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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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424話 秘薬

「その相手は一体誰だったんですか?」


 タウロには、率直な疑問だった。


 クロスが殺した相手によって、この村の抱える秘密が見えてくるかもしれない。


「わかりません。村長に問い質しましたが、この村に害をなす者だとしか」


「……敵、という事ですか……。──あなたはかなり武芸の心得がある方だと感じたのですが、以前は何を?」


 タウロは、話の角度を変えてみた。


「私ですか?以前は王国の騎士を務めていました。ですがそこですぐに怪我をして騎士を辞め、各地を転々としてこの地へ。仕事もなかった私は仕事を求めると、ハクの親代わりをする様に頼まれました。それから十三年間、この地で親子としてやってきましたが、大怪我をした事で私はどうやらお払い箱の様です」


「……ハクの親代わりをいまさら解除ですか?やはり、この村はハクをなぜか大切にしているのですね。つまり、ハクがこの村のカギを握っているという事に……」


「ハクが……。確かに村長はハクに拘りを見せています。他の子供よりも特別視している気はしますが……」


 クロスはタウロの指摘に考え込んだ。


 これまでは、ハクを育てる事に専念して深く考えてこなかったのだ。


 だが、一か月前に大怪我を負い、剣を触れなくなった途端、お払い箱だ。


 言われてみれば、自分はハクを第一に守って来た。


 実の子供として育てていたから当然なのだが、つまり自分はハクの護衛役だったという事か?


「……クロスさんの怪我が治れば、ハクの親代わりも止めさせられる事はないでしょうね」


 タウロは、意味ありげに言う。


「?ですが、怪我して最近まで寝込んでいた身です。こればっかりは……」


「治療の為にポーション類は試しましたか?」


「医師を呼んで治療したのが怪我の翌日ですが、ポーションでは治りきれなくて、医師の治癒魔法などに任せていたのですがそれでも、治りきれませんでした」


 クロスは、辛そうな表情を浮かべる。


 この怪我が無ければハクの元を去らずに済むのだ、当然だろう。


「ちなみにそのポーションはどの程度の物を使用されたのですか?」


「村長がお金を出してくれたので貴重な中級ポーションだったかと……」


「……それではこれを飲んでみて下さい」


 タウロはマジック収納から自作のポーションを出してクロスに渡した。


「これは……、上級ポーション!?こんな貴重なもの、頂けません!」


「僕の自作なのでお気遣いなく」


 クロスは、その言葉に信じられないという表情を浮かべるのであったが、ハクの親代わりを辞めさせられるかの瀬戸際である。


 藁にもすがる思いで渡されたポーションを飲み干した。


「……痛みが消えた……。──いや、痛みは消えましたが負傷した部分は動かないです……」


「遅かったですか……。分かりました。ちょっと、試したい事があります」


 この親子を引き離してはいけないと思ったタウロは、賭けに出る事にした。


 タウロはマジック収納から、残りの上級ポーションをあるだけ出した。


 合計二十五本。


 これだけでも、とんでもない財産であるが、クロスの怪我は癒せないだろう。


「これを基にして新たな薬を作ります」


「上級ポーションを基に?失礼ですが、それ以上の薬となると幻と言われる秘薬エクスポーションクラスですよ?それは王家に一本だけ存在すると言われる代物。その様な物、作れるわけが……」


 クロスもさすがに上級ポーションを自作で作り出すタウロという稀有な存在を認めつつも不可能だと思った。


 タウロも今の薬剤師としての腕では、まぐれで上級をたまに作れる程度の腕前(それでも十分凄いのだが)なので、秘薬を作れるとは思っていない。


 だが、これを基に作れなくもない魔法をタウロは持っている。


 それは、『創造魔法』である。


 『能力限界突破』で創造魔法に付いていた(弱)が取れたが、何度も命を失いそうになった事で、実験をする事なく半ば封印していたのだが、このクロスの為なら再度使用してみてもいいと思えたのだ。


 タウロは念の為、マジック収納からさらに採取したり、購入しておいた超高級な薬草類もマジック収納から取り出した。


 秘薬ポーションは未知とも言えるものであるから、どの材料が必要かわからないからだ。


「これだけ用意すれば、いけるよね?」


 タウロは自分に言い聞かせる。


 そして、


「『創造魔法』!」


 と、タウロは唱える。


 その瞬間、タウロにははっきりとしたいくつかの感覚が流れてきた。


 それは、どの材料がいくつ使用されるか、魔力はどの程度必要か、そして、魔力が足りない場合は発動すらしなくなるという事が理解出来たのだ。


 それらは一瞬の感覚で伝わってきた。


 そして、その瞬間、タウロの手元でまばゆい光が発せられる。


 その光はクロスの家から外に一瞬漏れて森の中の村の一部を照らす程であったが、あまりに一瞬だったので寝静まったこの村で気づく者はいなかった。


「くっ!何という光……!──タウロ殿、大丈夫ですか?」


 クロスは、光の残像に目を擦りながらタウロの安否を確認した。


「……だ、大丈夫です。魔力はかなり消費しましたが、命に別状はないです。……ないよね?」


 タウロは、これまで『創造魔法(弱)』を使用して来た感覚とは違うものを感じたので、困惑したが、成功したのはわかった。


 手元にある上級ポーションや薬草類を確認すると、そこには、創造魔法により生成された一本のポーションと、それにより消費され、後に残された二本の上級ポーション、そして、幾種類かの薬草が残っていた。


「……やっぱり、あの感覚は幻じゃなかったんだ……。どうやら、これからは無茶して使用しても、魔力の枯渇で死にかける事だけはなさそうだ……」


 ホッとするタウロ。


「それでは、これを飲んでみて下さい」


 タウロは『創造魔法』の力によって手元に現れた秘薬ポーションをクロスに渡した。


「良いのですか?どうやら、上級ポーションや高価な薬草類を大量に消費して作られた様子。私などが飲むより、他に大金を払ってでも欲しがる者はいると思いますが……」


 クロスが躊躇うのも仕方がない。


 上級ポーション一本でも高価過ぎるし、その一本も大きな街でしか手に入らない貴重品である。


 それを二十本以上も優に消費して出来た、まさに幻の秘薬だ。


 それを勧められて、それでは頂きます、と言って飲めるわけがない。


「材料をどのくらい使うかはわかりましたので、大丈夫ですよ。確かにもう一度作れと言われたら材料集めだけでどのくらいかかるかわからないですが、作れる事が分かっただけで問題は無いです。それに、あなたはこれからもハクを守らなければならないのでしょ?躊躇っている場合ですか?」


 タウロは真剣な表情でクロスに問うた。


「……はい。──それでは遠慮なく……!」


 タウロから渡された秘薬をクロスは意を決して飲み干すのであった。

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