佳代編 2話
父親が勧めて来た仕事は所謂現場仕事。
お世辞にも綺麗とは言えない工場で外観はそれなりに小綺麗にしてはいるものの少し中を覗けば経年劣化で傷んだドアや錆ついた何らかの機械、砂ほこりで覆われた地面などハッキリ汚いと思わされる。
本能的な嫌悪感が私の心を満たしてしまう。
普通こんな所は厳つい男が多いイメージだけど…しかし何故か作業者は女が異様に多く事務作業の様な事から男が本来やるような力仕事までやっている。
ゴリラみたいな女共だなと思って見てたら割りかし美人の比率が高くどうなってるんだと不思議に思う。
ここは女の作業者なら来る者拒まずな精神なのかやる気があれば誰でも採用しているみたいで私みたいなろくに仕事経験もない奴でも軽い面談だけで合格となった…。
上の人間とか採用担当とかが変態かハーレム願望でもあるクズなのかも知れない…。
そうして私に仕事を教える事になった先輩社員も女の人だった。
見た目は割と…いや、かなりの美人だ。
歳の頃は私よりずっと若い…多分20代前半くらいか…?
見た目よりも若く見えるのはこの女が童顔だからか…
しかし胸についた脂肪の塊はもしかすると私よりも多いかも知れない……童顔で巨乳のエロ女が私の先輩となるみたいだ…。
「初めまして!私、立儀愛梨っていうの!お姉さんからは年下の子供と思われるかも知れないけど先輩として色々頼って貰える様に頑張るから気にしないで解らないところは私にどんどん聞いてくださいね!」
立儀愛梨の自己紹介はそんな感じのものだった。
歳の割にフワフワしてると言うか何処か抜けてそうな印象を受ける娘だ。
「ありがとう…私は中岸佳代…歳は…まぁ…30代ね…こちらからも仲良くしてくれると助かるわ」
「中…岸…」
「うん…?どうかしたの…?」
「え…?うぅん!何でもないよ!」
……なんだ…?
私の名字に何かしら反応した様な気がしたけど…気のせいかな?
まぁ…どうでも良い…。
今からここで私は仕事をしていかなければならない…。
クビになっても良いし、辞めてもいいけどお父さんがうるさいし下手に辞めてここよりもっと変な所で働く事になってもそれはそれで面倒だ…。
男の多い現場仕事は怖い…、私を変な目で見てくる男が多いのは安易に想像できるしそんな所に行きたいとは思わない…。
ならここで頑張って行くしかない…。
「いきなり大変なお仕事は割り振られたりしないから安心してね、佳代さん」
「そう…正直力仕事なんてできる気かわしないからそこは安心したわ…」
「佳代さんはここに来る前は何をしてたんですか?」
「……」
「あ…ごめんなさい!…言いたくない事だってありますよね…私…無神経でした…ごめんなさい…」
「別に謝らなくてもいいわよ…そうね…俗に言うニートって奴ね…」
「へぇ…凄いですね!自分からお仕事しようと決断出来るなんて!私には無理かもしれないもん…」
「何あんた?私の事馬鹿にしてるの?」
「ち…違うよ!?その…私…子供の頃にお兄ちゃんやおじいちゃん達にとっても…沢山迷惑かけて…その頃は何も自分で考えられなくて…周りの言う事鵜呑みにして…だから自分でちゃんとお仕事出来る佳代さんは凄いなぁ!って…」
「違うわよ…私は、アンタが思ってる様な人間じゃないわよ…むしろ…私も周りの言う事鵜呑みにして勝手に落ちていくタイプの馬鹿な人間の方よ…」
「……そうなんだ……」
多分…多分だけどこの娘にも学生時代に色々とあったんだろう…私と似たような雰囲気をこの子からは感じる…。
美人…見た目の良い女はソレだけで周りからチヤホヤされて自分を見失いやすい…。
それで周りに煽てられて馬鹿な事をしたんじゃないかな…?
まぁ…私の持論で皆が皆そうではないんだろうけどね…
あの泥棒女みたいに…
兎に角…多分この子も道を踏み外した事が過去にあるのだろう…。
それでもこんなしんどそうな所で働いている…。
見習うべきなのはこの子の方なのかも知れない…。
「まぁ…仲良くやりましょ?よろしくね?先輩」
「う…うん!よろしくね!佳代さん!」
兎に角…ここで働いていくしかない。
私に務まるかどうかなんてのはやってみないと解らない…。
駄目で元々なんだ…
私はここで働いていく為の覚悟を無理矢理固めた。




