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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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174話 ダンジョンの目的地

タウロがただの少年ではない事が発覚すると、その後は護衛騎士と共に、戦いながら進む事になった。


そうなると自分も加わりたくなるのがエアリスだ。

タウロが作ってくれた杖は敵を殴れるように丈夫な作りになっている。

さらに山村でのグリフォン討伐の際に入手した魔石を以前の魔石の代わりに杖に組み込む事で魔力を込めると風属性が付与されるので骸骨スケルトン幽霊ゴーストを倒すのも容易だった。


護衛対象が戦う事には流石に渋った騎士達だったが、目的地が父親の亡くなった場所である。

暗く塞がれるよりは体を動かして発散して貰えた方が助かる。

なので安全な範囲でやらせる事にした。


「…にしてもこの二人、年齢の割に戦い慣れてないか?」


護衛騎士の1人が呆れ気味に感心して仲間に呟いた。


「俺も思った…。」


そのつぶやきに仲間が応じる。


「ああ、二人とも冒険者だからな。そりゃ、場数は踏んでるさ。」


護衛騎士の会話にタイチが横から口を挟んだ。


「え?ヴァンダイン侯爵の娘さんですよね?」


「先日の事件前は家を飛び出して冒険者をやってたんだよ。」


「道理で…。」


護衛騎士達が感心する中、迷路である路を進んだ突き当りを曲がると、階段が見えてきた。


「到着だ。あの階段の側の路に入ると部屋がある。」


ツヨーク隊長が、タウロとエアリスに説明してくれた。


近づくと確かに下りの階段の側に路がある。


ツヨーク隊長が先頭でその路を進みそれに付いて行くと白い石壁の部屋が現れた。


「この通り、何もない広い部屋なんだが、この部屋に入った直後、ヴァンダイン侯爵は消えたそうだ。」


…ツヨーク隊長は何もないと言っているが、タウロの目にはあからさまに怪しいものが映っていた。

それは、マジック収納を開いた時の様な、異質な空間の入り口に見えた。


どうやら、他の人には見えてないらしい。


と、思ったら、エアリスにも見えているらしく、首をかしげている。


「あれは、何?」


エアリスが素直に空間を指さした。


「何とは?」


ツヨーク隊長が、エアリスが指さした方向を見るが、その先にはもちろん何もない。


「エアリス、多分、見えてるのは僕らだけだよ。」


タウロが、助言する。


「二人には何か見えているのか?」


ツヨークが、二人を見て首をかしげる。


タウロは、自分達にしか見えてないらしい異質な空間の側に近づいて行った。


エアリスもそれに付いて行く。


近づいて見てみると、それは裂け目の様でもあった。


「これは、もしかしたら…。」


タウロがその裂け目に身を乗り出す。


「ちょっと、タウロ、危険よ!」


エアリスが、躊躇ないタウロを掴んで止めようとした。


次の瞬間だった。

ツヨーク隊長達、護衛騎士の前から二人は消えたのだった。




「あれ?周囲の壁が無くなってる?」


次元の裂け目に入った瞬間、タウロの視界に映っていた裂け目とその周囲の部屋の壁が消えていた。

後ろを振り返るとエアリスがいて、その背後に裂け目があった。

どうやら、裂け目から他のところに来たようだ。

そこは何もない空間だった。

床の石畳だけはダンジョンと変わらないが見渡す限り壁と天井が無くゾッとする広さだ。


「ここは?」


エアリスがタウロの腕を掴んだまま、聞いてきた。


「多分、異空間かな。」


「異空間?」


「うん、次元の裂け目的なところから入ったから違う空間に来たんだと思う。…ちょっと待って。あれ…、人がいる?」


タウロは、広い空間の先に小さい人影があるのに気づいた。


「おーい!そこの人!」


タウロは大声でその人影に声をかけた。


その人影は座っていたが、立ち上がると、傍にあった荷物を持ち、こちらに走ってきた。


「…え?」


走って近づいてくる人影にエアリスはタウロの背後で警戒していたが、顔が見える距離に近づいてきて愕然とした。


「知ってる人?」


タウロは、何となくその人が自分が予想してる人だとは思ったが、念の為にエアリスに確認した。


「パパ!?」


「君もここに迷い込んだのかね!?うん?…エアリス!?エアリスなのか!?なんでお前まで!」


走って近づいてきたのは、金髪のオールバックに赤い瞳、貴族とわかる服装に高級そうな革の鎧を身に付けた年配の紳士然とした男性だ。

タウロの背後に隠れる様に立っていたエアリスに気づくと驚いた。


「ヴァンダイン侯爵ですね。取り敢えず、まずはここから出ましょう。時間が惜しいので。」


タウロはそう言うと、再会に慌てふためくエアリスとその父親の腕を掴むと裂け目に引っ張って行き、裂け目に飛び込むのだった。

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