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●第四話 タイヤを作ろう!

 さっそく、俺は壺に溜めておいたタンポポ製ゴムを火で熱し、マイすり鉢で砕いて粉状にした硫黄を混ぜてみた。


「うわ、臭っ」


 卵の腐った臭いが壺から臭ってくる。


「うう~スティンカー! ヴィンデンスアンゼ!」


 家の中にいたニースも我慢ならなかったようで、奥から出てきて文句を言った。

 すると、ビュウッと風が吹いて土間の空気が入れ替わった。


「おお! ひょっとして、ニース、それは魔法かい?」


「えう?」


「もう一回、ヒュッとやって」


「ヤー。ヴィンデンスアンゼ」


 魔法を唱えたのだろう。再び風が起きた。


「ええと、ヴィンデンスアンゼ!」


 俺も発音を真似てみたが、風は起きなかった。


「オンドゥインチインガレテテコントラクチマジンアンジインジゴルジヴァジドゥセーゲ」


 肩をすくめて何事か言うニースだが、解読不能だ。


「その子は、エルフなのかい?」


「ああ、ええ」


 リックが聞くと、サッとニースが奥へ引っ込んでしまった。


「ニース~、風だけ頼む」


「ヴィンデンスアンゼ!」


 空気の入れ替えをやってもらいつつ、ゴムを棒でかき混ぜる。


「お、硬くなった。これなら」


 板の上に、この日のために用意しておいた真っ直ぐの棒を置き、そこにゴムを塗りたくっていく。


「シンくん、それは何をやっているんだい?」


「タイヤのチューブを作ろうとしてるんです。しまった、硫黄を入れすぎたな。これじゃ硬すぎる。それに油を塗っておかないときれいに剥がれないな」


 もう一度、別のゴムを使い、今度は硫黄の分量を半分にして柔らかいゴムで筒状のものをつくり、何度か試行錯誤して、空気を吹き込んだチューブの輪を作った。


「これを、今度はもっと硬めにして大きさを合わせてと」


 着火の魔法で溶かしたりしながら、外側のタイヤも作り、苦労して車輪に取り付けた。

 ニースの風魔法がなかったら、絶対、あとで母さんに叱られていたところだ。


「できた!」


 色が黒でないのが微妙だが、空気チューブ入りゴムタイヤを車輪に装着できた。

 触ってみるとかなり丈夫で、ちょっとやそっとでは外れない感じだ。


「よし、じゃあ、それを荷車に取り付けてみよう!」


 ここまでくればリックもタイヤが何をするためのものか、もうわかったようだ。


「おお、すごいよ、シンくん! 揺れが全然ない!」


 俺から言わせればまだ全然揺れているのだが、前よりはマシになったかな。


「サスペンションもやっぱり欲しいなぁ」


 今度、ブランデンの街の方に頼んでみるか。ドワーフなら作れる気がする。


「これで車輪が壊れにくくなったし、割れ物も運べそうだね! 一度に運べる荷も増えるな。ありがとう、シンくん」


「いえいえ。お代は車輪一つで大銅貨五枚でどうですか」


 日本円でだいたい五万円だ。


「うん、それでいいよ! 決まりだ!」


「それと、この馬の、つないである器具ですけど……」


「ああ、『くびき』と言うんだよ。これがどうかしたかい?」


 木の横棒を馬の首に引っかけるようにして荷車を引かせているが、これだと硬いし、馬が押しにくいと思うんだよな。さっきから荷車を引かせて動かすのを見ていても、全然安定していなかった。


「ここにもゴムを使ってみませんか。これじゃ馬が上手く力を出せませんよ」


「ああ、なるほど。そいつはいいアイデアだ! シンくん、作ってくれるかい?」


「もちろん。あと、ベルト、余ってませんか」


「あるよ!」


 木を削って湾曲カーブさせ、馬の胸の形に合わせる。そこの裏にゴムを貼り付けてみた。こすれても馬が痛いだろうから、麻の布も張り付けて端を釘で固定しておく。

 さらにベルトを通して外れないよう固定。


 何度か引かせてみたが、最初より馬が目に見えて荷車を引きやすくなった。


「おお、馬力ばりきが上がったぞ! シンくん! 加速が上がった!」


 馬力か。そういえば、これって、馬に鋤を引かせてトラクターみたいにもできそうだな。


「リックさん、後ろのもう一頭、売るつもりなら買いますけど」


「おお、じゃ、銀貨12枚のところだけど、シンくんはお得意様だからね。二割引の仕入れ値そのまま、銀貨10枚でいいよ!」


 馬は1000ゴルダか。日本円で十万円くらいかな。


「じゃ、金貨一枚で」


「おお、ちょうどだね。毎度あり!」


 名前は栗毛だけどシルバーにしておこう。ハイヨー! シルバー!

 馬に乗って遊ぶのもいいが、荷運びとトラクター用だ。


「じゃ、こんなところかな」


「そうですね」


「シンくん、今度は何を買い付けてこようか」


「そうだなぁ。あ、そうだ、羅針盤と磁石を探してきてください」


「はは、またまた知らない名前が出てきたぞ! シンくん、それはどんなものなんだい?」


「羅針盤は常に同じ方向を指す、船に乗せたり、地図を見るための道具ですよ」


「魔道具かい? それだと高すぎておいらには仕入れは無理だよ」


「いえ、魔法とは無関係ですよ。それと、磁石、これは羅針盤の針と同じものなんですが、黒い鉄で砂鉄――黒いヒゲみたいなのがいっぱいくっつくんです。べたべたじゃなくて、砂にまぶそうが何をしようが、何度もくっつきます」


「ふうん。そうか、不思議な石だね。わかった。他にも見つけられなかったジャガイモやトマトと一緒に、また探してみるよ」

「どうも。他にも良さそうな種や珍しい物や便利な物があればなんでも買い付けてください。金はありますよ」


「わかった! 良い物を期待しててくれよな!」


 期待させてもらおう。

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