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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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179話 お嬢様の理由

ヴァンダイン侯爵から貴族の養子への打診があった翌日。


エアリスと久しぶりに二人で冒険者ギルドを訪れ、薬草採取を受注した。

タウロは前日も来ていたが、エアリスがそろそろクエストを受けておかないと、前回から間が空いてたのでギルドのランクダウンのペナルティー対象にならない様にする為のクエストだった。


「えっと、タウロ。これからもよろしくね。」


エアリスはタウロと王都近郊の森に向かう道すがら、会話が途切れたところで改まって挨拶してきた。


「うん。でも、驚いたよ。もう、冒険者を続ける必要ないのに。」


「そうなんだけど…。冒険者としての自分も好きなんだ。『黒金の翼』は、私の居場所の1つだし、大切にしたいの。」


「せっかくお父さんが戻ってきたんだから、一緒の時間も大切にすればいいのに。」


「私もそう思ったの。(あの人)は腐ってもパパの奥さんだったわけだし、パパはショックだと思ってたから…。でも、何年も前から夫婦関係は破綻してたみたいなの。だから、思ったよりパパはショックを受けてなかったわ。やっぱりかという気持ちの方が強かったみたい。だから、この何日もの間、いっぱい一緒に居て話をしたのだけど…。」


タウロは黙って次の言葉を待つ。


「最近、メイと良い感じなの。」


「え?」


話が急に逸れた気がしたのでタウロは聞き返した。


「メイド長だった、今は執事を急遽やってくれているメイの事ね。そのメイとパパが良い雰囲気だから私、邪魔をしたくないと思ったから…、その間、家を空けようかと思ったの。」


意外な理由にタウロは驚くしかなかったが、エアリスは二人が一緒になる事を望んでいる様だ。


「それなら、ヴァンダイン侯爵領にエアリスが1人戻るとかでいいんじゃないの?」


「それはそうなんだけど、それなら冒険者としてタウロ達と一緒にいた方が楽しいもの。それに私達、まだEランクチームでしょ?上のランクにみんなで行ってみたいじゃない!」


「エアリスがそれでいいならいいんだけど…、侯爵令嬢の自覚は持ってね?」


エアリスの決断に苦笑いするタウロであった。



薬草採取の為に森に到着した二人は早速、薬草を集め出した。


「…ところで、僕の養子の話なんだけど…。」


「…迷惑だった?」


エアリスが逆に聞いてきた。


「いや、今まで考えた事も無い選択肢だから正直、戸惑ってる。これまでは冒険者として楽しく生活できればと思ってたからね。」


「パパなりの、タウロに対するお礼のつもりだったみたい。最初はうちで雇おうと思ってたみたいだけど、私がタウロの事を話したら、タウロの性格上逆に嫌がるだろうとわかって、子供を欲しがっていた友人である伯爵の事や私の事、そしてタウロへのお礼、色々考えてみんなが喜びそうな答えになったのが養子の話だったみたい。あ、伯爵はとても良い人よ?奥さん一筋なんだけど、ずっと子供が出来なくて悩んでたの。そこに養子の提案をしたらタウロならって。」


「うーん…。エアリスを見てると貴族でも自由なのかなとは思えるけど…。でも、『黒金の翼』も大事だからなぁ。やっぱりシンやルメヤに相談しないと決められないよ。」


と言いつつも、すぐに断ってもいいと思ってはいたが、ヴァンダイン侯爵もお礼のつもりで考えてくれた事なのでエアリスが今後の身の振り方を考えるまで先送りにする事にしたのだった。


「わかったわ。今後の人生に関わる事だものね。パパにはそう言っておくわ。」



二人はその後、薬草採取クエストを完了すると、カレー屋にお客として訪れ、エアリスに食事をご馳走した。


エアリスにカレーは凄く合っていた様で大満足してくれたのだが、デザートを出すと目の色が変わった。


「何これ、このプリンって食べ物美味しーい!他の色鮮やかなケーキも、食べてみたいけど…、タウロ、お持ち帰りしていい?パパにも食べさせて上げたいし。」


「わかった。じゃあ、マジック収納に入れておくから、食べたくなったら言ってね。」


「ありがとうタウロ!」


エアリスはご機嫌でガラスケースの前に行くと片っ端から注文しだすのであった。


「食べ過ぎたら太るから、ほどほどにね…。」


どこの世界でも甘味が女性を魅了するのは変わらない事を改めて確認したタウロであった。

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