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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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33/77

31羽目:生まれて飛び出てふわりふわり

 アルカナの核が割れて、突如――光があふれ出し、空気が震えた。


「やば、爆発する系だった?!」


 思わず後ずさる。


「え、何してるの?!」


 みぃも手を止め、目を見開いてこちらを見ていた。

 そして、光の中から声がした。


 ―― 『契約者、確認。記憶の封印、解除を開始しますか?』


 砕けたナッツから響いたその声は、どこか機械的でありながら、不思議と意志を感じさせた。

 床に転がった核の割れ目からは、淡く光る六角形の魔法陣が浮かび上がっている。


「ルーイ……何やったの……?」


 みぃが、じと目でこちらを見てくる。


「えっと……アルカナの核を盾でバキッとしたら、中がピカーッてなりましてね?あとは、まぁご覧のとおり?」


「料理でなんで盾?どうしたら物理攻撃スキルが出てくるのよ……」


「いや、包丁じゃ割れなかったし……割る道具がなければ、力でいけるかなって……?」


 ただナッツを取り出したかっただけなんです……。


 再び、魔法陣が問いかけてくる。


 ―― 『契約者、確認。記憶の封印、解除を開始しますか?』


「みぃ、これどうしたらいいかな……?クエストっぽいけど、YES・NOも出てこないし……」


「この魔法陣を解析したら、何かわかるのかも……」


 みぃはそう言って、インベントリから余っていたスープを取り出して飲み干すと、床に座り込んだ。

 ぶつぶつと呟き、指先で空中に術式を描いていくと、魔法陣が再び反応した。


 ――『記憶の封印、第一段階――解除完了。契約者、2名登録確認。次なる記憶の核を求め、封樹を巡行せよ』


「2人?封樹?え、なにそれ??」


 魔法陣の中心から、光の粒がふわりと舞い上がり、空中に地図のような幻影を描き出し、その上には7つの点が浮かんでいた。


「解析してみたら、『7つの封樹。各地に散らばる精霊王の記憶。全てを集めし時、真なる契約が果たされる』って書いてあったの。契約者を入力する欄があったから、2人の名前を入れたら解除されたみたい」


 ローン契約じゃないなら安心かな……?まぁ、2人で遊べるならいいか。


「この7つの点が記憶の場所ってことだよね?でも2つは黒くて、5つが光ってる……」


「多分、黒いのはもう見つかってるってことじゃないかな。ほら、ここ。私たちが素材集めした森のあたりだし。ただ、場所はわかっても、どうやって実を見つけるか……これ、妖精にもらったんでしょ?」


 2人で悩んでいると、地図の下に浮かぶ核がもぞもぞと動き出し、風とともに殻が舞い上がり、思わず目を閉じる。

 風が収まったのを感じて目を開けると、そこには緑の光に包まれた小さな妖精が浮かんでいた。


 顔は見えないけれど、透明な羽には風のような模様がある。風の妖精さんかな?とりあえず、アルカナの核から……生まれた? アル太郎?いや、アル子……?


 すると、風が吹き抜け、風鈴のようなかすかな音が響いた。


 ――風……よぅせぃ、ヴェル……ディス、アエ……リオン

 ――よろ、し……く、ルーイ……みぃ


 その儚い風の音は、風の妖精の名乗りだった。


「ヴェルディス=アエリオンね。じゃあ、ヴェルさんだね!よろしく!とりあえず、お近づきの印に3人でお茶にしようか?ヴェルさん、甘いもの好きかな?」


 空腹と水分ゲージが半分を切っていたので、先ほど作ったスコーンとアルカナジャムをインベントリから取り出して見せると2人。いや、1人と1妖精の表情がぱっと明るくなった(妖精の顔は光ってて見えないけど、なんとなくわかる)。仲良くなるにはまずは同じ釜の飯を食べないとね!



 フェイリーフで淹れた導きティーと一緒に、スコーンにたっぷりのジャムを塗って頬張る。

 みぃはすでに食べ終えて満足そうにお茶をすすっていて、ヴェルさんは自分の体と同じくらいのスコーンを器用に割って食べている。


「ヴェルさんはまだ食べてるから、あとでお話するとして。みぃの実験、今のところどう?」


「ある程度、成功しやすい素材はわかってきたかな。ガラスや紙みたいに表面が平らなものは成功率が高いけど、加工してない鉱石や宝石で表面が平らでないものはほぼ失敗。見て、これ」


 そう言って、みぃはインベントリから瓶を取り出して見せてくれた。それぞれの瓶の中には粉々になった鉱石の残骸が詰まっていた。


「それと、素材が丈夫であればあるほど効果も高くなるけど、加工済みの宝石や鉱石って高価で手に入りにくいのよね。効果は一時的で控えめだけど、紙の方がコスパはいいかも」


 ヴェルさんがスコーンを美味しそうに頬張る様子を見ながら、ふと思いついたことを口にしてみる。


「……この粉々になったやつ、水分で練って成形して、乾燥させてから焼いたら、平らな素材にできないかな?」


 みぃはアゴに手を当てて、しばらく考え込む。


「陶器みたいにするってことね。それ、いけるかもしれない……やってみる」


 さっそく、みぃは残骸と魔力水をボウルで混ぜ、泥団子のような塊をバットに広げていく。

 乾燥は低温の魔導炉(オーブン)で……と思ったところで、ヴェルさんが口いっぱいにスコーンを含んだまま、リスのようにほっぺたを膨らませながら、みぃの服を引っ張り、自分を指さした。


「乾燥してくれるの?じゃあ、お願いしてもいい?」


 うんうんと頷いたヴェルさんは、空中で指をくるくると回し、風の渦をバットに巻き起こす。

 あっという間に素材が乾燥し、固まった。


 そのまま、なぜか800度まで上がる魔導炉(オーブン)に入れて素焼きする。焼き上がった後も、ヴェルさんが風で冷ましてくれた。本来なら2度だけど、今回は実験だから1度の素焼きで十分。


 みぃがスキルを唱えながら、結果を確認する。


「成功率、上がった……!でも、やっぱり少し表面のデコボコが影響して、成功率は半々ってところかな。ただ、紙よりも効果はいいよ」


「表面のデコボコかぁ……そういえば、グラウスさんはマナスライムの核で蓋みたいなのしてたけど、逆にそれをフィルターみたいにして、上から書き込むってできないの?」


「その発想はなかったわ……。それ、試してみよう。うそ……成功率100%に跳ね上がったんだけど……!」


 みぃが驚きの声を上げた瞬間、彼女の周囲に淡い光の粒が舞い上がった

みぃ:「そういえば、この作品2万PV行ったみたいよ、ルーイのやらかしが2万回も……」

ルーイ:「ほぇー!それはめでたいね!って、やらかしてないわい!」

みぃ:「よくわからず核割ったの誰よ。爆発しなかったからよかったけどさぁ……」

ルーイ:「それに関しては、ごめんちゃい」

みぃ:「お祝いと私へのお詫びにリアルでスコーン2万個作ってね」

ルーイ:「工場か何かかな?そんな食べたら、ふと……。なんでもアリマセン。愛情タップリ籠めさせていただきますので!その紫の瓶はしまおうか?!」

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