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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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9羽目:愉快な仲間たち

 盾、シールドってことは何か剣士とか騎士とかそういうやつになるのかな?

 みぃに盾職はどこの職業ギルド?と聞くために顔を向けたのと同じ時、ギルドハウスのドアが勢いよく開いた。


「まっすたぁ~!ギルド板みたけど、新しい女の子来るんやて?!はよぉ紹介してぇ~!」


 ドアが勢いよく開いたかと思えば、陽光すら跳ね返しそうなキラキラエフェクトとともに、ひとりの青年が颯爽と現れた。日焼けした肌に爽やかな笑顔、まるで運動部のエースがそのままゲームの世界に飛び込んできたような。

 ゲームで美化補正されていると言えどもイケてる人はどうやっても輝いちゃうのか。

 しかし、関西弁なのに何故かすごくメキシカンな恰好をしているのね?


 大きなソンブレロをかぶり、色鮮やかなポンチョをひらりと翻し、その下には闘牛士のような黒のスーツがきっちりと着込まれているという謎の本気スタイル。横目でみぃを見るとやれやれと言いたげに小さくため息をつきながら、そっと首を横に振っていた。


「あ、みぃちゃぁん!今日もめっちゃべっぴんさんやなぁ!ため息ついたら幸せ逃げてまうで!でもオレにお・ま・か・せ!すべて捕まえといたる!お礼はオレの体で!」


 訂正、爽やかイケメンじゃなくてただのメキシカンチャラ男だったこの人。あと、お礼なのに何故自分の体を差し出すのだろうか。


「あー!君が新入りの子やなぁ?ごっつかわええやん!初めましてぇ、オレはジョン・M・イヌリウスいいます!人間族(ヒューマン)吟遊詩人(バード)やってんねん、これからもよろしゅう!気軽にジョンきゅんって呼んでほしいなぁ!〆のちゅっ!」

 自己紹介の最後に投げキスで〆られた。鍋かな?それならお米がいいなぁ、でもうどんも捨てがたい。


「は、初めましてルーイです、先ほどギルドに加入しました!同じく人間族の鳥好きで、ついさっきタンクを目指すことにしました。よろしくお願いします!」


 鍋の〆に思考を取られていて少し挨拶のタイミングが遅れてしまった。


「鳥が好きなんやなぁ~、そしてかわい子ちゃんが盾職!そんなルーイちゃんをオレが守ったる!!だから安心してオレの腕の中にいつでも飛び込んできてええからな?!きゃもぉ~ん!」


「ルーイ……その駄犬はブロックして速攻通報していいわよ、あと初期設定で異性からの接触は不可になってるから、そのままにしなさいね」


 みぃがものすごい汚らわしいモノを見るかのような目つきで見下してる!それは多分仲間に向けてはいけない類の目つきだと思います!

 一応こんな人でも仲間のはずだしさ!仲間、だよね……?

 というか、初期設定にそういうのあるのか、ゲーム内でもセクハラが~とかニュースで流れていたこともあったからそういう設定も必要になるのね。


 他にもいろいろありそうだし、同性の接触とかもあるのかな?あとで初期設定の所見ておこうかな。みぃといるとリアルみたいに無自覚で呼ぶ際、腕を突いたり、触れたりしちゃうだろうからゲーム内でいきなりそれが拒否されたら悲しい。


「ブロックと通報だけはやめたってぇー!しかし、みぃちゃんのその冷たい刺さるような目線もたまらへんわぁ!ンンッゾクゾクしてまぅぅ」


 さらに訂正しよう、この人はただのドMなメキシカンチャラ男だ、きっともうここがピリオドのはず。っていうか、ジョンだし、Mだし、イヌだからみんな駄犬って呼んでるのかな?


「そこまでにしておけ、ゲーマスAIにアカウント停止されても知らんぞ……。すまん、ルーイちゃん、こんなやつだがゲーム内でのプレイヤースキルや知識は確かだから、ちょっと色々特殊なただのド変態なんだ」


「ルーイちゃん、ごめんなさいねぇ。ジョンは呼吸するようにナンパするのがクセで、さらにアウトゾーン寄りにやたらと反復横跳びしたがるけど、ただのドM犬なのよ……。何かあったら私に言ってね?お姉さんがしつけ直しておくから、うふふ」


 ギルマスイケメン!そしてまりんお姉さま……!2人共イケメン美女で頼りにもなるとか……最高かな?

 そして二人とも、サラッとディスってますね?水の流れのようにサラッとしすぎて、うちじゃなかったら見逃しちゃうね。

 というか、しつけって聞いてから何かジョンさんが部屋の隅で「いやや……それだけは……あれはアカン……」ってぶつぶつ言いながら膝抱えて震えてるんだけど、どうしたんだろ?ドMだったら好物ワードなんじゃないかな?

 あれ、ギルマスも若干青ざめてるけどさっき高速でゴロゴロしすぎて今頃になって気持ち悪くなったのかも?


「……ちょっと!アンタたち!そろそろ私にも自己紹介させなさいよ!」


 突然の声に驚いてあたりを見回すと、ジョンさんの背後から「ここよ!」と声がして振り返る。そこには、背中にまばゆい光をまとった小さな女の子がいた。


「あら、ツバキちゃんじゃない。いつ戻ってきたの?もっと早く声かけてくれればよかったのに」


「最初からこの駄犬と一緒にいたわよ!小さいから見えなかっただけでしょ!ムキーッ!」


 ぷんすか怒りながら、腕をジタバタと振り回すその姿は、どこか微笑ましい。透き通る羽を背に、魔力の粒子をまとったその少女は、黒のミディアムボブに整った顔立ち、冷ややかな光を宿す瞳が印象的だった。巫女装束を身にまといながらも、どこか気品と艶を感じさせる。

 羽にキラキラとしたエフェクト……さすがファンタジーの世界!怒っていても小さいと可愛く見えちゃうなぁ。あれ?ジョンさんが最初に光ってたのって、もしかしてこの子のせい?


「アンタが新人の子ね。私はツバキ!妖精族フェアリーの妖精で、職業は踊り子ダンサー。ゲーム初心者らしいけど、恥をかきたくなければ何でもすぐに聞きなさい。特別に“ツバキ先輩”って呼ばせてあげるわ!」


「ツバキ先輩!ルーイです!いっぱい質問しちゃうかもしれませんが、よろしくお願いします!」


「ふ、ふんっ!いい返事じゃない。も、もちろんよ!先輩として、この世界のイロハを徹底的に叩き込んであげるんだから、覚悟しなさい!」


 わーい!頼りになる人がまた一人増えたー!

 ツバキ先輩はちょっとツンツンしてるけど、なんだかんだ面倒見が良さそうで、まるでお姉ちゃんになりたがってる子みたいで微笑ましい。三影さんやまりんさんも優しくて頼りになるし、みんな本当にいい人たちばかりだなぁ。

 みぃだけに頼りっぱなしじゃ負担かけちゃうし、こうして相談できる人が増えるのは本当に助かる。


「ツバキがいっちゃん新人やったから、後輩ができてうれしいんちゃう?」


「はぁ?!べ、べつに嬉しくなんてないわよ!ゲームマナー的にもギルドの迷惑になったら困るから教えるだけよ!ニマニマしてるんじゃないわよ、この駄犬が!」


 ツバキ先輩にお尻を蹴られて、悦んでいるジョンさん。見なかった事にしよう。


「そこも、私が()()()()ルーイに教えておくから、ツバキは何もしなくてもいいわよ?」


「あら、生産職メインのみぃには荷が重いんじゃない?」


「ツバキも後方支援だから、大差ないでしょ?」


 お互いに笑顔だけど、目が笑ってないよ!何か、2人共闘志を燃やして張り合おうとしていません?三影さんヘルプ!って……何か影が薄くなって壁と一体化してる。ならば、まりんさん助けて!彼女を見つけると、少し離れた場所から、にこにこと満面の笑みでこちらを眺めていた。


「ギルドが賑やかになったわねぇ~うふふ」


 そう呟いた、まりんさんの表情は穏やかで、どこか楽しげだった。

 まるで、騒がしくも愛おしい日常を宝物のように見つめているように。


 とりあえず!誰かこのバチバチを止めて!へるぷっ!

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