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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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70羽目:最終決戦

少しの間を置いて、裁判官は再び口を開く。


 「告発者。異議申し立てをするならどうぞ」


 みぃがうちを見て合図を送った。よし、ここからは証拠と切り札を投入するとしますか!

 パネルを操作して、ロープとポーションを合体させる。アイテムが1つになって『真実のポーションが染み込んだロープ』と表示されている。

 みぃは異議申し立てのために挙手し、発言する。

 

 「確認したいことがあります。モルモさん、あなたがこの正式書類をすり替えたという疑惑についてです」


 「そ、そんな……モルモ兄さんが……?」


 告発者が劣勢である中、突然の疑いにエルザさんだけでなく、部屋中がざわめいた。モルモさんが声を張り上げて自らの主張を訴える。

 

「いきなりなんですか!そのような虚偽は断じて許されません!私は商人ギルドの管理官ですよ。そのような不正をするはずがない!裁判官、彼女は不実を述べています」


「虚偽じゃないわ、まず私とエルザさんが商人ギルドでモルモさんと話した時の事を、エルザさんに証言していただきます」


 呼ばれたエルザさんは未だに信じられない顔をしているが、彼女は意を決して証言台に立ち、その時のやりとりを話してくれた。話し終えた後にエルザさんは何かに気が付いたようで、目を見開いてから証言台の手すりが軋む程、握りしめていた。


「モルモさん、こちらの証言で間違いはないですよね?」


「は、はい……そのように返答はしました」

 

 詐欺コンビは「その会話がなんだというんだ」と呆れたように笑っていたが、モルモさんの表情は硬いままだ。


「この会話では()()()()()()()()()伝えていません。それなのにモルモさん。あなたは『船の証拠はもう大丈夫』と断言しました。私達は船については一言も伝えていないにも関わらず」


 場がシーンと静まり返る。詐欺コンビの一人が視線を泳がせ、モルモさんがわずかに震える唇を動かす。


「そ、それは……そうだ、エルちゃ!多分……エルザさんから聞いたはず、です」


 モルモさんが歯切れ悪く言い終えたのと同時に、エルザさんは絶望の表情を見せた。

 

「……話して、ないわ」

 

 少し俯きながら、かすかな声でぽつりと呟くエルザさん。みぃは彼女の肩にそっと手を置き、モルモさんに切り返す。


「その発言、さらに矛盾しています。エルザさんとの再会は突然でしたよね?証言にもあるように、『いきなり連絡もなしに』とご自身で口に出しています。それなのに、船の証拠集めについて、いつ・どこで聞いたというのです?」


 彼は目を泳がし、口をまごつかせているだけだった。背後にいる子供達が見つめるエルザさんの背中はシャンとしているが、その顔はどこか苦しそうなものだった。それを見て、みぃは少し申し訳なさそうに眉を潜めて、さらに畳みかけた。

 

 「事前に、船の調査をしている人物がいるから書類をすり替えておけと、誰かから指示があったのではありませんか?そこに私達がきた。それで裁判を提案して、書類の確認をするのを口実に内容をすり替えた……あら、モルモさん。暑いですか?汗がすごいですよ。よろしければ、こちらをどうぞ。とりあえず、私からは以上です」


「タ、タイミングは定かではありませんが……あれこれと書類や準備にバタついていましたし。どこかで聞いた記憶はあります。ハンカチ、ありがとうございます。ふぅ……」


 モルモさんは、みぃから差し出されたハンカチで顔の汗を拭って落ち着こうとしているが、顔面蒼白のままだった。そのやりとりを見て、うちも反論するため挙手する。

 

「うちからも異議あり。正式手続きについてだけど、本来なら商人ギルドで控えを双方に渡すよね?ギルドに保管されている書類が本物だったとしても手渡したという記録がない。だから、ギルドに保管されているという理由だけでは証拠としては不十分だよ」


 どの職員が渡したかの記録がないなら管理としては、ずさんである。エルザさん達も聞くまで正式な手続きを知らなかったし、正式な方法に見せるやり方はいくらでもできてしまう。


 「あと立ち入り禁止区域と言ってたけど、うちはロウガさんの許可を得て本人の船を調査してるよ?」


 パネルから次々と証拠をタップして、カギを手続きした証明を提示する。何となく勘でロウガさんの倉庫に閉じ込めてもらうようにしたけど、今となっては大助かりだ。

 

「それに、人をこのロープで拘束した件だけど」

 

 一呼吸置いて、ポーションが染み込んだロープを、2人に向かってぽいっと放り投げた。反射的にキャッチした彼らに冷ややかに告げる。

 

「正当な対応であれば憲兵に引き渡せばいいだけ。なのにその場から拉致し、人気のない廃墟で監禁までしたのはなぜ?しかも、証拠を消すために書類と人を建物ごと燃やそうとしたよね?証拠もしっかりあるよ。うちからは以上」


 『燃えかけの手紙』も選択すると、2人は顔を引きつらせながら、こちらを睨みつけた。みぃに目を向けると、彼女が頷いて質問を投げかける。


「では、モルモさん、改めて真実を確認させてください。あなたはこの書類を改ざん、あるいはすり替えをしましたよね?」


「そ……そうだ!違わない!……えっ?私は……嘘をついた!?ずっと想いを寄せていたエルちゃんを奪うために、アイツらの提案に乗って偽の契約書とすり替えた!家族をバラバラにしたかったんだ!?そんな貧乏人より、私の方がエルちゃんに相応しいからだあああ!」


 自分の口から出た言葉に、彼自身が一番驚いていた。目を見開き、口を押さえようとするが、もう遅い。止めようとしても、次々と真実が口からこぼれ落ちていく。


「そんな、身勝手な理由で……私の家族を……」


「罪を告白して頂いてありがとうございます。私からは以上です」

 

 エルザさんは、ただただ体を震わせていた。

 突然の自白に、皆が唖然とする中、うちはさらに畳みかける。


「ポンジとバルドはこの証拠の通り、うちを拉致監禁し、証拠隠蔽のために建物を燃やしたよね?そして、モルモさんと手を組んでいたから、ギルドの書類はどうとでも改ざんできた。船も錬金術も嘘。元から風スクロールで壊れるように仕込み、『違約金』などという嘘の項目を作り、女子供を連れ去るための口実にした。そうだよね?」


「そうザマス!!?へ?金になるなら何でもするザマス!?ほぁ?!!」


「旦那ァ!?その通りでゲス!!?錬金術は全部嘘で、壊れるように細工してたでゲス!ぎょえー!?新世界人(ニュービー)を監禁して、燃やして証拠隠滅するつもりだったでゲスぅぅぅぅぅ!?」

 

 2人も嘘をつこうと必死だったが、真実のポーションの効果で、言葉にならない悲鳴と共に口から本音が流れ出ていく。

 部屋が騒めく中、表情を変えず静かにローさんが立ち上がり、淡々と判決を言い渡す。


 「静粛に――判決を下します。証拠と証言の一致。さらに本人達からの自白により、商人バルド・スキム、錬金術師ポンジ・サギィ、商人ギルド管理官モルモ・ダウトの3名を詐欺罪および虚偽の罪。さらにバルド氏とポンジ氏は器物損害、殺人罪の余罪を含め、3名全員を有罪とします」


 宣告された後、力なくモルモさんは椅子にうなだれ、2人は悔しそうに顔を真っ赤にして拳を握りしめていた。ちなみに、ムルクさんは1か月の監視対象になるだけで、罪に問われないそうだ。

 

 「えぇい!逮捕されるくらいなら、弱い女子供を人質にして逃げるザマス!!やれ、ポンジ!【フラッシュ】!」

 

 無事に裁判が終了するかと思いきや、いきなりバルドがスクロールを開いて詠唱を唱えた。すると、まばゆい光が部屋中を包み込んだ。咄嗟に手をかざしたが、目がチカチカする。無理やり目を凝らしながら周りを確認するが視界がぼんやりとしていて、かろうじて近くにいたみぃとロウガ家が見えるだけだった。

 

「【捕縛】でゲス!」

 

 ポンジがスキルを唱えると何かが飛び出し、ロウガ家に向かって勢いよく巻き付いた。

 

「カイ!」


「ねーちゃん!」

 

 子供達は互いを庇うように抱き着いて、その前にロウガさんとエルザさんが立ち塞がっていた。しかし、淡く光っているチェーンのようなものが絡みついたその瞬間、紙が破れるようなブチッという音と共に、その拘束はあっさりと引きちぎられた。


 「「「「「「「「え?」」」」」」」」


「手を出したわね……」


 その場にいる全員が呆然とする中、詐欺コンビの前に、エルザさんが目にも留まらぬ速さで飛び出し、拳を振り上げ、雷鳴のごとく一閃を叩き込んだ。


 「もう許さない!私の家族に手を出した事、一生後悔しやがりなさい!」

 

 詐欺コンビは、エルザさんの怒りの鉄拳によって、見事にボッコボコにされた。それを見ていたモルモさんは、部屋の隅でムンクの叫びのように、目と口を限界まで開いた絶望顔で固まっていた。

 絶叫の嵐が部屋に響き渡る中、ロウガさんは子供たちの前で腕を組みながら、静かに嵐が止むのを待っている。


「え……かーちゃん、あんなに強かったの……?」

 

「……まだ優しい方だ。ちなみに、船を陸揚げしたのかーちゃん1人でだぞ……」

 

「え゛っ?」

 

「お母さんって、こんなにすごかったんだね……?」

 

「村で一番強かったからな……。『黄金の拳女神』って呼ばれてたんだ。有り余る力を発散するのに何度サンドバックを破壊したことか……」


 母は――いろんな意味で最強?だったようだ。

 バルド(ザマス)ポンジ(ゲス)の悲鳴が飛び交う中、ピコンピコンと鳴りやまない通知音が響き渡る。



《調査クエスト:『偽りの商談』をクリアしました》

《報酬として3000Rを入手しました》

《称号【真実を暴く者】を獲得しました》

 .

 .

 .

 ロウガとの好感度が上がりました

 エルザとの好感度が上がりました

 ナギサとの好感度が上がりました

 カイとの好感度が上がりました

 ムルクとの好感度が上がりました

 ロー・エガリテとの好感度が上がりました

 ロー・エガリテとの好感度が上がったことにより、未開放エリアへの移動が可能になりました

 .

 .

 バルド・スキムとの好感度が極度に下がりました

 ポンジ・サギィとの好感度が極度に下がりました

 

 

 


 

 【真実を暴く者】

 カテゴリー:称号

 効果:ギルドからの信頼が上昇し一部のNPCが「特別な依頼」や「裏情報」を提供してくれる。「真実の眼」スキルが使用可能。スキルにより偽装された場所や重要アイテムを発見しやすくなる。



 

 まるで音楽ゲームのコンボボーナスのように、騒ぎのリズムを刻んでいるのを、見守るしかなかった。

来週は2羽更新します!


[読者の皆様]

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