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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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68羽目:ミッション:潜入捜査

 《証拠集めをする》の進捗バーが80%で止まってしまった。さっきムルクさんの会話の中にアジトってあったから、残りはもしかして商人ギルドとアジトなのかも。


「これはアジトに潜入するしかないのでは?ムルクさん!アジトに連れてって!ロープとかで手縛っておいたほうが捕虜っぽい?あ、木箱とかに詰め込むのはナシで!」


「はぁ?捕まれば命の補償はないのに、何で楽しそうなんだ……?」


 ノリノリで捕虜になろうとしたら、ムルクさんは呆れるように、盛大にため息をついた。だって、アジトって言ったら、潜り込むために捕まる所からがスタートでしょ?


「さっきも言ったように、あいつらの指示でお前らを閉じ込めた。あと少ししたら倉庫に捕まえにくるはずだから、おとなしく待っとけ……」


 あそこで脱出してなかったら、やっぱり捕まる流れになってたんだね。みぃを別行動して正解だった。


「場所を知ってりゃ教えるんだが……あいつらワープスキルで移動するから、オレもアジトは知らねぇんだ。契約書作成の時に連れていかれたっきりだしな、あのアジトに証拠もあるとオレは睨んでるが探しだすチャンスがなかった」


 みぃが言ってたけど、クエストのヒントって会話やメモに出てくることが多いから、アジトに証拠はありそうだね。じゃ、のんびり捕まえに来るのを待ってようかな。でも、その前にトイレ行きたいんだよねぇ。だけど、ログアウトしたらクエストって一時停止になるんだっけ?そしたら、みぃの方も止まっちゃうのかな。


「んー、わからない時は聞けば解決!ヘルプミー!シーちゃん!」


「ん?あぁ……」


「ヘルプシステムAIのシスクロウッピ!」


「ングフゥ!」


 やっぱり可愛すぎて変な声が出た。

 理性を取り戻して聞いてみると、PTでオンラインの人が居ればクエストは進行するんだって、だけど必要なシーンにプレイヤーがいない場合はそこで止まるようになるらしい。

 これなら、みぃの方は止まらないから安心だ。あと、羽の件は抜け毛システムが搭載されていないからと断られた。残念。(※66羽目参照)


「……天啓は貰えたか?」


 天啓……?あ、シーちゃんはそうなるのか。確かに神の使いの様に神々しいから、あながち間違ってもいない。


「うん、天啓はもらえたんだけど、羽が貰えなくてね。ってことで、うちはロウガさんの倉庫で少しふて寝するから、あいつらが来たらそこに行くように伝えといて!」


「羽……?てか、何で危ない目に合うのに楽しそうなんだ……。新世界人(ニュービー)は神の加護で蘇るにしても、お前みたいなヤツ初めて見るぞ……」


 一度でいいからスパイみたいな事やってみたかったんだよねぇ。みぃに伝書バトを飛ばしたし!さて、ボタンをポチっとな。

ログアウトすると倉庫のざらついた地面から、ふかふかのベットの感触に身を包まれる。


「相変わらず摩訶不思議な感覚だなぁ。あ、少しログアウトするっていうの忘れてた。みぃが心配しないようにメッセージ送って。ついでに歯磨きも終わらせちゃおうっと」


 * * *


 再度、ログインするためにヘッドギアを被って目を閉じると、瞼の裏まで透けていた蛍光灯の光がすっと消え、暗くなった。ログアウト前のざらついた感触はなく、今は硬くて埃っぽい。

 どこまでこっちのクエスト進行しちゃったんだろ。アジトに連れていかれたとは思うけど、押し入れみたいな所じゃありませんように!

 少しばかり緊張しながらぎゅっと閉じていた瞼をゆっくり開く。今、目の前に映っているのは、視界の隅から漏れ込む光と木の板。よかった、暗くないから一先ず安心した。

 これって……床に転がされてるのかな?あれ、腕が後ろから動かない。んじゃ、横に転がってっと。うつ伏せ状態から体を転がして横向けになる。


 視界の隅に映る窓。カーテンがないため、光が部屋の中を照らしていた。ぐるりと見渡すと寝具はなく、あるのは机や椅子と棚だけの殺風景な部屋だった。書斎か勉強部屋かな?

 そういえば、ログアウト前は80%だった進捗バーが90%になっている。みぃの方でも進展があったのかな、残り全部ここで見つかればいいけど。

 すぐにでも証拠を探したい所。でも、体を見ると後ろ手に手首を、そして足首をロープでぐるぐる巻きにされていた。まぁ、これならすぐにほどけそうだから、まずはロープを解いてしまわないと。

 そのとき、ドスドスと足音が聞こえてきたので、慌ててうつ伏せで寝たふりをする。音が部屋の前で止まり、すぐにガチャリとカギの回る音がした。扉が開く気配と共に、聞き覚えのある濃ゆ〜い口調が部屋に飛び込んでくる。


「こいつ、まだ寝てるでゲスか?捕まってるのに、よく寝ていられるでゲスなぁ。そういや、ムルクが言ってやしたが、この女が船の調査をしていたらしいでゲスよ」


「寝てるなら始末も楽ザマスよ!ほぅ、こいつがいなきゃ、ロウガは何もできずにあの家の女子供を売るしかないザマスね!ぐふっ……嫁はもう買い手がいるし。オレ様は娘を気に入っているから、家に迎えるつもりザマスよ!むほー!」


「さすが旦那でゲス!ウッハウハでゲスなぁ!あっしはあの息子の方が……フヒッ」


 ……なにそれ。こいつらそんな目で子供を見てたの?そんな目で見られてたら、そりゃナギサちゃんも怯えるし、カイ君の耳を塞ぐよ……。


「ふふふ……この場所を知るやつもいないし、後はまとめて燃やせば、すべて消えるザマスよ。裏の手も万全。オレ様の計画に死角はないザマスね!とりあえず!前祝いといくザマス!」


「旦那ァ!一生ついて行くでゲス!」


 ありがたいことに、ムルクさんは、みぃの存在を隠してくれたようだ。足音も遠ざかったし、すべて消される前に隠されている証拠を探すチャンス!また体勢を横にしてと。


「おわ!ビックリしたぁ!」


 いきなり《WARNING!!》って表示が出たんだけど。えっと、15分以内に部屋の中にある証拠を見つけて脱出せよ?何か、スパイ映画っぽくなってきてワクワクしてきた!

 体を捻って腕を足の下から前に回し、膝に数回ぶつけるとロープが緩んだ。

 STRで引きちぎれたかもしれないけど、念のため使えそうな資源は残しておかないとね。足は普通に手で解いて、はい完了。


「さて、急いで調べないと。あ、調べられる所は虫眼鏡アイコンが出るのね」


 この部屋にあるのは、古びた棚、机と椅子だけ。棚には数冊の本が置かれているが、どれもページがボロボロ。この本を見たらスピルカさん悲しむだろうな。

 棚の後ろの壁には何もなし。机の引き出しも2段とも開けてみたけど、あるのは細い鉄の棒だけ。

 虫眼鏡があるところは全部見ちゃったな。よし、いろんな方向から見たら何か発見できるかも!まずは寝っ転がって天井を見上げる。何もない……はい、次!横は壁と窓、さらに反対側は机。うーん、怪しいところは……。


「ん?」


 あの虫眼鏡の位置って引き出しだと思ったけど、もしかして机の方?立ち上がって、近づき机の下をのぞき込む。


「こっちじゃないか……って、ことは引き出しのどこか?」


 引き出しの奥を覗き込むと、板しか見えないが虫眼鏡が表示されている。ぐるっと回って反対側の板をコンコンとノックしてみると、くぐもった音がした。何もない場合はもっと乾いた音になるから何かがこの裏にあるはず。

 引っ張るところはない……なら、押してみよう!左上の隅から時計回りに力を込めていくと、右下のあたりでカチリッと音がして板が手前に浮いた。

 板を持ち上げると埃が舞い、目を細めながら覗き込むと、そこには束になった契約書がひっそりと隠されていた。


「ビンゴ!」


 《証拠集めをする》進捗バーに完了のチェックマークがついた。あれ、いつのまにか新しい指示に《裁判を行う》がでてる。

 とりあえず、書類のスクショ……ん?《クエストアイテムにより撮影不可》って出た。もしかして、現物をこの裁判に持って行かないといけない?ありゃ、インベントリもダメか。

 じゃあ、さっきのロープを再利用して書類を縛っておけば持ち運べるね!さて、あとは脱出だ。


「ドアは……あっつ!えぇ……?」


 ドアノブに手をかけると、掌から一気に熱が伝わって思わず手を放した。

 先ほどの会話を思い出し窓の外を見てみると黒い煙が上がっている。窓を開けると埃っぽい部屋の中に、新鮮な空気と共に焦げた香りが流れ込んできた。顔を出すと真下の部屋から火の手が上がっている。

 表示を見ると残り脱出時間は5分を切っていた。ふむ、この部屋だと床を壊してとかはできないしなぁ。どうやって脱出したらいいんだろ?

 そういえば、落下耐性あるし、この部屋は2階だ。図書館の時よりもかなり低いから飛び降りてもいける気がするな。


「やってみるかな……よいしょっと!」


 そのまま窓枠に手と足をかけて身を乗り出しジャンプした。落下耐性大の効果と土が柔らかいのもあって痛みも、ダメージもない。振り返ると1階の窓から轟々と火が燃え上がっていて、熱気が顔にじりじり刺さる。

 燃え盛る炎の中から、ひらひらと燃えた紙が舞い散っている。そこに1通、火が付いた手紙が落ちてきた。足で踏みつけて火を消して、手紙を見ると『燃えかけの手紙』と表示されていた。


 この手紙みたいに、焼けなくてよかった。でも、火もずっと触っていれば耐性って付いたりするのかな。いや……ダンジョンでも熱かったし、やめておこう。耐性が付く前に、焼き鳥ならぬ焼きルーイになってしまう。


 とりあえず手紙をインベントリにしまい、手に持っている書類をザッと確認すると、ロウガさんの契約書を見つけた。内容はやっぱりデタラメ。漁船の積荷目的なんて『ワイバーン輸送用』になってるし。ドラゴンじゃん、せめて魚系にしようよ。

 まぁ、証拠は揃ったし裁判に向かうぞ〜!あ、みぃに今から向かうって伝書バト送っておこう。スパイの事を伝えたら『は?』とだけ返事が戻って来たからね……。

いろんなルートはあるけど、大まかに倉庫で捕まる→アジトに連れていかれる→脱出→商人ギルドで裁判の流れ。今回は2人以上だから、ルートが細かく分岐していった感じです。あとこの部屋の正規の脱出ルートは細い鉄の棒でドアのカギに差し込むと鍵開けスキル入手。


ルーイは強行突破スタイルで行っちゃった。

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