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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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463話 封じられた祝福

 領都バリエーラの街での、聖女マチルダによる『祝福の儀』が行われる当日の朝。


 ちょっとしたトラブルが起きた。


 マチルダが、予行演習とばかりに軽く魔法を使用しようとすると、魔法がかき消され、発動出来なくなっていたのだ。


「なんでよ!?──何かに邪魔されるみたいに、私の魔力がかき消されてしまうわ!」


 マチルダが眉を潜めて不満を漏らす。


 それに驚いたのはルワン王国側の側近達だ。


 数時間後には『祝福の儀』が行われる予定なのである。


 それが出来ないとバリエーラ公爵の面子に泥を塗る事になるし、聖女を擁するルワン王国側も恥をかく事になる。


 せっかく前日から聖女の評判がうなぎ上りなだけに、それだけは避けたかった。


 ルワン王国の責任者ドナイスン侯爵は、側近達に魔法が使用できるか試させる。


「私は使えるようです」


「自分も大丈夫です」


「こちらも、何も問題ありません」


 側近たちは、自分達の魔法が使用できる事を確認すると、マチルダの我が儘がまた始まったのではないかと、内心で思い始めた。


「……どういう事だ?聖女マチルダ、もう一度、使ってみてくれ」


 ドナイスン侯爵は、マチルダに魔法の使用を促した。


「『清浄』!……駄目だわ。やっぱり、何かが邪魔して魔法を行使できないわ!」


 マチルダは焦りから見る見るうちに不機嫌な表情になっていく。


「もしや、何者かが、聖女様だけを標的に邪魔をしているのではないでしょうか?」


 側近の一人が、憶測だが可能性を口にした。


「呪術系か、結界による封印系か……。その可能性はあるかもしれないです」


 側近の一人が同僚に賛同する様に頷く。


「ならばその邪魔をする何者かを探し出して捕らえなければならないだろう!?だが、数時間でそれが可能なのか?」


 ドナイスン侯爵が側近に確認を取った。


「王太子側とこの領都の責任者を務めるムーサイ子爵に協力を仰いで犯人を見つけるしかないかと……」


「……王太子側とバリエーラ宰相側であるムーサイ子爵との関係を考えると難しいかもしれん」


 ドナイスン侯爵が、この短期間で両者に流れる空気感を感じてそう漏らした。


「それはどういう事でしょうか?」


 側近の一人がドナイスン侯爵に聞き返した。


「どうも、仲が良いわけではないようだ。噂では王太子の後ろにはハラグーラ侯爵が付いているらしいのだが、その侯爵と宰相閣下は対立関係にある事くらいは知っているだろう?」


「……そういう事でしたか。という事は、この聖女様への邪魔をしているのは、バリエーラ公爵領内での『祝福』を邪魔して恥をかかせたいハラグーラ侯爵が背後にいる王太子側の策謀……」


 そこまで言うと側近はこれ以上は話すとマズいと思ったのか口を噤んだ。


「それで恥をかくのは聖女を要する我がルワン王国側も一緒だ……!寸前で、『祝福』が使えませんとなったら、宰相閣下側との間にも亀裂が入るだろう。こちらの我が儘か、トラブルかに関係なくな」


「ここは、ムーサイ子爵に打ち明けて、『祝福の儀』までに原因究明を行うしか……」


「……それしかないだろう。だが王太子側には秘密にせよ。もし、この問題の大元であったら、こちらの情報が流れると対策を取られる可能性がある。もちろん、王太子側が必ずしも犯人とは限らない。もしかすると諸外国勢力の陰謀もあり得るからな」


 ドナイスン侯爵はそう側近達と話し合うとすぐにムーサイ子爵に使者を出すのであった。



 その頃、タウロ達は……。


「さっきから気になっていたのだけど……」


 タウロ達の特別室に合流していたエアリスが、ふと自分の頭の上の空間をぼんやり見るようにつぶやいた。


「どうしたのだ、エアリス?」


 ラグーネが友人のつぶやきに反応した。


「昨日の夜は無かった結界と呪術がこの城館を中心に張られているのよね」


「結界?」


 今度はタウロが反応した。


「ええ。元々、この城館を守る為の結界魔法がいくつか張られているのだけど、それに引っ掛からない一見無害と思える結界と呪術の混合したものが新たに張られているの。普通は誰も気づかない程度のものだけど、私にはまとわりつくというかちょっと邪魔になるから気づいたの」


「エアリスにしか気づけない様な結界と呪術か……。それ破れないの?」


 タウロが質問した。


「うーん……。魔法を行使しているのが物なのか、魔法使いなのかわからないけれど、元を絶たってしまわないと破れないし、私なら不快な程度でまだ、大丈夫かな……?幸い大したものでは無いから私が困るという事は無いけど」


 エアリスが、少し眉を潜めながら空間をぼんやり見て答えた。


「なんだ、それなら問題ないな」


 アンクが楽観的に答えた。


「実はボクもエアリスさんが言う様に少し違和感を感じてました……!」


 シオンもエアリスの言葉に賛同した。


「シオンも?……なんだろう、そうなると治癒系や、光系魔法を阻害するものなのかな?僕は何も感じないけど……」


 タウロは首を傾げた。


「……とてもかなり限定的なものなのは確かね。この感じだと『聖女』様も感じていてもおかしくない……、──あれ?もしかしてそういう事?」


 エアリスの言葉にタウロも合点がいったのか二人は視線を交わすと頷いた。


「どういう事だいリーダー?」


 アンクが、説明を求めた。


「エアリスが気付いた結界、呪術は聖女を狙ったものかもしれないって事さ」


「「「ああ!」」」


 ラグーネとアンク、シオンはその言葉で納得した。


「それならば、今頃攻撃を受けている聖女周辺は大騒ぎしているかもしれないな」


 ラグーネがそう予想してみた。


「攻撃というより、限定的な魔法封じだと思う。多分、『祝福の儀』を邪魔したい誰かによるものじゃないかしら?私ならこの程度の結界は無視して『祝福』は使えない事もないけど、あの初心者『聖女』様では難しいかもしれないわね……」


 エアリスは少し考え込むと、そう答えるのであった。


「とりあえず、ムーサイ子爵には報告しておこう。気づいていなかったら大変だし」


 タウロは、そう決めるとメイドを呼んでムーサイ子爵への伝言を頼むのであった。

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