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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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58話 希少種

ボブの鼻と勘を信じるならその祠には何かあるはずだ。

話を聞いていくとその予想も段々確信に変わってきた。


「ここの村出身の冒険者に以前お世話になってた事があって、この村がいかに人に優しいか聞いてたんだ。だからそれを思い出して俺はこの村に来たんだが、聞くと見るとでは全然違った、というか違いすぎた。お世話になった冒険者が嘘をついてるとは思えないから、何かがこの村に起きてるのでは?と思ってたんだ。」


なるほど、だからこの村を去らず、冒険者としてクエストをこなし続けていたのかとタウロは思った。

自分は正直、この村の人の冷たさに支払った宿泊代10日分を過ぎたらすぐに立ち去るつもりでいた。


多分、他所から来た人達も今の状況ではすぐに去っていくだろう。

このままではこの村は確実に衰退していく。


ボブはその冒険者を信じてこの村を救おうと原因を探していた。

それに比べてすぐ見限って去ろうとした自分が恥ずかしかった。


ここはボブを信じて村を助けようと思うタウロだった。




翌日にはボブはまた、祠周辺の魔物退治のクエストを受けると、朝から出かけて行った。

タウロはFランクなので同じクエストは受けられないが薬草採取クエストで森に入るのでそれを口実に後を追いかけた。



初めての森の奥、薬草も沢山生えている、それを回収しながら、『気配察知』と『気配遮断』をフル活用し、魔物との遭遇は極力避けながら進む。


ボブの気配を感じる。

魔物と遭遇して戦っている、相手はシルエットからコボルトのようだ。

気配を感じる限りまだまだ余裕があるようなので、放置していて大丈夫だろう。


それより自分はボブが昨日言っていた祠を確認しておきたかった。


ずっと使われる事がなかったのだろう荒れ果てた道が続いている、草が生い茂り道は道でもけもの道の様な有様だ。

そんな道をどんどん森の奥へ進む。

奥は開けた場所がある様だ。

ある様だというのは、タウロはその手前で止まったからである。

何故なら気配察知にこの先に魔物が複数確認できたからだ。

タウロはそっと茂みをかき分け開けた場所を覗いてみた。


「あれは初めて見るけど…、ゴブリンソーサラーかな?」


杖を持ちボロボロなフード付きローブに身を包んだゴブリンが10体くらいのゴブリンを従えていた。

昨日のボブを襲撃したゴブリンは毒を塗ったナイフを使用していたが、このゴブリンソーサラーの入れ知恵なのかもしれない。

ゴブリンソーサラーはゴブリンの中では希少種で、頭が良く魔法を使うという、警戒しないといけない厄介な相手だ。


タウロが対処を考えているとゴブリン達はソーサラーに率いられて広場の奥にある祠に入って行った。


あそこがボブさんが言ってた祠か、確かにあそこはヤバいかもしれない。


タウロはひとりつぶやいた。

タウロには初歩中の初歩だが『精霊魔法』が使える。

それに伴って精霊が視えるようになっていた。

タウロの目に映る祠は闇の精霊が濃く集まっていて、何かが祠に起きている事が容易に想像できる状況だった。


「とにかく今は中に入ったゴブリン達が外に出るのを待つか…、でも、ボブさんも来そうだし…って、もう来た?」


『気配察知』にボブらしき人物を感じ取った、タウロとは反対側の茂みからボブが広場に出てきた。


「あ、ボブさん!」


声をかけるかどうかのところで祠からゴブリンが出てきた、ボブを発見してすぐ大騒ぎになった。


「ゴブリンども、また、性懲りも無く祠に来やがって!」


ボブはすぐに剣を抜いて戦闘態勢に入る。


だが、祠から次々とゴブリンが飛び出してくる。

その数、10体。

最後にゴブリンソーサラーまで出てきたのだから、ボブもこれは分が悪いと思った様で


「…やべぇー。これはソロ案件じゃないぞ!」


それを見てタウロは腹を決めた、助ける。

まずはゴブリンソーサラーを倒すのが先決だ。

タウロはすぐさま、茂みから弓を引き絞りソーサラーめがけて矢を放った。


真っ直ぐ矢は目標に吸い込まれていく、が次の瞬間、


カキン


横から突き出された剣に矢は弾かれた。


祠から新たに現れたのは鉄の剣と鎧、小さい盾に身を包んだこれも希少種のゴブリンナイトだった。


「ボブさん一旦逃げて下さい!」


タウロは勝機が少ないと判断し茂みから顔を出すとボブに撤退を促した。


「お、おう!」


その言葉にボブは慌てて逃げだした。


タウロは『気配遮断』を解除すると、ボブに追いすがるゴブリンを弓矢と精霊を用いた土魔法『石礫』でけん制して標的を自分に変更させた。


それを確認するとまた『気配遮断』を使用してタウロは逃げ遂せるのだった。

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