聞こえている。
「青春してるな。わははは!」
「仲違いで解散するに、銀貨5枚。」
「この村限定って言ってるんだから、解散はするだろ。賭けにならねぇよ。」
タウロ達は弄られ、恥ずかしさに赤面した。
「私は解散する気ないわよ!」
エアリスがさっきまで泣いていたとは思えない元気良さで言い返す。
「エアリス、ただの冗談だから止めな。」
タウロが止める。
あ、これからずっとこのやり取りやりそう…。
と、タウロは苦労する未来が視えるようであった。




