66 クールダウン
「ガァアアア!」
ファナが地面を叩きつけて地割れを起こしてエネルギーが周囲に発生、衝撃波が俺とルリルにも襲い来る。
「きゅう! きゅ!」
その衝撃をステップで避けながら近づいてケルベロススケルトンにルリルは蹴りの一撃を浴びせる。
すごい加速が掛かってるけど……見切れない領域じゃ無い。
「良いぞ……もっと畳みかけるぞ!」
「きゅうううううう!」
「5、6……いけぇえええ!」
「きゅうううう!」
魔弾の射手の条件を満たし、ルリルから大きな魔弾がケルベロススケルトンに向かって放たれる。
ガシュ! っとケルベロススケルトンの頭の一つに魔弾は命中して一つが消し飛ぶ。
「ガァアアアア!」
「ぎゅふ――」
邪魔をするなとばかりにファナが突然角度を変えて猛突進してルリルの腹が殴られ衝撃が走る。
うぐ……俺も痛い。
「ふぎゅ……ふ!」
ぼーんっと吹っ飛んだ俺とルリルだけど上手く着地をしてケルベロススケルトンへと突撃する。
「す、すげぇ……あいつ、あんなに強い魔物を使役してやがるのか」
「きゅううう!」
ズバァ! っとケルベロススケルトンの首を一つ、ルリルが噛みついて斬首した。
「ガアアアアア!」
で、敵味方区別が付いていないファナが俺とルリルを巻き添えに力の限り殴りかかってくる。
「んっきゅ」
そのファナの猛攻をルリルは前足で器用にファナを逸らしてケルベロススケルトンへと殴らせて大きく飛んで下がった。
「ォオオオ――」
ケルベロススケルトンが口から突然黒い炎をまき散らす。
「きゅう」
「ガアアア!」
ルリルとファナは示し合わせたように炎を飛び上がって壁や天井を足場にしてケルベロススケルトンに突撃、ルリルはスタンピングで胴体を踏みつけ、ファナは顔面を殴りつけた。
ビシィ! っと骨が砕ける音が響き渡り残ったケルベロススケルトンは粉々に砕けて頭だけが無造作に転がる。
「ガァアア!」
次はお前だとばかりにファナが俺とルリルに向かって襲いかかってきた。
戦闘意識に囚われたファナの姿は普段のぼんやりとしている姿とはまるで違っていて……なんだろう。心が痛い。
俺は意識してファナの首に掛けてある腕輪を締め上げる。
「グゥウ……ガ、グググググ」
首が締め上げられ、仰け反るファナがわなわなと腕輪に手を伸ばそうとして……伸ばさないとばかりに震えて動きが止まった。
「今だルリル!」
「きゅう!」
俺の指示に従い、ルリルは地面を踏みしめて土煙を起こして一目散にその場から離脱した。
「グウウウウ……」
腕輪を傷つけまいと立ち尽くすファナの姿は……うれしいような複雑な気持ちになった。
約束は……守ってくれたんだな。
もっと強くなりたい。
ライムに復讐するだけじゃなく、ファナの攻撃を掻い潜りながらこうして戦えるように。
「きゅう?」
「よくやったな」
「きゅー!」
離脱して距離を取った所でルリルの頭を撫でる。お前の足のお陰で助かった。
本当、よくやってくれてるよ。
「腹、大丈夫か?」
「きゅう!」
大丈夫ですよこんなの! ほら、もう全く傷なんて無いでしょ! っとばかりにルリルがお腹を見せてポンポンと殴られた所を前足で叩く
。
頑丈なんだな。ファナの攻撃ってかなり攻撃力あるってのに……下手すりゃ内蔵やられてそうで怖いが……痛覚を共有している俺に痛みが無いので大丈夫……なのかな?
「念のためヒーリングサークル」
ルリルを中心にヒーリングサークルを発生させて手当を行う。
「きゅうううううう!」
ありがたいですご主人様! っと感じでルリルが横に寝っ転がって俺に笑顔で鳴く。
お前は本当……大げさだな。
最近は何言ってるかなんとなく分かってきたような気がするけど、気のせいであると思いたい。
やがてファナがクールダウンが終わったのか、ゆっくりとこっちに戻ってきた。
「アキヒコとルリル、私の戦闘に混ざってきたわよね。無茶するわね」
「そりゃそっちが無茶してたらな」
「助けなくて良いのに」
「助けだけじゃない、俺は早く強くなりたいんでね。経験値が良さそうな相手は頂くんだよ」
俺の返事にファナは普段通りの眠そうな顔で耳だけピクピクと動かして居た。
それはどんな表情なんだ?
「……そういう事にしておくわ」
「あいよ」
「まあ、アキヒコとルリルが蛮勇なのはこの際無視して」
ファナがまだ休憩中の囚人連中を遠目で見つめる。
「この程度で怖じ気づいて……もっと強いのが来たらどうするのよ。ただ……今夜は数は多いけど大物が中々いないみたいね」
ブラッドサッカーが隙とばかりに飛び掛かって来たのをファナは裏拳で殴り飛ばす。
「ま、経験値には良いんじゃない? アキヒコ、ついでに腕輪に入れると良いよー」
「あ、ああ」
「おい。まだ戦えるのか?」
看守がファナにそう尋ねるとファナは頷いた。
「……暴れることはあるけど、いつでも行けるわよ」
「それは何よりだ。もっと奥に行って暴れて来い!」
「奥に引きこもってる奴を先に倒したってまた湧くでしょ。完全清掃は夜が明けてからが良いんじゃないの?」
ああ、ルナティックムーンでの戦闘での鉄板ってのがあるんだっけ?
人里に湧く危険度が高い魔物は仕留めるけどダンジョンの奥に籠っている奴は後で倒すって感じで。
「く……」
ファナの提案に看守は忌々しいとばかりに歯ぎしりをして黙り込んだ。
「それにここは今回はハズレなんじゃない? 一度奥まで行ったけどそれっぽいのいなかったわよ」
っとバラバラとファナは俺の方に袋を投げ渡してくる。
いや、俺の成長に有利だって気を使うのはわかるけどさ。
お? ケルベロススケルトンの素材で能力が上がったぞ。セイフティサークルの強度が向上した。
それとパワーアップサークル……指定範囲の味方の能力を引き上げるスキルが使えるようになったぞ。
……完全にヒーラーでバッファーだな今の俺のポジションは。
ルリルが良い感じに戦ってくれるから良いけど。
骨とかゾンビ肉等を腕輪に登録した結果、体力と防御能力関連が向上していく。
そこそこな量あったお陰で助かる。
しかもLv25に上がったぞ。2も上がった。
「うし、大分怪我も治ったな。戦うぞ! バーサーカーリープッドに手柄を独り占めさせるか!」
「やられっぱなしで行くわけにはいかねー! 腕輪野郎にだって負けてられっか!」
「行くぞー!」
そうしていると囚人や看守たちの傷の手当てが終わり、みんなして立ち上がる。
どうにも無駄に元気になってんな。
「行くぞオラァ!」
ってどんどんみんな突っ込んで行ったのと入れ違いにファナが面倒そうに歩いてくる。
「大物が出てくるかと思ったけど収穫無し、期待外れね」
「そうか」
と言う所で看守が耳に手を当てて何やらブツブツしゃべり始めた。
「そんなに大物と戦いたいか。ファナ=ポシュ=クーン」
「……ええ」
「なら良いニュースを教えてやる。近隣の街から応援要請が来た。大物だぞ。キングラーヴァジェリームが出て街を襲撃している真っ最中なんだと、囚人共なら誰でも参加を許可するそうだ。おい囚人共! 聞け!」
奥に行った囚人たちにも追いかけて看守たちが聞いて回っている。
「はぁ!? キングラーヴァジェリーム!? ふざけんな! こっちはここで手が回らねえよ! それにそんな化け物相手に出来るかよ!」
「そうだそうだ! あんな溶岩の化け物勝てるかボケ!」
「魔法使いや魔女様にお願いしろよ! それこそ巷で有名な勇者様にでも頼め!」
囚人たちは揃って嫌だとばかりに持ち場を離れないとダンジョン内での戦闘を優先しようとしている。
ジェリーム……!
「きゅう……」
「アキヒコ、ルリルも同じ顔して笑ってるわよ」
良いだろ。
ジェリームなんて汚物生命体を仕留められるんだから。




