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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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39羽目:鍵のかかった日記と開かれた心

 ミニゲームも終盤へ差し掛かった所で、突如《Finish》と表示される。

 まだ本は残っているのになんで?と思っていると、背後から声がかけられた。


「こっちは終わったけど、ルーイはどう?」


 みぃが魔法整理機を3台引き連れて戻ってきた。あぁ、直ったからゲームは終わりって事だったのかな?


「お疲れ様~。こっちはあと、この1棚だけだよ!」


「どんなスピードでやったら、あの量を戻せるの……。じゃあ、最後の棚は魔法整理機の再起動テストも兼ねて、一緒にやろうか」


 スピルカさん戦法と、ビジョントレーニングのおかげでサクサク進んだ話をすると、みぃは「どんなトレーニングしてるの……」と呆れ顔に。

 全ての鳥ちゃんをこの眼球に収めるには、目の筋肉も大事なんだぞぅ?


 みぃが3台の魔法整理機に手をかざすと、機械たちは返却棚に近づき、本がふわふわと吸い寄せられて箱に収まっていく。

 後ろから追いかけてみると、貸出棚の下段が光り、機械が止まる。すると本が浮かび上がり、隙間に収まると、光がすっと消えた。


「ちゃんと直ったみたいでよかった」


「さすが、みぃ!全部書き直したの?」


「【魔力転写術式エンチャント・インスクリプション】で直したわ、そのあとちょっと新しいスキルも使ってみたけど、一度でも転写すれば問題なく使えることがわかったかな」


 おぉ、新しいスキルも試せたのはすごい!

 ちょうど、すべての返却本を戻し終わったタイミングで、スピルカさんが戻ってきた。


「お二人とも、進みは……っ!す、すごい……もうどちらも終わってる?!やはり女神だから……?神の力でパパっと終わってしまうのも頷けてしまう……神様!ありがとうございます!これからは寝落ちしなければ毎晩祈ります!」


 また天井に向かって祈り始めたが、なんとなく、ほとんど寝落ちして祈りを忘れそうだな……と思いつつ、現実に戻ってきてもらう。


「スピルカさーん、戻っておいでー。頼まれたことは終わったけど、他に手伝うことはあるかな?」


 その声に、スピルカさんがはっとしてこちらを向くと、みぃがインベントリから何かを取り出しはじめた。


「スピルカさん、これ。アイテムなんだけど……1つは転写石インスクリプトストーンっていって、物に一時的に能力を付与できるの。効果は1時間だけ。

 もう1つは魔法インクを使ったクイックスタンプで平たい物に印を押せば、ストーンと同じ効果で動くわ、こっちの時間はさらに短めで30分だけ。何かの理由で装置がまた稼働しなくなった時に、どちらも応急処置には使えると思う」


 みぃが宿で実験していたアイテムの完成品だ。

 彼女は数個の転写石インスクリプトストーンとクイックスタンプをスピルカさんに手渡す。さすが、仕事のできる女!


「お手伝いのみならず、今後の事まで……!本当にありがとうございました!」


 感謝の言葉とともに、ピコンという音が鳴り、画面に表示が浮かび上がる。



 《お手伝いクエスト:『図書館司書見習いのサポート』をクリアしました》

 《報酬として2000Rを入手しました》

 《称号【《気づきの探求者》】によりスピルカとの好感度が上がりました》

 《スピルカとの好感度が上がったことにより、未開放エリアへの移動が可能になりました》




 初めてアイテムや報酬金以外の表示が出たな?未開放エリアってなんだろ?と少し疑問に思っていると、スピルカさんが続けて口を開いた。


「あの、よかったら私の仕事部屋でお茶にしませんか?お手伝いもですが、ドライルーナベリーのお礼も兼ねて!あのくそg……子供たちの親御さんからお詫びのクッキーをいただいてまして」


 クソガキと言いかけ、慌てて訂正するスピルカさんに苦笑しつつ、みぃを見ると「いいんじゃない?」と言うかのように頷いたので、お茶をいただくことにした。



 図書館の奥、スタッフ専用の通路を通ってスピルカさんの仕事部屋へ向かう。未開放エリアって、こういうことかぁ。

 部屋は、仕事部屋というよりも少し小さめの研究室のような雰囲気。棚には隙間があれば本が差し込まれていて、机や床にも本が溢れていた。


「ちょっと、いや……すごく散らかっててすみません!そこのソファで待っていてください。あ、気になった本があれば読んでも大丈夫です!研究用の本ばかりなので、もしかしたらつまらないかもしれませんが……」


「……この本、ちょっと気になる。日記……?」


 みぃが手に取ったのは、古びた装丁に銀の模様が浮かぶ、どこか幻想的な雰囲気を持つ本だったが、鍵がかかっているようで開くことができない。


「私も最初、日記かなって思ったんです。寄付された本の中に紛れていて……よければ、差し上げましょうか?」


 そう言いながら、クッキーと温かいお茶をトレーに乗せて、スピルカさんが戻ってきた。


「大切な研究資料じゃないの?」


「その鍵、誰も開けることができなくて。試しに破壊してみようにも、プロテクトが掛かっていて動かないんですよ。みぃさんなら錬金術で開けられるかもしれませんし……鍵が開いた際には!ぜひ!内容を教えてくださいね!」


 テーブルにトレーを置きながら、最後の方はぐぐいとみぃに体ごと前へのめり出す様に近寄っていく。


「スピルカさんは、本がすごく好きなんだね」


 みぃがソファに埋まりそうになるほど、スピルカさんが前のめりだったので、話題を移すことにする。


「はい!そりゃもう!私、司書を目指しているのは……本が好きだからっていうのもあるけど、実は小さいころ、体が弱くて外で遊べなかったんです。だから、本だけが友達でした」


 彼女はお茶を2人の前に差し出しながら、静かに語り始めた。


「あ、今では問題なくあのような筋肉仕事もできますけどね!でも、学校に入った頃は“本の虫”なんてバカにされたこともあって……。そのバカにしてきた子は絵がついてる本は好きだけど、文字だらけは嫌いだったみたいで。


 “自分に合う本の見つけ方”を知らないだけで、文字だらけの本が悪いわけじゃないんですよ。だから、本って素晴らしいものなんだって、いろんな人に知ってほしくて、今はこうして見習いをやってます」


 彼女の声は穏やかで、少し照れくさそうだった。


「うん、わかる。本って、世界を広げてくれるよね」


 温かいお茶を飲み、スピルカさんの話を聞いて心が温かくなるのを感じた。

 部屋の空気はすっかり柔らかくなったように、心と体が解れていった。

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みぃ:「え、誰が得するの?」


私だよ!


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