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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第569話 同じ道すがら

 タウロ一行はとある村が魔物に襲われて困っているという、一聞するとよくあるクエストを受注し、翌朝には早速、拠点としているスウェンの街を出立する事にした。


 すると偶然だが、古代遺跡調査チーム数百人の一団と途中まで道程が同じであった。


 確かに古代遺跡はアンタス山脈地帯奥地の地下にある。


 そして、タウロ達の受注したクエストはそのアンタス山脈麓の村であったから道が一緒になるのも仕方がないところだ。


「あらら……。これは目的地の村までの一週間、行く先々、宿が取れないかもしれないね」


 タウロはエアリス達に野宿を覚悟してもらう事になるかもしれないと告げた。


「……仕方ないわ。こんな大勢の一団だと、関係者の一部でも行く先々の村や街で野宿する者は出て来るでしょうしね」


 エアリスは冒険者として野宿は慣れているから、抵抗が無い。


 それにタウロ達『黒金の翼』一行の野宿は他所の冒険者チームと比べて数段快適という事は、一緒に旅をした者達には有名である。


 一番の悩みどころである食事はタウロにお金を出せば、普段より良いものが食べられたし、夜も通常なら順番で見張りを立てるところを、エアリスの魔除けの結界や魔物を直接撃退する罠結界など安全も確保してもらえたからぐっすり寝れた。


 寝床もタウロにお願いすれば、簡易式のテントや下に敷く毛皮なども貸し出してくれるから睡眠の質も宿屋並みで至れり尽くせりである。


「俺達の野宿はリーダーによって贅沢なものになっているし、そもそも『竜の穴』で苦行を強いられ過ぎて、どんなところでも寝られる耐性は付いているから何の問題もないな。はははっ!」


 アンクもそう言うと笑う。


「だが、この古代遺跡特別調査チームの下っ端達はこれからほぼ野宿を強いられるだろうから大変だろうな」


 ラグーネが一緒に歩く調査チームの一団を見ながらちょっと同情するのであった。


「タウロ様、どうせならその野宿組相手に商売をしてみてはいかがですか?」


 シオンが思わぬ提案をしてきた。


「「「「商売?」」」」


「はい。タウロ様はマジック収納に驚くほど沢山の品々を在庫として保持しているじゃないですか。それらを売ったり、旅程が一緒の間、貸し出してタウロ様の名を売り、この北部でも有名になってもいいのかなって」


 タウロは王都やその周辺では冒険者として、ジーロシュガー子爵として、そして、あらゆる発明や商売で成功した資産家として有名だが、この遠く離れた北部地方ではその顔も名声も下手をしたら最近まで騒がせていた偽者タウロの方が有名だったくらいだろう。


 シオンとしては偽者を討伐した冒険者くらいの評判しかないこの北部でもタウロの偉大さを広めたいのであった。


「シオン、僕は有名になりたいわけじゃないよ。冒険者として動きやすいのが一番だから多少は名を売っておきたいけどね」


 タウロはシオンの野望について肯定はしない。


「でも、いいんじゃない? 今、北部の冒険者達の有名どころの多くが、ここに参加しているんでしょ? 同じ冒険者に顔を売っておいた方がタウロの言う冒険者として動きやすくなるのじゃないかしら? それに沢山の領兵も参加しているから、街中でトラブルに巻き込まれても顔見知りになっていれば見過ごしてもらったり、逆に協力もしてもらえるきっかけになるかもしれないわ」


 エアリスもシオンの提案に賛同する。


「……確かに。アコギな商売でも無い限り、みんなの大変な野宿を改善できれば印象は良くなりそうだね。目的の村までの数日間はどうせ旅程も一緒だしそうしようか?」


 タウロもシオンの提案を承諾すると、早速のその日の夜から商売を始める事にするのであった。


 古代遺跡調査チームの主要な面子はこの日、小さい宿屋や村長宅、空き家に優先的に泊まれるが、それにも数の限界があるから、案の定、大半は村の広場や、空き地などに野宿を強いられた。


 そんな一行に対し、タウロ達の商売内容は、まず、魔道具ランタンの貸し出しや販売、その燃料となる屑魔石も同様。


 ジーロシュガー製テントの貸し出しや、タウロ特製簡易トイレを野宿先に設置して安い値段で使用料を頂く。


 寝心地の良い毛皮も貸し出した。


 そして、最大の人気商品が食事の提供である。


 これは調査チームがそもそも食料については保存食を大量に用意していて配給してあるのだが、正直、それほど美味しいものではない。


 お腹が膨れれば御の字程度である。


 そこに、タウロ達がマジック収納からかまどを出し、大きな寸胴鍋をかけてカレーを調理し始め、周囲にそのスパイシーないい香りを漂わせ始めるから保存食を齧っていた野宿組の者達はピクリと反応した。


 さらにタウロはこれまで倒してきた魔物の肉も火にかけた鉄板に乗せて焼き始めるから大変である。


 その肉にはタウロ自慢の焼肉のタレが掛けられ、その匂いだけでご飯が進む事請け合いであったから、


「たった銅貨六枚で、今なら具沢山カレー。銅貨三枚で焼肉が食べられるよ? 二つ一緒ならおまけでスープも付けるよ!」


 とタウロ達が野宿組に声を掛けると、胃を刺激された者達がすぐに殺到した。


「このカレーって言うのうめぇー!」


「この肉に掛かっているタレ?美味し過ぎてカレーのお米が進む!」


「ああ! もう、米が無くなっちまった……! え? 銅貨一枚でお替り可能? ──払おうじゃないか! お替り!」


 それでも保存食で我慢する者もいたのだが、早速食べ始めた者達が絶賛し始めると、一人また一人とタウロ達の元へ小銭を握って列を作っていくのであった。


 これには野宿組だけでなく、村人達も反応した。


 最早、タウロ達が提供する食事は一つのイベントのように村全体に広がり、人々が集まってくるのであった。

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