最終回
野村立樹はゆっくりと目を覚ました…。
朝日が真新しいカーテンから差し込んでいる。
今日は土曜日なのて慌ただしく出勤の準備をしなくても良いのだから休みの日とは良い物だ。
加えて土曜日と言うのは休みの日としては格別だ。
なにしろ次の日が日曜日、つまりは今日一日ゆっくりと過ごしてももう一日同じ様に過ごしても良いと言う事なのだ。
そんな土曜日の有難さを噛み締めながら肌寒くなって来た昨今、布団の暖かさに有り難みを感じずにはいられない。
布団の暖かさとはつまり自分の体温の余剰分に過ぎない。
自身の体温によって温められた温もりと思うと少しばかりの薄ら悲しさを感じたりもするがこの暖かさは俺だけのものでは無いのだ…。
「う〜ん…ムニャムニャ……」
となりから耳心地の良い甘い声が聞こえる。
男なら誰だって反応してしまいそうになる程の甘い声。
半裸で眠る彼女…結城咲菜の物だ。
彼女は心地よさそうにすぅすぅと寝息を立てている。
昨日…眠る前に俺は彼女からの愛を物理的…かつ肉体的にこれでもかと注ぎ込まれた。
彼女の胸元に実ったあの大きな2つの肉団子は俺の想像を遥かに越える迫力と包容力を持っていた。
もはやあれ無しにはこれからどう生きて行けばいいのか真面目にわからなくなるくらいだ。
もはや俺の中に女性への苦手意識は完全に無くなり毎夜彼女からの愛情を欲する程に飢えに苛まれている。
佳代から逃げ回っていたあの頃が嘘みたいだ…。
まぁ今でも他の女性とはまともに話が出来ないので苦手意識の克服と言うよりは咲菜に対して欲望の枷が外れたみたいな感じだろうか…。
咲菜…。
俺は彼女の事を咲菜と、そして彼女の方も俺を立樹先輩とお互い名前で呼び合う様になった。
「恋人なら下の名前で呼び合うのはお約束ですよね!やっぱり!」
と彼女が言ってきて俺も確かにと思ったので名前で呼び合う事となった。
この歳になってこの程度の事がとてもむず痒く恥ずかしく感じるが彼女から立樹先輩と呼ばれる多幸感は他に類を見ない。
幸せだなと改めて実感する。
ふと、時計を見ると朝の11時を回っていた。
いやはや、寝すぎだろと…。
そんな感じでボケ〜としているとスマホが鳴り出した。
電話の相手はどうやら母親の様だ…
「もしもし…」
「あっ、立樹!良かったわ出てくれて!」
「どうしたのさ?」
「今のアンタにこんな事を聞くのもなんだけど…そこに佳代ちゃんいたりしないわよね?」
「はぁ!?」
母親の口から佳代の名前が出てキュッと心臓を
鷲掴みにされた様な怖さを感じる。
どうしてそんな発想が出てくるのか心底謎だがハッキリ言っておかないといけない。
「いる訳ないだろ!」
「そうよね…いたら咲菜ちゃんに申し訳ないわ…」
「で…?どうしてそんな話が出て来たんだよ?」
「それがね…佳代ちゃんまた家出したらしいのよ。」
「はぁ!?」
とことん驚かされる…
家出だって?
あんな事を仕出かしておいて家出なんてとてもではないが信じ難い…。
信じられないけど何処かで腑に落ちる所はある。
「昨日中岸さんから連絡があってね、どうしてもアンタに確認をしてほしいってお願いされたのよ…咲菜ちゃんがいるんだからありえないですとは言ってあるんだけどね…突撃なんてされたら私も堪らないのよ…」
「まぁ…それは確かに…まぁ…こっちにはいないし、もしきたら中岸家に絶対に送り届けるからって連絡しておいて欲しい。」
「わかったわ」
俺はスマホの通話アプリを閉じそのままスマホを手放した。
どっと疲れがさ出てくる。
もう、本当に勘弁してほしい所だ。
「どうしたの?立樹先輩?」
「あぁ、咲菜…それが…」
俺は咲菜に軽く母親からの電話の内容を伝えた。
彼女は最初こそ驚いた顔をしていたが心底呆れたのかため息をついていた。
「本当にどうしょうもない人ですね、彼女…」
「何処で何をしてるんだろうな…」
「心配なんですか?」
「……、心配して無いと言えば嘘になるかな…でも」
「でも…?」
「もう関わりたくないし…俺と咲菜の世界蔑ろにしてまで助けたいとは思わないかな。」
「ふふ…、純粋に嬉しいです…でも私って嫌な女ですね…彼女を出汁に使ってるみたいで…」
「そんな事はないよ…アイツに関わりたくないってのは紛れもなく俺の本心だ…、よし!この話はこれで終わりだ!今日は約束通りドライブに行こう!」
「立樹先輩の初めての運転!楽しみですね!」
「助手席に誰か乗せて車乗るの初めてんだからあまりプレッシャーかけないでくれ…」
「大丈夫ですよ!先輩なら!ふふふ。」
俺と彼女のこれからは始まったばかりだ。
確かに佳代のことは心配だが、もうアイツに振り回されるだけの人生なんて送りたくはない…。
佳代と咲菜…
どちらが天秤にかけて傾くなんて議論する余地も無い。
薄情と罵られるかも知れないし罰が下るきも知れない。
それでも俺は咲菜とのこれからを優先する。
だから佳代…いや、中岸さん。
さようなら…。
これまでこの駄作に付き合ってくれてありがとうございます。
また何か書こうと思ってますので見つけてくれた際はまた読んでもらえると嬉しいです。
お願いします。




