53 村人の善意
「大した加工は出来てないけど、それで良いらしいから使ってくれ」
思ったよりも義理堅い連中だなここの奴らは。もっと金を払ったんだからやるのは当たり前だろ的な態度で村から追い出されるような形で出発するかと思ってた。
「わかった。じゃ、しばらく使わせて貰う」
問題は値打ち物とかを囚人が持つのは認められていないので最終的にはロネットの私物って事で献上することになるんだろうけどさ、気持ちだけでも受け取っておかないと納得されないだろう。
というわけで腕輪と重ねる。
ル・カルコルの鼈甲腕輪 ※装備Lv条件未満による性能低下
専用効果 魔力増幅 水属性 水属性スキル威力アップ 甲羅の守り 水耐性+50増加 毒耐性+50
専用スキル レインコール
これ、かなり性能の高い腕輪だぞ……捕まる前に持っていたミスリルの腕輪よりも属性が尖った感じの代物だ。
難点は俺のLvが足りない所為で性能を引き出しきれない。たぶん、Lv条件を満たすと他にも専用効果やスキルが出て来るだろう。
「アキヒコの場合、腕輪だからそこまで加工に手が掛からないのが良い所だよね」
「まあ……最悪なめした革でも適当に切って穴を開けたら腕輪になるからな」
安く作れるってのは否定しない。
「ただ、冒険者やってた頃に聞いた話だと凝った付与や加工をするなら金が掛かる感じだったぞ」
生憎と無骨な感じの腕輪なんで文字通りそれっぽい形にしたってだけに過ぎない。
もっと性能を引き上げるなら職人に加工して貰わないと行けないだろう。
囚人には贅沢な代物か……。
とにかく、良い代物なのでメインに据えるとしよう。
そして今使える三つの腕輪をすべて同じ物に設定する。
するとルリルの首に掛かっていた腕輪も同様の代物に変化する。
「きゅー」
ルリルが変わった腕輪を似合う? って感じでみんなに見せつける。
「本当に変わるんですね」
「アキヒコの武器って安く済むんだねー」
「そりゃあな。革の腕輪の装飾に宝石なり金属なりを埋め込むだけでも変化あるぞ」
「下手に杖とか精製武器にするよりも良いのかもしれませんね」
ロネットが羨ましそうにしている。
割と効率的だぞ? なんでみんな武器種を選べるのにしてないんだ?
「……アキヒコは異世界人だから武器も似てるようで違うんじゃない? 真似したら後悔しそうよね」
俺の疑問にファナはぽつりと答える。
ああ……その可能性はあるよな。
なんか最初にクソ聖女の所で特殊武器にも色々とあるみたいな話し合ったし。
実は大した事無いって可能性も大いにある。
「いずれは大手クラン。ムーンティアーバスターで有名な神器・獣神の戦斧に匹敵すると良いね」
ルアトルの台詞にファナが眉を寄せて露骨に不快そうな顔をして睨む。
「そうね。あんな代物なんかよりもアキヒコの腕輪がすごいわよ」
ルアトルへの視線を逸らしたファナはルリルの首に掛かった腕輪を軽く撫でる。
その仲の悪い空気は本当、何なんだ? というか神器って随分と大層な代物があるんだな。この世界には。
戦斧って事は斧だろ? 俺には使えないけどさ……ファナって杖が精製武器だったけど、その斧とかも使えそうだな。単純に武器って意味で。
「とにかく、ありがとう。それじゃあ行こうか」
「ええ、それでは行ってきます」
俺とロネットの言葉に村人たちは手を振って見送ってくれた。
「いつでも来てくれよー」
「村を助けてくれた事を忘れないからなー」
「ありがとうー!」
なんて言うか……素直に礼を言われるってあんまり経験が無いからもどかしいな。
最近は忙しくて目が回るような気がするけれど、こうして俺達は次の目的地へと向かったのだった。
村から移動して進んでいくと、ちらほらとアサシンアナグマたちと遭遇したが次第に出会う数が減っていくのを目に見えて感じた。
「ル・カルコルを倒したら数が減ったってのは本当みたいだな」
「出現範囲から大分離れてきたってのもあるけどね」
大分Lvも上がってきたのもあるけど、ルリルが跳ね飛ばすだけで倒せるので進むのはかなり楽になった。
で、途中から別の魔物……ジャイアントスパイダーとかアーマーセンチュリオンという大型のムカデの魔物なんかが出てくるようになった。
遭遇率自体はアナグマたちに比べたら格段に減っている。
もちろん戦闘に関してだけどそこまで強い魔物じゃ無いのであっさりと倒せている状況だ。
「アーマーセンチュリオンは固いけど魔法に弱いのでルアトルさんが居れば楽に処理出来ますね」
火の魔法が弱点らしく、ルアトルが魔法を使うことであっさりと出てくる昆虫系の魔物は倒せる。
まあ……俺も囚人になる前は戦った事のある魔物だし……。
ちなみに俺がライムと一緒に戦って倒した大物はファイアサラマンダーって火を吐く大きなワニみたいなトカゲだったなぁ。
アンバーティラノとトライデントトリケラって恐竜っぽい魔物も同じくらいかな?
ルアトルやファナの攻撃力なら勝てる相手だろう。
というか……ファナって素手でどこまでやっていくのかわかんないけど、相当強いみたいだし。
グレードマッドサラマンダーを倒したし、そこが知れない。
「きゅう」
移動を開始してからずっと俺はルリルの背に乗って周囲を警戒しながら進んでいる。
「お! ジェリーム発見!」
ポヨンポヨンと間抜けにもブラウンジェリームが跳ねてやがる。
汚物生命体め! くたばれ!
ドウッと腕輪から水属性のウサギ型をした魔弾が放たれる。
「ピギィ!?」
バシュッとブラウンジェリームは魔弾が当たってはじけ飛んだ。
「きゅー!」
やったぜ!
「はぁ……」
ロネットがため息をしているが知ったことでは無いな。
「お! ダークジェリームまで居やがる!」
「血の気が多くて襲ってくるタイプのジェリームだね。火の粉は払わないと面倒だよ」
「アキヒコ、ルリル、手伝う?」
「ここは俺に任せろ」
そこそこ強めのジェリームがダークジェリームという紫色の魔法防御の高いジェリーム。
エリートビッグジェリームよりも単純な戦闘力が高い。
闇属性の魔法まで放ってくる。
「蜂の巣にしてくれる!」
魔弾を放って命中させたのだが、ダークジェリームはこちらに向かって飛びかかってくる。
「きゅう」
ルリルが飛びかかってくるダークジェリームを前足で叩いて突き飛ばし、後ろ蹴りで攻撃する。
やっぱりタフだな。
俺とルリルの強さじゃ急所にでも当たらないと簡単には倒せないか。
「ピギィ!!」
何がピギィだ。この粘液野郎。
必ず地獄に送ってやる。
闇属性の魔法、ダークボールというホーリーボールの黒い版が放たれるがルリルの足の速さに追いつけずダークボールは弾ける。
ただ、ルリルは高速で動き回るから狙いを定めて当てるのは骨が折れるぞ。
近づいた時についでに魔弾を放つのが良いか?
なんて思いながら当たれば良いなと思って放ったウサギ型魔弾が思った所に命中して行って、その誘導性に感心する。
ライムの力で変化した魔弾よりも命中精度が良いなやっぱり。不思議な位当たるぞ。
という所で魔弾が当たっていくと俺の視界に数字が浮かんでいるのに気づいた。
2……3……。
2から始まり魔弾がダークジェリームに命中するたびにその数字が増えていく。
やがて6のカウントが出ると、腕輪からルリルに向かって光が放たれる。
「きゅうううううう! きゅー!」
ルリルの前方に魔法の玉が精製されて……高速で弾丸となって放たれ、ぐるぐるとダークジェリームの周囲を旋回しつつ、ど真ん中に命中した。
「ピギ――」
ブチュッとダークジェリームが破裂した。




