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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第587話 致命的な弱点

 タウロ一行が、スウェンの街郊外で日中を過ごしている頃。


 その街の領主であるスウェン伯爵の元には翌日戻る予定である調査団からいち早く、報告の使者が訪れていた。


「……大袈裟だと思っていた軍の伝令からの報告は、本当だったという事か……」


 スウェン伯爵は深刻な表情で、使者からもたらされた何枚もの報告書に目を通していく。


「……この『黒金の翼』とやらを率いるジーロシュガー名誉子爵冒険者とは? 報告書とは思えないほどの誇大評価した内容になっているが?」


 スウェン伯爵が報告書の内容を疑うのも仕方がないところだろう。


 なにしろ人形使いとして、わずか二十体弱の人形を操って謎の軍団五千を相手に暴れまわったというのだから疑われるのも当然だ。


 調査団はその働きによって九死に一生を得たと締め括っているから、そうなのだろうが、魔物中心の構成である五千相手にその三分の一近くを討ち取ったと言われても信じられない。


 それも報告書の主が、今回、計算と出費について聡いネガメからだから驚きであった。


 ネガメは自分の責任について計算高く、問題が起きないように策を講じる人物だから、今回の出費がどのくらいになるかわからない調査団の責任者に当てたのだが、狭量な性格だから他人を褒めるような事が無いのは知っている。


 そのネガメが誰かを評価しているだけでも疑わずにはいられなかったのに、この架空の物語としか思えない内容をそのネガメ自身がしてきているのだから、何が起きているのかと困惑するしかない。


 使者にこの内容について確認を取ると、


「いえ、概ねその内容であっているかと思います。どちらかというと私などはその人形使い殿が半分近い敵を打ち滅ぼしたと思っていますので、その報告内容だとまだ控えめではないかと……」


 使者は領兵の一人であり、前線で戦っていたはずだから、奥に引っ込んで怯えていたネガメより正しい認識をしていただろう。


 領兵達の証言を聞いてネガメは報告書を現場で記したのだが、領兵の指摘通り控えめに書いて送ったものであった。


「……これが控えめだと?……どちらにせよ、調査団の被害を最小限にしてくれたというそのジーロシュガー名誉子爵とは会ってみないといかんな。調査団は明日のいつ頃戻って来れそうだ? その時、ジーロシュガー名誉子爵と会談できるように予定を入れよ」


「あ、領主様。ジーロシュガー名誉子爵殿はすでにこちらに帰って来ているようです。冒険者ギルドでそう言われました」


「そうなのか!? 早速、今晩会えるように使者を立てよ。どれほどの人物か見てみたい!」


 スウェン伯爵は謎の名誉子爵冒険者、タウロに興味を持つのであった。



 その時間。


 タウロは郊外で新たに帝国の将軍バルバトスから奪取して覚えた聖騎士専用剣技『聖光波動剣』の実験をしようとしていた。


「なにー!? 聖騎士専用の剣技を覚えたのか、リーダー!?」


 剣技にはうるさいアンクが驚いてタウロに聞く。


「うん。バルバトス将軍を倒した時に、『無作為ランダム強奪(小)』が発動してね。とりあえず、岩人形ゴーレム『ロック』シリーズを一撃で倒す威力みたいだから実験して確認はしておかないとなぁって」


「剣に関しては俺の範疇だったのに、リーダーに剣でも越えられたら俺の立場無いぞ?」


 アンクが悔しそうに応じる。


「はははっ。アンクはチーム一の火力担当だから大丈夫だって。セトも衝撃波は連発出来ないし、アンクが一番だよ」


 タウロは悔しがるアンク褒める。


 そして、実験をするべく小剣『タウロ・改』を取り出し、魔力を込めると光の剣が具現化される。


「この状態で技を試してみるね」


 タウロはそう言うと、大木を前にして小剣を構えた。


 そして、『聖光波動剣』という言葉と共に、タウロの体内から光が発せられると、その光が小剣に集約され、それが大木に向けて放たれた。


 するとタウロが一瞬その技を発した反動で思わず踏ん張る程の威力の光の波動が、大木に直撃する。


 大木はその技に根元を大きく抉られてバランスを失うと、めきめきという音と共に倒れるのであった。


「……やべぇな、この威力……」


 と唖然とするアンク。


「タウロがまたとてつもない能力を得ちゃったわ」


 と驚くエアリス。


「……この技、防げるだろうか?」


 ラグーネは自分の能力で防げるのか興味津々ようだ。


「さすがです、タウロ様!」


 シオンは無邪気に驚くと人形のセトの手を取ってぴょんぴょんとジャンプする。


「……これは──」


 タウロはその威力に眉をしかめる。


 そして、続けた。


「──使えない!」


 タウロはそう断言する。


「「「なんで!?」」」


 一同はタウロの言葉に疑問を投げかけた。


 当然だ。ロックシリーズを一体倒した程の威力であるから、ここぞという時に必殺技として使えそうなものである。


「……魔力の消耗もだけど、光(聖)魔法が一切使えなくなってる。これなら、アルテミスの弓で『極光の矢』魔力MAXの方が使えるよ」


 タウロはそう言うと、魔力を込めても小剣『タウロ・改』の光の剣が出せなくっている事に眉をしかめた。


 小剣をマジック収納に入れると今度はアルテミスの弓を取り出し、魔力を込めるが同じく反応がない。


「……やっぱりだ。この技、一度使用すると一切の光系魔法が使用できなくなるよ。この使用不可がどのくらい続くのかわからないけど、バルバトス将軍にとって禁じ手的な技だったのかも。つまり、僕が戦った時は、その切り札をロックシリーズに使用したせいで『聖騎士』としての実力はあまり発揮できていなかったって事だね……。あの時対戦した僕は運が良かったみたい」


 タウロは光魔法が使えない状態に苦笑して首を振るのであった。

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