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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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36/77

34羽目:異論は認めない(キリッ

 ヴェルさんから「次の記憶は、知の眠る場所にある」と告げられた直後、『精霊の導き』の効果が静かに消え、風がふたりの頬を撫でていった。


 登録の時点でYESってことなんだろうけど、こういうクエストの始まり方もあるのね。

 改めて、システムウィンドウを開いて確認する。


 《クエスト:『七つの封樹と精霊王の記憶』【2/7】》

 《目的:知の眠る場所へ向かえ》


 うーんと、思考を巡らせる。知、勉強、記録……学校?研究所?

 すると、みぃがぽつりとつぶやく。


「知の眠る場所って……王都の図書館じゃないかな?」


「王都?ファウストが王都じゃないの?」


 みぃによると、王都エルディアは、ファウストから北に位置する魔法都市の事らしい。

 魔術の研究と記録が集まるこの都市には、地上世界のあらゆる書物が収められた巨大な図書館があるという。他の街にも図書館はあるが、エルディアほどの規模ではなく、せいぜい地区の図書館程度みたい。


 インターネットで探せない調べものをしたいときは図書館に限るよね!

 ヴェルさんも同行したいようだが、妖精は狙われやすい存在。多くの妖精や精霊たちは、森の奥でひっそりと暮らしていると教えてくれた。



「うーん……狙われない方法かぁ……。安全に見守る……見守りカメラ……?あ、森識鑑定鏡(バイオスコープ)みたいに、スコープ越しに導くとかは?」


 その提案に、ヴェルさんは「それだ!」と言わんばかりに手をポンと打ち指さした。


「確かに、あの方法ならヴェルさんは安全な森でルミエルさんと一緒に居たまま、私たちを導けるわね。眼鏡タイプにすればずっと装備していられるし」


 みぃはヴェルさんの風の力の一部を紋章に込め、レンズに封じることができた。

 どうやって力を借りるのか気になって見ていると、ヴェルさんは髪の毛のような細い繊維を一本渡し、みぃがそれを紋章に編み込んだ。

 ……なんというか、ちょっと藁人形っぽい雰囲気あるね、その方法。


 【風導の瞳(ゼフィールアイ)】SS

 カテゴリー:アクセサリー

 装備Lv:なし

 スキル:なし

 効果:風の妖精の視界を借りることで、目に見えぬ“導き”を視ることができる片眼鏡。

 ※戦闘時に『風の導き』の加護が付く。風属性魔法が強化される。


 このアイテムは壊れないらしいが、タンク役としてはやっぱりちょっと不安。それに、風魔法ならみぃが風スクロールを使っても加護が発動するらしい……ということで、この片眼鏡はみぃが装備することになった。


「……あれ?そういえば、耐久値があるアイテムと、ないアイテムって、どう違うの?盾も進化前は耐久値あったのに、進化したらなくなってたの忘れてた」


「SSランク以上のアイテムには、耐久値が付かないの。だから、SSアイテムを作れる製造職はとっても貴重なのよ」


 なんと……!じゃ、みぃも貴重な製造職の仲間入りだね!


 みぃは風導の瞳(ゼフィールアイ)を装着し、ヴェルさんとの視界の共有も確認できたので、ひとまずヴェルさんを森へ送り届けることにした。

 ヴェルさんはみぃのローブの中にそっと隠れ、風の導きに従って森の奥へと進んでいく。


「……これが風の導きなのね。すごい、風の通り道みたいな線がずっと続いてる」


 森の奥へと進んでいくと、空気がふわりと変わった。

 木漏れ日が金色に揺れ、風が優しく頬を撫でる。まるで歓迎されているような、そんな気配がした。

 すると、どこからともなく黄金の光がふわふわと近づいてきた。


「あ、妖精さ……じゃなくて、ルミエールだから、ルミさんだね!」


 うちが声をかけると、光の精霊は嬉しそうに手を振って応えてくれた。

 みぃのローブからヴェルさんがひょこっと顔を出すと、緑と白の光を纏った妖精がくるくると宙を舞い始め、その様子に周囲の草木も楽しげに揺れる。


「この子が、ルーイにいろんなハーブや実をくれたルミさんだったんだね。ありがとう、ルミさん。あなたのおかげで、新しいスキルを覚えられたの」


 ルミさんはきっと満面の笑みを見せてからみぃにサムズアップした。


「そうだ、ルミさんも導きティーを使ったら、お話できたりするの?」


 うちからの問いに、ルミさんはうんうんと元気よく頷く。

 本当はもっとゆっくり話したいけれど、今は王都へ行かなきゃいけないし、今日は2人の再会と導きティーの確認ができただけで十分かな。


「ならよかった!ずっとゆっくりお話ししたかったんだよね。今は王都に行かなきゃだから、また今度ゆっくりしようね!あ、そうそう」


 インベントリから小さな包みと瓶を取り出して2妖精に見せる。


「アルカナのジャムとスコーン、レシピ通りに作ったらまた美味しくできたんだ!お土産に置いていくから2人で食べてね!」


 ヴェルさんは包みを、ルミさんはジャム瓶を抱え、くるくると宙を舞いながら喜びを爆発させた。

 妖精さんって、甘いものが好きなのかな……?次に来るときは、お茶菓子もちゃんと用意してこようっと。


 北東の方角に向かって森を突き進む2人。

 導きがあるおかげで道に迷うこともなく、途中でモンスターも倒して順調にレベルアップ。ついにLv25に到達した。


「おめ~。守護盾(プロテクト・ウォード)のおかげで、私もダメージ減ってすっごく戦いやすくなったよ」


「うちも新しい盾で前より痛くないし、VITも上がったから【シールドチャージ】の威力もアップ!これでやっと、もうひとつのアクセも装備できる!」


 もう1つ?と首をかしげるみぃに、うちはリーダー戦でドロップしたアイテムを見せた。


 ―――――――――― 

【咆哮の耳飾り】SS

 カテゴリー:アクセサリー

 装備Lv:25

 スキル:なし

 効果:敵からのヘイトを引きつける効果が上昇する。

 ――――――――――


「……なんでルーイは、そうポンポンSS以上だすかな」


「ビギナーズラック?どうせなら鳥運が欲しいんだけどなぁ……って、ひはい!ひはい!(いたい!いたい!)ほっへ(ほっぺ)ひっはらないへ!(引っ張らないで!)


「ど・う・せって言ったのはどの口かなぁ?鳥運は引き続き、地獄の6丁目までマイナスでお願いするわ」


 ヒリヒリと痛むほっぺをさすりながら、咆哮の耳飾りを装着する。

 どの口って言われても、生き物って基本口ひとつだと思うの……。あと鳥運は爆発的プラスで、天国10丁目でお願いします、神様!


 そう心の中で強く念じたそのとき、みぃの背後に伸びる道の向こうから土煙が上がるのが見えた。


「みぃ!なんか来る!」


 すぐに盾を構え、みぃを背後に庇う。

 土煙の中から、徐々にモンスターの姿が現れてきた。


 首が長く、もこもこの羽毛は鮮やかな緑色。

 その巨体を揺らしながら猛スピードで突っ込んでくる姿は、ダチョウそのもの。ただし、遊園地の着ぐるみみたいなもこもこ感がある。

 けれど、アンキロサウルスのようにごつごつとしたしっぽの先には、ハンマーのような硬そうな突起がついていた。


 恐竜っぽいけど、羽毛があるし、走り方も完全にダチョウだから鳥だよね?神様早速ありがとう!!


「……あれは、【オストリュウ】!しっぽで範囲攻撃もしてくるから、近距離と遠距離も気をつけて!」


 あ、恐竜?オストリッチ(ダチョウ)+恐竜でオストリュウなのかな?

 うーん。でも鳥の祖先は恐竜って説もあるし……やっぱり、君は鳥だ!!


「かもーん鳥ちゃぁぁあん!君のヘイト()を受け止めるよぉぉ!!」


「いや、恐竜でしょ?!」


 背後からみぃのツッコミが飛んできたけど、うちの中ではもう鳥に決定しましたので異論は認めません!

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