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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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26羽目:不器用だけど最高にすごかった

 マルクスさんが固まっている間に、マナスライムの核は10個、無事に集まった。


「マナスライムの消化って、微炭酸みたいな感じだったよ!あと、吸い取る感じが弱設定の掃除機みたいだった!スライムって奥が深いね!」


「……いつ使えるかわからない、スライムトリビアありがとう……」


「マルクスさーん、戻るよー?」


「あ、は、はいぃ……」


 何とか意識を取り戻したマルクスさんと共に工房へと戻った。

 扉を開けると、作業台の前でおじいちゃん……いや、お師匠が、ポーションの調合をしていた。


「おう、おめぇら、思ったより早かったな」


「お師匠が必要なアイテムを持たせてくれたからだよー!ありがとう!あんなすごいアイテムをみんなのために作ってるお師匠って、本当にすごいって改めて思ったよ!」


「本当にすごかったです、精霊の力を術式に書き込むなんて、お師匠様の発想が次元違いでした」


「はんっ!おめぇらのためじゃねぇやい!あと、おめぇらの師匠でもない!かわいいマリーの頼みをすぐに叶えるためだからな!……おら、とっとと直すから待ってろ!」


 そっぽを向いて奥へと歩いていったが、その耳はほんのり赤く染まっていた。


 ……はいはい、ツンデレお師匠、いただきましたー。

「おめぇらのためじゃねぇ!」って言いながら、めちゃくちゃ優しいのバレバレなんですけど!?お師匠は不器用だなぁ。こういう人に限って、自分のことよりも人のこと考えてるんだよねぇ。



「あの……!お師匠様、修復の様子を見学してもよろしいでしょうか?」


 みぃが一歩前に出て、声を上げた。


「だから、ちげぇって言ってんだろ……ふん、勝手にしろ。ただし、てめぇら俺らの邪魔したらタダじゃすまねぇからな。俺ぁ他に用意するもんがあらぁ、マルクスの作業でも見とけ」


 その言葉に、みぃは小さく頷き、真剣な眼差しで工房の奥へと足を踏み入れた。うちも、邪魔にならないようにそっと3人の後ろをついて行った。


 工房の奥で、マルクスさんが修理に必要な作業に取りかかっていた。彼は手を動かしながら、一つひとつの工程を丁寧に説明してくれた。



 マナリーフを乾燥・粉砕し、魔力水で煮詰めて転写液を作る。

 ルミナハーブを刻み、転写液に混ぜて魔力の流れを視認可能に。

 セレスの根をすり潰し、少量を加えて魔力の安定性を高める。

 星鉄を粉末状にし瓶に入れておく、透明石英を研磨してレンズ形状に整える。

 その表面に転写液を均一に塗布し、乾燥させる。

 エーテルモスのゴミを取り除き、細かくほぐす。

 マナスライムの核は薄くスライスし、魔力水に浸しておく。


 

 ――ここまでが下準備。マルクスさんの仕事だった。

 そして、いよいよお師匠の出番だ。


「おめぇらが持ってきたマリーのこの眼鏡は、ただの道具じゃねぇ。魔力を通す『導具』だ。修理には、レンズに魔力を籠める技術が必要になる。……おめぇたちに、それがどれほどのものか、分かるか?」


 お師匠の声は静かに、だが確かに響いた。


「スキルを持たない者がスキルを使えるように、魔力を扱えない者が導具を通して魔力を扱えるようになる。使い方次第で、人を幸せにも、不幸にもできちまう。……俺ぁ、かの戦いのような歴史は繰り返してほしくねぇ。笑顔が守れて、少しでも幸せが作り出せたら、それでいいんだ」


 そう言って、お師匠は静かに息を整え、よく使いこまれた魔力ペンを握りしめ、レンズと向き合った。


 マルクスさんが用意したレンズの上に、魔力ペンで星鉄の粉末を使って術式の回路を丁寧に描いていった。

 エーテルモスを組み込み、魔力を流し込むと、術式がレンズに定着していく。

 お師匠はレンズをそっと持ち上げ、光にかざしながら、慎重に角度を変えて何かを確認している。

 そして、最後に薄くスライスされたマナスライムの核を、静かにレンズの上へと重ねた。


 その瞬間。


 幾何学的な魔法陣の中心から、流れるようにルーン文字が滑り出し、植物の蔓模様がまるで命を得たかのように舞い踊る。深い藍と紫の光が紋様に沿って脈打ち、淡い輝きがレンズ全体を包み込んだ。


 やがて、すべての光が静かにレンズの中へと吸い込まれると、まるで何事もなかったかのように、静寂が戻った。


「……これで術式の封印が完了だ」


 師匠の低く落ち着いた声が、工房の空気を締めくくった。

 マルクスさんがレンズを眼鏡のフレームにはめ込み、修理は無事に完了した。


「おら、見世物は終わりだ!とっとと持って帰ってやんな!グズグズしてマリーをさらに悲しませたらぶっ飛ばすぞ!」


 そう言いながらも、どこか優しさの滲む声だった。


 修復された眼鏡を受け取り、届ければ、これでマリーさんの依頼は果たせる。

 けれど、後ろからずっとみぃを見ていたけど、ただ依頼をこなして帰るだけなんてできないんだよねぇ。


 一歩、前に出る。

 みぃの隣に立ち、その横顔をそっと見つめる。

 彼女もこちらに顔を向け、静かに、でも確かに頷いた。


 普段はあまり自分の気持ちを表に出さないみぃが、はっきりと目で「これをやりたい」と伝えてきたからだ。


「あの、お師匠様!今の錬金術を教えてもらうことはできませんか?雑用でもなんでもします!この技術を教えてほしいんです!」


「……はんっ、俺の技が習いたいだと?笑わせんな。そんなもん、口で教えてどうにかなるもんじゃねぇんだよ!」


 お師匠は腕を組み、じろりとみぃを見下ろすように睨みつけた。

ルーイ:「(みぃ、ふぁいとー!いっぱぁーつ!お師匠!もっとにこやかに!)」


後ろで応援するルーイ。

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