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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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175話 異空間からの生還

護衛対象であるヴァンダイン侯爵の一人娘とその同行者の少年が突如消えてから数時間が経っていた。

護衛騎士達は、この何もない部屋を何か異変が無いか、見落としは無いかと、くまなく探していた。


ツヨークは何の前触れも無く消えた二人が、消える瞬間に何かをみつけたのはわかったが、それが何かはわからなかった。

それを確認する前に二人は消えてしまったのだ。


これはヴァンダイン侯爵が失踪した時と一緒の状況ではないか?

侯爵が失踪した時も、周囲に近衛騎士が居たにもかかわらず一瞬で消えてしまったと報告が上がっている。


二人にも同じ事が起きたと考えるしかなかった。

そうなると、未だ遺体も見つからないヴァンダイン侯爵の事を考えると二人はもう…。


「…これだけ探しても見つからないという事は、もう、駄目かも知れん。それにこのまま、時間を費やすわけにもいくまい。一度、戻って報告をしなければならないだろう…。」


ツヨークはこれ以上の探索を断念する決断をした。


「ちょっと待って下さい、隊長!二人は何か発見してその直後に消えたんですよ!?この部屋には何かあります、もう少し探しましょう!」


副隊長であるタイチは食い下がった。


「すでに数時間経っている。このまま手掛かりなしでここに滞在し続けるにしても簡単な準備しかしてない我々では力不足だ。一端戻って準備をしてからまた来るしかあるまい。」


この隊長の言葉に反論できないタイチだったが、次の瞬間、不意に背中を押されて転倒した。


「痛っ!誰だ大事な話の最中に!」


タイチが振り返るとそこには、タウロとそのタウロに腕を掴まれているエアリスと…


「ヴァンダイン侯爵!?」


ツヨーク隊長も突然空間に現れたこの三人に度肝を抜かれた。


特に失踪して数年が経ち、その命が絶望的と諦められていたヴァンダイン侯爵が現れたのだ、驚くなと言う方が無理な話だった。


他の護衛騎士達も、突然視界に現れた三人に呆然としたのだった。




「特殊スキル【&%$#】の発動条件の1つ<ダンジョンの歪みから生還する者>を確認。[空間転移]を取得しました。」


タウロとエアリス、そして、その父親であるヴァンダイン侯爵がダンジョンの歪みから戻れた事でタウロの脳裏にいつもの『世界の声』が聞こえた。


どうやら、ダンジョンの歪みと言うからにはやはり、この部屋が出来た際に生まれたバグだったのだろう、三人がそこから戻ると、異物が居なくなった事を確認したかの様にそこにあった異空間への裂け目は消えてなくなった。


もう確認する事は出来ないが、ダンジョンが生み出したアルテミスの弓を持つ自分と迷宮核ダンジョンコアをペンダントにするエアリスだからこそダンジョンが生んだ歪みが見えたのではないだろうか?と思うタウロだった。



それはとにかく、護衛騎士達は歓声を上げると、ヴァンダイン侯爵に駆け寄った。

数年ぶりの帰還である。

目の前で奇跡を目の当たりにして沸かない方がおかしいだろう。


「よくぞ、生きてらっしゃいましたヴァンダイン侯爵!」


「もう、生きてらっしゃらないかと…!」


「無事の帰還何よりです…!」


護衛騎士達はヴァンダイン侯爵とは長年、ダンジョン探索で苦楽を共にした仲だ。

感動もひとしおで人目を憚らず泣く者も沢山いたのだった。


「おいおい、大袈裟だな!たかが3日ほどいなくなっただけじゃないか。まあ、ダンジョンでは確かに命取りだが…。」


ヴァンダイン侯爵の時間感覚では、異空間にいたので3日くらいしか経っていなかった。

それだけ、異空間の時間はゆっくり進み、現実世界は早く時間が進んでいたのだ。

タウロは、数年行方不明のヴァンダイン侯爵が生存していた時点で、その可能性を疑った。

だから異空間から早く出る様に二人を強引に引っ張ったのだ。


「ヴァンダイン侯爵、こちらの世界では、貴方が失踪してから数年が経過してます。エアリスはそのあなたの失踪した場所に訪れてたまたま、ダンジョンが生み出した歪みを発見、そこに入ってあなたを偶然見つける事が出来たんですよ。」


タウロが、みんなにも理解できる様簡単に説明的にヴァンダイン侯爵に話した。


「数年!?…まさかそんなに経っているとは…。エアリス、ありがとう。私の愛しい娘よ、お前のお陰でそんな牢獄のような場所から出る事が出来た。」


そう言うとヴァンダイン侯爵はエアリスを抱きしめた。


エアリスも父親は亡くなったと自分に言い聞かせ、納得しかけていただけに、急な人生の転機とも言うべきこの瞬間に父親に抱きつき、涙が止まらず声を上げて泣くのだった。


親子二人の感動的な再会に一行は遠巻きに温かく見守るのだった。

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