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36 差出人


「く! 重い! 離せコラ!」

「キュウウ!」

「えーっと……アキヒコに随分と友好的なジャイアントアルミラージだね」

「依頼では気難しい気性をしたジャイアントアルミラージとなってますけど……」

「のんきに話してないで助けてくれ!」


 なんで俺なんだこの! っと抵抗しているとジャイアントアルミラージはバッと立ち上がって跳躍。


「キュウウウ!」


 死ねぇええ! と、ばかりの殺気に満ちた形相で近くにいるエリートビッグジェリームの四散した死骸に群がっているジェリームにのしかかって仕留める。

 そこから再度俺達の方へと近づいてきてよつ足で伏せの姿勢を見せた。

 ふむ……そのジェリームへの殺意……共感できそうだ。


 しかし、この一瞬でジェリーム共、共食いを始めてやがった。

 なんて気色の悪い奴等だ。


「どうやら敵意は無いようですね。アキヒコさん、あの子を連れていけませんか?」

「なんで俺が?」

「どう見ても懐いているようにしか見えないけどね」

「気を付けろ。そうやって騙そうとしているんだ。魔物ってのは愛想よくしてこっちを利用しようとする奴等なんだからな」

「キュウ」


 俺の拒絶にジャイアントアルミラージは悲しげな表情を浮かべて座っていた。

 近くにいるファナがジャイアントアルミラージの顔を撫でる。


「それにしたって随分と親しげに見えるけどね」


 なんで俺に親しげなのか俺が知りたい。

 と、思うのだけど……このジャイアントアルミラージ、どこかで会ったような何かを俺も感じている。

 どこだ? こんなでかいウサギ知らんぞ。


 ただ……ウサギ……。

 脳裏にルリルの事が思い浮かぶ。

 だがルリルはメイプルラビットって魔物で子ウサギなわけで、こんな大きなウサギじゃない。

 って所で伸し掛かられたところから甘い匂いが漂い始める。


「アキヒコ」

「何?」

「最初は気のせいかなって思ったんだけどね。アキヒコが持ってるヒールシロップの匂いとこの子、同じ匂いしてるって私、言おうとしたんだけど、何か心当たりない?」

「え?」

「キュー」


 メイプルラビットはメイプルシロップによく似た体液を出す魔物らしい。

 で、差出人不明のヒールシロップ。

 そして甘い匂いを出すジャイアントアルミラージ……ここから導き出される結論は。


「……ルリル?」

「キュウウウウ!」


 肯定とばかりに、ガバァっと再度ジャイアントアルミラージは俺に向かって飛びかかり伸し掛かって来た。


「うわ!」

「キュウウウ! キュウウ! キュウ! キュ!」


 モサモサとした毛皮で全力で絡まれる俺に、ファナもロネットもルアトルもただただ見ているだけだった。


「えー……貴方はルリルさんというアキヒコさんが知っているジャイアントアルミラージで良いのでしょうか?」


 俺に絡んでいるジャイアントアルミラージに向けてロネットが尋ねると、ジャイアントアルミラージはキュウと力強く鳴く。それから再度俺へ頬ずりをした。


「キュー!」

「良いから離れろ!」

「キュ」


 俺の言葉を聞くかの如くジャイアントアルミラージは俺から離れて座って待っている。

 急いで体を起こして立ち上がる。


「里親に懐かない。脱走した……ね」

「キュウ」


 貴方しか私は認めないとばかりに顔を上げて鳴き、俺に頭を垂れるルリルらしきジャイアントアルミラージが目の前にいる。


「あれから一か月くらいか……こんな小さかったメイプルラビットがどうしてこんなでかくなってんだろうな」

「キュ!」


 魔物の成長は実に不思議で満ちている。

 が、今の俺は魔物なんて信じたくない。

 例えそれがルリルであったとしても、だ。

 俺は頭を垂れるルリルの頭を踏みつける。

 こうすればルリルもわかるだろう。

 他の飼い主の所で上手くやれば良いんだよ。


「アキヒコさん!?」

「俺は魔物は信じないって決めたんだ」

「キュウウウンンン!!!」


 ああん! って声にハートが混じっている気がする!?

 気色悪い声を上げんな! 何喜んでるんだこいつは! 

 間違いなくよがってやがる。


「キュウッ……キュウッ……キュウウウ……」


 もっと、もっと私を蹴ってご主人様ぁあああ……って興奮するような呼吸をしているように感じた。

 いや、俺の気の所為、そうに違いない!

 急いで足を上げて離れる。


「キュウウ?」


 どこへ行くのです? ってすり寄ってこないでくれ!


「アキヒコさん、こんなに慕っているんですよ。優しい言葉をかけてあげられないんですか」

「魔物は敵だ!」

「キュウウン」


 よがるな変態!


「これは奇妙な縁ってもんだね。ははは」


 ルアトルが関心したように言ってるが、こんな偶然があっていいのか?


「まあまあアキヒコ落ち着いて」


 ファナがルリルの隣に立って、ルリルの喉に軽く手を添えて撫でる。


「今は信じなくても良いから。この子を連れて依頼を達成すれば良いじゃない」

「ああそうだな。さっさとおさらばしたいところだ」

「じゃあロネット。この子にメンバー加入申請送って見て、私やアキヒコは刻印経由で是非が無くても出来るけど……わかってるなら仲間に入れられるんじゃないかなー?」

「キュウ!」

「分かりました。魔物使いの魔物って本来主人が管理するものですが、アキヒコさんにはその権利が無いようですし私が許可しても大丈夫そうです」

「わかってくれてうれしいもんだ」

「魔物との戦闘であなたの力を最も引き出すのは魔物使いとしての力だと思うのですけどね」


 なんて言いながらロネットはステータスを引き出してルリルに指を向ける。


「キュ」


 ……承認したって感じで、何かの繋がりが発生したのが分かるぞ。

 パーティー設定で加入したんだな。


「頭の良い子ですね」

「今の飼い主の所に連れてくって言ったら全力で逃げそうだな」

「キュ!」


 ガバ! っと俺を前足と胸で抱え込もうとするのをやめろ!


「そこは依頼主の魔物使いの方と相談しますよ」


 うへぇ……お優しい事で。

 とはいえ、ルリルの奴、随分と健康且つ立派に育ったもんだな。


「では合流ポイントへと行きましょう」

「出発だね」

「キュー」


 ルリルは俺を離すと、俺の後方をぴったりと引っ付いて着いてくるようだ。

 一体どうしてこんな事になってしまったのか……。

 魔物使いとしての力なんて心の底から使いたくない。

 腕輪のスキルだけでどうにかなるだろうに。


 そう思いながら俺はロネット達の後に続く。

 ちっ……この辺りはジェリームが多いな。

 出てくるジェリーム共を仕留めて進む。


「ピィイイイ!?」

「キュウウウ!」


 ゲシッ! っとルリルもジェリーム共を蹴り飛ばして仕留めている。

 きっとライムに吹っ飛ばされた事を根に持っているんだろう。

 そう考えるとコイツもライムの被害者か。


「ああもう……アキヒコさんにルリルちゃん!」

「ふん」

「ルリルちゃんもアキヒコさんを真似しなくて良いんですよ。お願いですから飛びかかるのはやめてください」

「……」


 ロネットの頼みにルリルは目を細め、地面に落ちている小石を口に含み……プッ! っと離れた所にいるジェリームに向かって放った。


「ピギ――!?」


 もちろんクリーンヒットしてジェリームは弾け飛んだ!


「ははは、ロネット、こりゃあ一本取られたね。確かに飛びかかってはいないよ」

「はぁ……アキヒコさんとルリルさんの殺意が強すぎます……」


 逆に感心を始めたルアトルと呆れるロネットを他所に、俺は気付いた。

 うわ、ルリルが仕留めたジェリーム、何を食ってやがる!

 人間の頭蓋骨が出て来たぞ。


「ロネット、仕留めたジェリームから人らしき頭蓋骨が出て来た」


 飛び散ったジェリームの内容物に骨が混じっていたので確認したら出て来た。

 やはりなんでも食うってこういう事なんだな。

 あんな極自然に動き回っているジェリームの中にコレがあるんだぞ。

 怖過ぎだろ。もはやホラーだ。


「えー……っと」

「何処かで朽ちた冒険者の死体でも貪ったのか……数で襲い掛かったとか墓地を掘り起こしたって可能性もあるね」

「これも後で報告しておきますね。ジェリームはその地域の掃除屋である魔物ですからこういう事があるのはわかってますけど……」

「気色悪い魔物なんだよ、こいつらは」

「キュ!」


 同意するかの様に鳴くルリルだった。


「はぁ……今回だけはアキヒコさんの言い分に抗議できないのが悲しいですね」


 ファナとルアトルはやれやれと肩を上げているだけだった。

 こうしてロネットが依頼書で確認した合流地点である街はずれの道に差し掛かると……なんだ? なんか半透明の狼みたいな魔物……スピリットウルフって魔物を連れた老人が居た。


「おやおや……もう捕まえてくれたのかい? 君たちは仕事が早いのぉ、ほっほっほ」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ドMウサギ…。そんなのは望んでいなかった…。
[一言] ルリル、、、、こんな変態になって、、、、(涙
[気になる点] シロップ差し入れの協力者は、この爺様ですか。 魔物使いぽいですが、もしや、師匠キャラが来ましたか?
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