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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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17羽目:知ってるけど知らない天井だ

 目が覚めると、そこにはいつもの見慣れた自室の白い天井があった。

 何か夢の中で、シーちゃんと郵便ハトさんがうちを巡って三角関係に……「うちのために争わないで!」って叫んでたら、エッグケッコーが間に割って入って四角関係になった気がする。とても幸せだった、はふん。


 朝はいつも通り起床したが、夜更かしが少しだけ響いているため、朝食は軽めに済ませることにした。

 日課になりつつあるストレッチをして、朝食の準備をする。トーストに目玉焼きをのせて、インスタントコーヒーをお湯で溶かしただけの、簡単ごはんをサッと食べながら箱あるについて調べものをする。


 洗濯物は乾燥までオートセット済み、掃除機ロボットも稼働ヨシ!では、お昼ごはんまでレッツ・ゲーム!


 ぴよイン。




 瞼を閉じて開くと、白い天井がスッと木目の天井に切り替わる。

 知らない天井だー。いや、知ってるけどさ?


 昨夜は村の宿に泊まったからだ。箱あるでは、ログアウトしてもアバターはその場に残るから、野外で寝ているとNPCの追い剥ぎに襲われることがあるんだって。何それ、こわ……。セーフティーゾーンにできるテントを使えば問題はないけど、金額が高いのであまり使う人はいないみたい。なので、みんな大体お金を払って宿に泊まるか、ギルドハウスの個室で休むのが普通らしい。

 ギルドには転送で戻れるけど、この小さな村には転送クリスタルが設置されていないため、今回は宿屋一択だった。


 部屋は1人ずつ取るつもりだったけど、1泊かと思いきや新世界人は1日じゃ起きないだろ?と言われて気が付いた。現実だと一晩だが、箱あるでは数日になるのでその分の宿代が足りず、みぃに借りようとしたら「一緒の部屋で寝てログアウトすればいいじゃない、ダブルで3日分お願いします」となった。


 ツインじゃなくてダブルなのね。

 まぁ、うちに泊まるときも、君よく人のベッドに入ってくるよね「そこに天然湯たんぽがあるから」って、どうも冬の必需品湯たんぽです。

 夏でも入ってくるけど……「クーラー寒いからって」、でも切るのはダメらしい。

 リアルすぎてベッドが静かに沈む感覚、すぐ隣にいる人の体温がゲームの中というのを忘れさせるほどだったなぁ。


 そうだ、みぃがログインする前に設定をいじっておこう。寝ているみぃに、イタズラでほっぺをつねろうとしたら、見えない壁に阻まれて設定の事を思い出したからだ。

 異性だけじゃなく、同性も初期設定では接触不可になっているのね。パーティーを組んでいれば性別関係なく接触できるみたいけど。


 

 とりあえず、同性の接触は「可」に設定しておく。名前は発表時「匿名」に。ん? 公式動画に使われる可能性もあるのね。これは一応「要事前確認」にしておこう。

 画面をスクロールして、ポチポチと設定のトグルをいじっている内に、隣で眠っていたみぃのアバターがゆっくりと体を起こした。

 重要っぽい部分はもう設定したし、あとはもういいかな?


「おはよ~で、いいのかな?何か変な感じだね」


 現実世界でも朝だが、箱ある内では数日経った太陽がまだ明ける前の薄暗い時間帯だった。


「うん、おはよ。ふふっ、言われてみれば変な感じだね」


 2人でベットの上、笑いあった。


「昨日はリアルが遅くてすぐログアウトしたけど、ルーイの空腹度と給水度低いんじゃない?食堂で朝ごはん食べようか」


 ステータス画面を開いて見てみると、お皿と水のアイコンにビックリマークがついていたのでタップしてみるとバーが2つ表示されどちらも3分の1を切っていた。

 この2つが4分の1以下になると行動にマイナス補正のデバフがかかるんだとか、本当にリアルそっくりだなぁ、腹が減っては戦ができぬってね!


 2人で食堂に向かうと、昨夜チェックインの対応をしてくれたおばちゃんが、オープンキッチンで忙しなく立ち働いていた。


「あら、アンタたち起きたのね!よく眠れたかい?好きなところに座ってな、朝ごはんすぐ出すから!ウチは村一番のゴハン処って評判なんだ、楽しみにしてな!」


「おはようございます、はい、ゆっくり休めました」


「すごいぐっすりだった!ごはん楽しみー!」


 恰幅の良いおばちゃんは、こちらの返事に満足そうに笑いながら、手際よく朝食の準備に取りかかってくれた。

 暖炉のそばのテーブルに腰を下ろすと、ほどなくして木の皿に盛られた朝食と、木のコップに注がれた牛乳のような白い飲み物が運ばれてきた。


 皿の上には、香ばしく焼かれた目玉焼き、トマトソースでじっくり煮込まれた豆、ライ麦のような素朴なパン、そして存在感たっぷりの大きなソーセージ。


「「いただきます」」


 うちはガブリとソーセージにかぶりつくと、肉汁がジュワッとあふれ出し、口いっぱいに旨味が広がった。

 豆は中までほくほくで、トマトの酸味と甘みが絶妙に染み込んでいる。目玉焼きは縁がカリッと香ばしく、黄身はとろりと半熟。ちぎったパンでそっとすくって食べ、最後にドリンクをひと口。常温の牛乳だがほんのり甘くて、心までほっと落ち着く。


「ん~~~~!!おいっしい!」


「ほんと、村一番って言われるのがよくわかるね」


「アハハ!いい食べっぷりだねぇ!おかわりもあるから、足りなかったら遠慮なく言うんだよ!」


 豪快な笑い声が食堂に響き渡る。

 満腹まで食べるとバーは満タンに回復したのでみぃと2人でマップを見ながら今日の計画を話し合う。


「今日はこの村を抜けたところの森でレベル上げしてからブルンヴァルトに行こう、リアル時間でお昼あたりにはたどり着ける感じかな。午後からの予定はまたお互い連絡して決めよ」


「おっけぃ!」


 敬礼の様に右手を上げる。


 熱のこもった食堂を横切り、宿の扉を開けた瞬間、ひんやりとした朝の空気がふわりと身体を撫でていく。朝露を含んだ風は、どこか青くさくて、懐かしい匂いがした。

 その空気を肺いっぱいに吸い込むと、胸の奥がすっと軽くなる。畑の向こう、地平線の端から顔を出した太陽が、ゆっくりと世界を温かな黄金色に染めていた。

 もう味わえないと思っていた静かで、優しくて、始まりの匂いがする朝だった。


 よし、お天道様も顔を出したことだし。今日も一日、張り切っていきますか!鳥ちゃん達まっててねぇー!

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