190話 総力戦
挙手したタウロに支部長のクロエは驚いた。
「え?タウロ君、魔法使えたの?」
「いえ、魔法付与の攻撃ができますので、オーガにも効果があると思います。それに、エアリスとはチームなので、一緒がいいです。」
「…わかったわ。じゃあ、Cランク帯3人プラス、『黒金の翼』で組んで頂戴。じゃあ、次!D+チーム『暁』と、同じE+チーム『曙』の計9人でお願い!さらにDチームの…」
クロエのチーム編成は続き、6つの混成チームが出来た。
チームと言っても、数はCランク帯中心のチーム二組の5人ずつ以外は、質より量の9人以上の混成で、個人のDランク帯3人プラス、Eランク帯12人の計15人のチームもいる。
クロエとしては、C+チーム『牙狼』中心のチームを主力として、ボブを含めたCランク帯と『黒金の翼』を遊撃隊、他は、主力チームとともに集団戦に持ち込んで数で圧倒する作戦だ。
こうでもしないと、オーガという物理攻撃だけならBランク帯レベルの格上の魔物をEランク帯レベルが倒せるわけがない。
これは最早、村を守る為の戦争だった。
無謀とも言える戦いに冒険者ギルドダンサス支部の意地の総力戦が始まろうとしていた。
冒険者達一行は、すぐに編成されてからお互いの得手を確認して準備を済ませると、オーガの目撃があった近隣の村に駆けつけた。
タウロ達一行は、他の冒険者達が固まって行動する中、それとは別に先行して向かった。
タウロ達混成チームは、今、ダンサス支部で一番勢いがある茶色い長い髪に黄色い瞳の犬人族であるボブを中心に、Cランクの敏捷さを売りにしている双剣使いの赤髪赤眼のツイン、同じく敏捷さと立ち回りで定評がある槍使いの青髪青眼のベリンが前衛として戦う手筈だ。
一足先に村に辿り着いたタウロ達であったが、村人達が丁度逃げてくるところに遭遇した。
「魔物が今、襲って来てるんだ!早く倒してくれ!」
村人達は足を止める事なくそう言うと逃げ去っていく。
それを追ってきたのか、オーガが4体走ってきた。
敏捷さでもって先行した双剣使いのツインと槍使いのベリンがオーガ達に攻撃を仕掛けに行った。
それに合わせて、エアリスが範囲攻撃で耐久力があるオークさえも仕留めた雷魔法を
4体のオーガの中央に落とす。
グガー!
オーガ達は叫び声を上げて動きを止めた。
「魔法が弱点なのに、この魔法でも一撃で仕留められないの!?」
エアリスが驚く中、そこに追い討ちでツインとベリンが一体に斬りかかった。
「首を刎ねるつもりで斬ったのに硬い!」
と、ツイン。
「俺も、心臓を貫通するつもりで突いたのに!」
と、ベリンが、二人で一体のオーガを仕留めながら、残りの三体を警戒して飛び退った。
そこに、間髪を入れず、動きが鈍っているオーガ二体の首をボブが魔刀で軽々と斬り飛ばした。
そこに、残り一体のオーガが「ガー!」と、叫びながらボブに剣を振り下ろそうとした時だった。
ボブの顔の横を、風を切り裂いて一筋の光が瞬時に通過し、オーガの口に吸い込まれていった。
タウロの放った光の矢は、オーガの口を貫通して背後から新たにやって来た、オーガの群れの一体の右肩に刺さるのだった。
その間にエアリスは補助魔法でツインとベリンの二人の攻撃力を上げた。
主力の二人でも攻撃力が足りないと判断したのだ。
そこに、背後から他の冒険者達が追いついてきた。
先行したタウロ達が、早くも4体仕留めたので、案外、いけるのでは?と思った他の冒険者達が、オーガの後続の群れに斬りかかっていった。
その間に、タウロは魔力回復ポーションをエアリスに渡し、ボブに「援護します!」と、伝えた。
ボブはニヤリと笑うと、「任せた!」と答えてオーガに斬りかかっていった。
最初、勢いづいた冒険者達であったが、斬りかかったEランク帯冒険者達はあっけなく返り討ちに遭った。
オーガはただでさえ硬い上に鎧を着て武装している。
剣技も実戦重視の本能の剣だ。
文字通り格が違った。
「個々で斬りかかるな!集団で一体を少しずつ傷を負わせて弱らせろ!トドメは俺達、Cランク帯がやる!」
『牙狼』のリーダーが、全員に指示する。
魔法使いも、仕留めるのではなく、弱らせる意識で攻撃魔法を使い始めた。
そんな中、前衛の冒険者達は必死だった。
オーガの剣の一振り一振りが早くて重く、気を抜く暇が全く無いので、体力がすぐに奪われていくのだ。
「次に代われ!」
冒険者達は隊列を組んで、前衛をすぐに入れ替えて耐える。
オーガの群れとの戦いは一進一退の互角であった。
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