59 ジェリームダンク
「君が捕まった際の事件でたまたま村に到着し、襲い来る魔物達から村を守った立役者でもある。そして幼い頃から山に籠っていて若干常識に疎い所があって仲間に色々と教わる所が魅力的な冒険者なんじゃと言われておるの」
そんな事言われてもあんな罵倒されたら良い印象なんて持てる訳ないだろ。
俺の中でリレイアの評価はマイナスに傾いた。
村での滞在中はちゃんと挨拶したし話もしたんだぞ。
ライムが俺の振りして何かした際にしっかりと違いに気づけよ。
挙げ句気色悪い黄色い声を出しやがって。
思えばルリルをどうにか出来ないかって聞いたら見捨てる選択を勧めてきた奴だった。
本気でくたばれ!
ル・カルコルを退治した時の村の連中とはまるで違う所だ。
あのクソ村、何かあっても絶対に行かないからな。
ルナティックムーンで滅べ!
そもそもあの村でライムの奴、酒場で酒まで望んで飲んでいたんだぞ。
ジンによく似た酒で高い奴! ジンとライムでギムレットって内心思ったもんだ。
とにかくアイツら、ウザい奴としか思えない。
お前こそ意味もなく襲ってきたら返り討ちにしてやる。
「まあ、彼に関してはこれくらいにして気持ちを切り替えんとな」
「……」
「ふむ……不機嫌な様子じゃな。しょうがないので少しばかり憂さが晴れる話をせんといかんか」
なんだ?
何を話す気だ?
「一緒に居た魔物使いの子がおったじゃろ?」
「ああ」
「あの子は盲目的なジェリーム使いなんじゃが半月前、ジェリームへの過度な攻撃をするルリルくんに注意をした所、世話をしているジェリームをリフティングされた挙げ句、ダンクシュートされて激怒しておった」
いや……それ、性格悪くないか?
しかもどこから出したのかルリルがジェリームをさっきの女に向けてダンクする写真を見せられた。
背景には小さな熊みたいな魔物がいる。
熊……ルリルの蜜を望んでいるってのはこいつかな?
ジェリームは無事なようだけど女はそのままジェリームと一緒に目を回している。
よくこんな写真を用意出来たな。
この写真を撮っていて、持ち歩いているこの爺さんに対しても微妙な心境を覚えるんだが……。
「最近起こった面白い出来事としてギルドが保存していたものじゃ」
まあ、なんかコメディチックだもんな。
ルリルのダンク姿も躍動感があるし。
「本当、ルリルさんはアキヒコさんに似て……」
ロネットが嘆いているけど知らないな。
「ジェリームにも個性があるし、貴族が養殖した魔物使い用のジェリームしか知らない子なんじゃ。見逃してあげておくれ」
「ふん」
どっちにしてもあの女は俺の敵だな。
ルリルが事前に痛い目を見せて居たって事で今回は溜飲を下げよう。
レイベルクの爺さんが手を叩くと部屋の奥にある扉から昨日見たマジックソニックソードを入れた厳重な箱を職員が持ってきてテーブルの上に置く。
「此度はインテリジェンスウェポンをよく捕獲してくれたのう」
「ルリルが居場所を特定したからあっさりと捕まえられた。大した事はしてないさ」
運が良かっただけでしか無い。
「見つけたのはアキヒコさんですよ。ルリルさんもアキヒコさんの為に頑張った訳ですし、すぐに持ち帰れたのもアキヒコさんのお陰じゃ無いですか」
「褒めてくれるのは素直に礼を言うけどな」
ロネットは人の善の部分を信じている。そこは素直に俺も助けられている。
「ほっほっほ、ではしっかりと買取額の交渉をせんとな。シスター、ロネット。良いかの?」
「はい」
こうしてロネットはレイベルクとマジックソニックソードの生け捕りした金額の交渉を行った。
交渉自体は問題なく進み、ロネットも納得の金額で取引は終わった。
「さて、アキヒコくん、君はどうしてインテリジェンスウェポンを魔物使いギルドが買い取るか気にならんかね?」
なんだ? またこの爺さんは俺に何か教えようとしているのか?
「さあ?」
正直あんまり興味は無い。
魔物なんて倒してなんぼの生き物だろ。
「インテリジェンスウェポンはの、君からしても有意義な魔物じゃぞ?」
「そうなのか?」
「自分の武器種を決めた魔物使いからしてものう。インテリジェンスウェポンは成長する武器であり、特殊武器持ちでも例外として使える武器になるんじゃ」
……?
ああ、なるほど……インテリジェンスウェポンは魔物。
つまり武器の形はしているけれど魔物を振りかぶるってだけなので武器として使用する事が出来るって事なのか。
特に魔物使いはその適性が高いと……。
「そしてしっかりとインテリジェンスウェポンを育てれば仮に死してもその体は残る。育てた分だけ切れ味を上げたままの」
「そう聞くと随分と強力な武器になりそうだな」
「間違っておらんからこうして高額で取引されるのじゃよ。魔剣などはここに順序するかの」
なるほど、武器型の魔物が希少で売買されるのは魔物使いからすると垂涎だからって事で良さそうだ。
「問題は持ち主を随分と選びたがる気難しい性質のある魔物での。さらに所持者を操ったりもするんじゃ」
「試しに手に取った職員が乗っ取られ掛けましたね。アキヒコさんは平気で握ってましたけど」
「ほう……」
レイベルクが俺をマジマジと見つめてくる。何だよ。
「何か聞こえたりしなかったかの? 精神に干渉してくるはずじゃが」
「投げ捨てた所で、どうして……って聞こえたな。呪詛か何かをしようとしたんだろ」
と、答えるとレイベルクは腹に手を当ててクックックと笑いをこらえ始めた。
なんだ? 何かおかしいことを言ったか俺?
「いやぁ失礼、なるほどなるほど。ほっほっほ」
それから満面の笑みを浮かべて朗らかに笑う。本当、よく笑う爺さんだな。
「ふむ……中々面白そうな子じゃな」
収められたマジックソニックソードが入った箱をレイベルクの爺さんは撫でて呟く。
「強力な武器ねー……獣神の戦斧ってのもそれなのか?」
「おや? 知ってるのかね? 残念じゃが獣神の戦斧は精製武器じゃよ。異世界人が時々所持している名ありの特殊武器を持つのと同じように一定の条件下で精製武器の持ち手に現われる代物じゃ」
へー……そうなのか。
「同Lv帯、同元素材の精製武器の5倍以上の攻撃力、速度、魔力、耐久性が確認されておる。まさに神器と呼ぶにふさわしい代物じゃ。専用のスキルも内包しておるし、厄介な問題があったのじゃがそれも克服されていて右に出るものは無いじゃろうて」
「そんなすごい武器を精製した奴がいるのか、この世界のトップ冒険者って奴だな」
「ほっほっほ。上には上の悩みがあるじゃろうよ」
なんか含みのある台詞だな。よく分からんけど。あれか? 真の力を解き放てていないみたいな奴。
ファナとルアトルは何か知ってるみたいだけど教えてくれそうに無いんだよな。
どっちにしても俺は装備出来る代物じゃ無いし、これ以上知る意味は無いか。
「さて、それでは君に蜜の分を含めた報酬を与えんといかんの」
などと言いながらレイベルクは俺に本を取り出して差し出す。
しょうがないから受け取り中身を確認、するとそこには日本語でルビが別に振られた本だった。
「君が読めるようにした魔物使いの知識書じゃ。スキルの効果や有効的な使い方、魔物の図鑑、進化に関する事を多少知ることが出来るじゃろう」
「使わないスキルの使い方なんて知ってもな」
現にルリルが加入してからも使ってない。
勝手に発動するのは除外してるけどな。
「それでも知っているのと知らないのでは違いがあるじゃろ。いずれ君は目的の為に使う時が来るかもしれんじゃろ」
「どうだかな」
ペラペラと捲っていくと、追加したらしき真新しいページ……なんか別の本の部分を差し込んだみたいな代物まであった。




