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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第591話 目的地到着

 飛び級でB+ランクへの昇格を果たした『黒金の翼』一行は、スウェンの街の英雄として騒がれる中、朝一番で街を後にした。


 目的地はアンタス山脈地帯奥地である。


 途中までは地下古代遺跡までのルートを辿る事になるので、途中、王国軍と遭遇した。


 その軍の人間達はタウロ達『黒金の翼』の事をよく知っている。


 いや、姿形を一兵卒まで伝達され、把握されていると言うべきか?


 将軍の謹慎の原因にもなったし、名誉子爵として王家の紋章まで所持しており、今回の帝国の計画を台無しにするという大活躍をした冒険者チームだったから、軍関係者でもないのに、出会う兵士達に敬礼された。


「軍の人に敬礼されると緊張するね」


 タウロ達がアンタス山脈麓の道を上がっている時であったが、兵士達は、タウロ達の後姿にまで敬礼を忘れない。


「それくらい、私達の行為がとんでもない事だったって事よね」


 エアリスも兵士達の敬礼を脇目に苦笑する。


 兵士の中には美人なエアリスの視線を感じて、「視線が合った!」とわいわい騒いでいるのが微笑ましい。


「あのアンタス山脈地帯奥地の国境線にいつまで軍を置いておくつもりなのかねぇ? あそこは補給がそもそも大変だし、あまり勧められない土地だと思うんだがな」


 元傭兵らしくアンクはもっともな感想を漏らす。


「当分はそのままかもね。帝国は今回、アンタス山脈地帯から魔物軍団を大量に送り込んで北部地帯に大混乱を生み出し、それに乗じて北部地方に侵攻するのが目的だった奇策だろうから、二度はやらないとは思うけど、警戒はしないといけないし」


 タウロが帝国の謀略の一端を指摘しつつ、軍の動きを予想した。


「今、軍が駐留するのは魔物の残党を討伐する為でしょう? さすがに将軍が王都に召喚中とはいえそれくらいは部下達で判断できるわよ」


 エアリスが当然と思える意見を言う。


「残党狩りは大変だろうな。一応、竜人族の村には私から報告しているから、近いうちに残党狩りの為に仲間が送り込まれてくると思うぞ」


 ラグーネが頼もしい情報を明かしてくれた。


「それは頼もしいですね!」


 シオンもラグーネの言葉に賛同するのであった。



 それから数日後。


 セトの道案内の下、タウロ一行はアンタス山脈地帯の険しい道なき道を進み続け、北の帝国との国境線も越えていた。


「こんなところを五千もの軍隊で進んできたなんて、今回の作戦は相当本気だったのかもしれないね」


 タウロはセトの後ろに付いて進みながら、感心する。


「ホントだぜ。こんなに険しい道、魔物の軍団でないと進むの厳しいよな」


 アンクが少し呼吸を整えながらぼやく。


「でも、この辺りまで来ると、多くの人? が通ったと思える道がいくつも出来ているわ」


 エアリスがセトの進む険しい獣道が多くの足跡によって踏み固められている事に着目した。


「そうだな。この辺りまで来ると、足跡を隠すつもりもなくなっている。目的地は近いのではないか?」


 ラグーネが言葉で答えられないセトに聞く。


 するとセトはそんなラグーネに頷いた。


「やはりか!」


 ラグーネがセトの反応に自分の予想が的中したと満足していると、セトが指さす。


 その先をよく見ると、茶色く目立ちにくい建物の屋根が微かに見えてきた。


「……あれか」


 タウロは目的に到着した事を理解すると、セトに思考共有でアダムとイヴによる見張りの有無の確認をお願いする。


 セトは頷くとアダムとイヴを操作して周囲に視界を巡らし、タウロに視界共有でその場所を伝達した。


「……意外に見張りが少ないね。ここまで来る時にも魔物軍団と遭遇する事もほとんどなかったし、あの大きな建物にみんな引き込んでいるのかな?」


 タウロの指摘はセトに伝わり、セトはアダムを建物が上から見降ろせるようにしようと険峻な岩肌部分に取り付かせた。


 そして、アダムは険しい岩肌を登る適切なルートをイヴの視界を通して把握し、セトの操作により、人でも難しい斜面を登っていくのであった。



 岩肌を登ったアダムの視界を通して見降ろすと、その建物の全体像はかなりの大きさであった。


 道も一本道が整備されており、麓まで続いているのがわかる。


 建物は長い防壁に囲まれ、侵入を許さないが魔物が逃げ出す事も出来ない作りだ。


 出入り口は二か所あり、麓に続く搬入口と思われる方と、タウロ達がいる側である。


「……これなら見張りが少なくても納得の堅い守りだね。いざという時は砦としても利用できそうだよ」


 タウロはアダムの視界を通して建物の全容を確認すると唸る。


 建物の敷地内では人が建物の間を行き来しており、忙しそうだ。


 タウロの想像通りなら、今回の肝であった魔物軍団侵攻による計画が失敗して、損失が大きかったから、その穴埋めに奔走しているのかもしれない。


 国境線の帝国軍はいつでも侵攻できる状態で待機していたはずで、この施設の責任者はかなりの叱責を受けている可能性は高いだろう。


「──で、どうするリーダー? うちの戦力はリーダーの岩人形ゴーレムロックシリーズだが、力攻めするのか?」


 アンクがこの攻めるには手強そうな施設を前に作戦を聞く。


「最初はそのつもりだったんだけどね……。ちょっと予定変更しようかな……」


「「「予定変更?」」」


 エアリス達は口を揃えて、タウロの心変わりに聞き返す。


「……うん。こちらにしようとした事をあちらにしてもいいかなと」


 タウロの言葉に全員が一瞬、言葉に詰まる。


「それはリーダー……。人が悪いな……」


 アンクがタウロに呆れてそう答える。


「……因果応報と言えばそうだけど……」


 エアリスもタウロの発想に呆れて応じた。


「……それで、どうするのだ?」


 ラグーネは面白そうだと思ったのかやる気十分である。


「タウロ様の考えに従います!」


 シオンはもとより、タウロ信者だから否定はない。


「それじゃあ、夜になったら、敷地内に『瞬間移動』で潜入しようか。アダムとの視界共有のお陰で上から内部は丸見えでそれが可能になったからね」


 アダムが険峻な岩肌を登って敷地内を視界共有で確認できたお陰で、高い防壁に囲まれた敷地内部も『瞬間移動』での潜入が可能になった事をタウロは喜ぶのであった。

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