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願いを叶える宝石に纏わる冒険譚  作者: 2991+
迷い

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第20話



 かつん、かつん。

 石床を叩く、靴の音。


「…おい」


「ああ、聞こえた」


 警戒した兵士が互いに顔を見合わせて頷く。

 交代までは時間がある。こんな場所の廊下を、夜中にうろつくのは怪しい奴だけだ。


 しかし急ぐでもなく、隠れるでもなく、足音はただ暗い廊下に反響する。


 ついてない。どうせ侵入者なんていやしないさ。喉の乾きに耐えられなくなったお偉いさんかそのお付きが、野営地へ行くと駄々でもこねるんだろう。


 そう呟き、兵士の一人は舌打ちして不審な足音を追った。

 残されたもう一人は、うっそりと眉をひそめる。

 妙な噂を、見張りの前に聞いていたからだ。馬鹿な噂だとは思うのだが…。


「…おい、止まれ、そこの…女?」


 怪訝そうに、兵士は誰何した。

 静かな廊下の先で聞こえる仲間のその声に、残った兵士も慌てて後を追った。


「そこで何をしている」


 兵士達は素早く剣を抜いて構える。

 廊下を一定距離で照らす弱々しい蝋燭の火に、浮かび上がった後ろ姿。

 女は足を止め、こちらを振り向こうとし…



 ぱしゃん。



 小さな水溜まりを残して、消えた。




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