200話 昇格と…
冒険者ギルドダンサス支部、受付前。
タウロ達『黒金の翼』は、帰ってきた足でそのまま、クエスト完了の報告に来ていた。
「あ、タウロ君達、お帰りなさい。思ったより時間がかかったみたいね。何かあったの?」
クロエが戻りが遅かった三人を心配していたのか、受付嬢のカンヌに代わって対応してくれた。
「実は…」
タウロは仲間を代表して今回のクエストの報告をした。
「…そうだったのね。それは複数のチームでやる仕事だわ…。一応こちらからも村に連絡して成功報酬の増額請求はするけど、三人にはうちでちゃんとその分出すから安心してね。あと、数チーム分のクエストをこなしてくれたから…、そうね。ラグーネさんはFランクまで一気に上げちゃいましょう。大毒蛙討伐は基本、フリークエストだし、問題ないわね。討伐数が凄いからそのくらいの価値はあると思う。」
支部長権限で幸運にもラグーネは、Fランクまで、一気に昇格する事が出来たのだった。
これには、ラグーネも大喜びで、
「もっと頑張って二人のEランク帯まで昇格して貢献してみせるよ!」
と、意気込みを語るのだった。
「そうだわ。三人に話があるのだけど。前衛を募集してたでしょ?1人、興味を持った冒険者がいるのだけどどうする?嫌なら断ってもいいのだけど…。」
クロエが、何か事情有りなのかお勧めはしないという雰囲気を出してきた。
「…?明日でもいいですか?報告書の作成もありますし、今日は、みんな疲れてるから休んで貰いたいので。」
「気が付かなくてごめんなさい。じゃあ、明日改めて話すわね。」
クロエは頷くとタウロの報告書の作成を手伝うのだが、そこにエアリスとラグーネも加わり、あっという間に報告書は完成した。
「三人ともお疲れ様。あ、ラグーネさん、これが、Fランクのタグね。」
クロエはそう言うと新しいFランクを示す鉄製のタグをラグーネに渡す。
ラグーネは嬉しそうにそれを受け取ると早速紐に通して首から下げた。
「これなら、Eランク帯まであっという間でいけそうだね。」
喜んでいるラグーネを見ながらタウロがそう言うと、エアリスも頷く。
「ラグーネの実力なら、そのEランク帯でも収まらないけどね。」
エアリスが言うのももっともだ。
ラグーネの実力なら、Dランク帯もあっという間かもしれない。
あとは、自分とエアリスが足を引っ張らなければ、問題ないだろうと思うタウロであった。
ギルドを出たタウロとエアリスは家路に就き、ラグーネは『小人の宿屋』に走って行った。
「ラグーネはどうしたのかしら?」
エアリスが、ラグーネの行動に疑問を持った。
もう、家があるのだから、宿屋に行く理由が無いと思ったのだ。
「あれはきっと、揚げ物が食べたくなったんだと思う。」
タウロが笑いながら言った。
「あ、そう言えば、とんかつ気に入ってたもんね…。でも、食べ過ぎると太るから今度、ちゃんと言っておかないと。」
エアリスは経験談なのか、真剣な表情で言うのだった。
翌日の朝。
タウロ達は冒険者ギルドにいた。
クロエが、聞いてきたチームに興味を持った前衛職がいるという話をしていたからだ。
もう1人前衛が増えるとタウロは後衛に回れる。
そうしたら、いつもの形になり、エアリスの負担も減りチームバランスが良くなる。
それは、一番望む事だった。
ただ、クロエがあまりお勧めできない様な雰囲気だったのが気にはなっていた。
「希望者当人からは、冒険者としての経歴はしゃべってもいいと言われてるから話すわね。」
クロエが個室に三人を案内して説明を始めた。
「名前はアンク、歳は26歳、男性。こっちにくるまでは王都本部に所属してたみたいなのだけど…。この1か月で冒険者になって現在E-ランクなの。」
「え?それはまた、凄いですね。1か月でその昇格は余程──」
タウロが続きを言おうとすると、エアリスが引き継いだ。
「余程の実力者か、昇格をお金で買ったか、どっちもか、よね?」
エアリスの言う通りだ。
どちらにせよ、そんなわけがありそうな人物がなぜまた、このダンサスの村に来て自分達『黒金の翼』を選んだのか?
偶然にしても、疑問は多い。
理由はわからないが、会ってみないと判断は出来ない、タウロはクロエにその人物と会ってみたいと答えるのだった。
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