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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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37羽目:魔法スゴイ!ファンタジースゴイ!

 《地上都市北部 魔法都市エルディア》に到着。


 中央ファウストや西部ブルンヴァルトのように、ここエルディアも堅牢な城壁に囲まれていた。しかし、空を見上げれば、淡い光を放つ魔法紋が都市の上空に浮かび、ゆっくりと回転している。まるで空そのものが巨大な魔法陣になっているかのような光景に、思わず息を呑んだ。


 都市の中心には、ひときわ高くそびえる塔がある。魔導士ギルドの本拠地であり、街の象徴でもあるその塔から、空に浮かぶ光の紋章が放たれていた。


「ファンタジー!ソラ!マジーック!スゴーイ!」


 興奮のあまり、言葉を覚えたばかりのオウムのようにカタコトで叫ぶ。その隣を歩いていたみぃは苦笑しながら頷いた。


「魔法都市って言われるだけあるよね。いつ見てもこの空の魔法陣には圧倒されるよ」


 まず都市のクリスタルに登録を済ませ、目的地である《中央魔法図書館》へと向かった。風の導きはしっかりと続いているみたいだ。

 魔導士ギルドの裏手にそびえる白亜の塔、それが中央魔法図書館だった。大扉をくぐると、そこはまるで別世界だった。


 建物の内部には、床から天井まで届く巨大な書架が幾重にも並び、棚の前を宙に浮かぶ本がゆっくりと移動している。紙の乾いた香りが漂い、たくさんの人がいるにもかかわらず、空間は静寂に包まれていた。

 まるで本が魔法を使って音を吸収しているかのように、聞こえてくるのは、ページをめくる音と、ささやくような会話だけだった。


「み(ぃ!本が!浮いてる!すごいよ!)」


 思わず声を上げそうになったが、慌てて小声で叫ぶように言いうと、みぃはジト目で見てきた。


「小声で大声出すって、器用だね……」


「(図書館ではお静かに、って言うからね!)」


 みぃは小さくため息をつきながら、受付へと向かうと、そこには、落ち着いた雰囲気のベテラン司書が控えていた。


「すみません、“封樹”の本ってご存じですか?」


 司書は首をかしげ、隣に浮かぶ透明な球体に手をかざす。魔力なのか光が走ったが球体は透明のままで、彼女は少し困ったように答えた。


「……申し訳ありません、そのような記録は確認できませんね」


「では、この世界の歴史についての本はどこにありますか?」


 司書が再び浮遊する球体に手をかざすと、魔力の波紋が広がり、内部に文字が浮かび上がった。


「でしたら、あちらの棚を調べてみると、よろしいかと思います」


 示されたのは、図書館の奥にある静かな一角だった。2人がそちらへ向かおうと棚の間を縫って行く。


 すると、別の通路から、人がふらふらと現れた。

 その人物は、両手で頭上まで本を高く積み上げて抱えており、前がまったく見えていない。みぃは道を譲る様に避けたが、上に積み上げた本が今にも崩れそうにグラグラと揺れている。

 すれ違いざま、みぃの頭上に本が落ちそうになるのが見え、咄嗟に彼女の手を引き、体ごと抱きかかえるようにして避けた。


 ドサドサドサ――!


 静かな図書館に、突然の大音が響き渡り、また静寂が戻る。


「はわわ!すみません~!だ、大丈夫ですか?!お怪我は?!」


 本を運んでいた人物は、少しあどけなさの残る顔立ちで少女のような人だった。

 彼女は慌てて駆け寄り、大声で話しかけてくるが、後ろの受付から「図書館ではお静かに!」と言わんばかりに咳払いが聞こえてきた。


 彼女はびくっとしてから声を潜め、今度は小声でみぃに尋ねる。


「(だ、大丈夫ですか?)」


「は、はい。大丈夫です。ルーイ、ありがとう。もう大丈夫だから」


 腕の中からぐいっと体をねじって抜け出すみぃ。

 ゲームの中だからケガはしないだろうけど、体は自然と反応しちゃうもんだねぇ。何かみぃの顔が赤い気がするけど、さっきのバトルの熱がまだ残っているのかな?


 崩れた本の山を一緒にかき集めていると、この図書館の司書見習いだというスピルカさんは何度も頭を下げながら事情を説明してくれた。


「本当にすみません……このエリアの魔法整理機が壊れちゃって、今は手動で戻してるんです。1人じゃ追いつかなくて……」


「大丈夫よ、みんなでやったほうが早いし。魔法整理機って、あそこにあるやつかしら?」


 みぃが指差した先には、紫の魔法陣が描かれた白い長方形の箱が、床から浮かびながら移動し、本をふわふわと戻していた。


「はい……子供が魔法陣の上に魔法油性ペンで落書きしちゃって……。無理に消すと下の術式まで消えちゃうので、閉館後に別の魔法陣を見ながら直してるんです」


 どうやらこの世界の油性ペンも、現実と同じく消えにくいらしい。


 みぃは機械のそばに歩み寄り、じっと観察を始めた。鑑定スキルで術式を解析しているのだろう。しばらくして、彼女は戻ってきた。


「解析したら、錬金術で直せるみたい。私がやってみようか?」


「じゃ、その間うちは本の整理手伝うよ~」


 2人が優しく声をかけると、彼女はぱっと顔を明るくした。


「えっ、ほんとですか!?助かります~!女神様が2人もここにいたぁああ!神様ぁぁあ、ありがとうございます!もう天に足を向けて寝られませぇん!」


 そう小声で叫ぶと、スピルカさんは天井に向かって両手を胸の前で組み、祈りを捧げ始めた。

 うん……天に足を向けて寝るってどういう寝相なんだろ?逆立ち寝?大変アクロバティックでいい運動になりそうな寝相だね。


 ピコン。と音がした瞬間、画面にメッセージが表示され、2人で顔を見合わせて頷いた。



 ――《お手伝いクエスト:『図書館司書見習いのサポート』を開始しますか?》

 

スタンプ、ブクマ、★をポチっとしていただくとスピルカさんの逆立ち寝が見れるかもしれません!


スピルカ:「フン!ぬっ!うんんんん!!むりぃ!!」


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